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IEA「原子力投資800億ドル超を維持 AI需要や各国支援策が後押し」

04 Jun 2026

大野 薫

©IEA

国際エネルギー機関(IEA)は528日公表の「世界エネルギー投資2026(World Energy Investment)」で、世界の原子力投資額が2025年に続き2026年も800億ドルを超えるとの見通しを示した。AIの普及による電力需要の増加やエネルギー安全保障への関心の高まりを背景に、各国で原子力開発を支援する政策が広がっており、IEAは原子力投資の拡大基調が続くと分析している。

IEAのF.ビロル事務局長は、現在の状況について「世界はこれまで経験した中で最大級のエネルギー安全保障上の危機に直面しており、世界の投資戦略を根本的に変える可能性がある」と指摘した。そのうえで、1970年代の石油危機後に見られたようなエネルギー投資構造の大きな転換が再び起こり得る、との見方を示している。

2026年の世界のエネルギー投資額は3.4兆ドルのうち、約3分の2に当たる2.2兆ドルが送電網や蓄電池、低排出燃料、原子力、再エネ、省エネ、電化などのクリーンエネルギー関連分野に向かう。一方、石油・天然ガス・石炭への投資は約1.2兆ドルにとどまる見込みである。再エネへの投資額は、2026年に約6,650億ドルに達すると見込まれており、このうち太陽光発電向けが約3,650億ドルを占める。再エネ投資の伸びは、ここ数年の急拡大を経て鈍化しているものの、世界の発電分野への投資全体に占める低排出電源の割合は、依然として7割を超えている。

原子力投資額は2025年に続き、2026年も800億ドルを超える見通しだ。現在、15か国で計7,800kWが建設中であり、中国が世界の原子力投資の約3分の1を占める。IEAは、1970年代のエネルギー危機後と同様、現在の供給不安が小型モジュール炉(SMR)など、多様な原子力技術への投資拡大を後押しする可能性があると指摘。既に40か国以上が原子力導入を支援する政策を整備しており、原子力に対する評価が世界的に見直されつつあるという。

IEAは報告書で、原子力投資拡大を後押しする各国・地域の政策や事業の動向についても紹介している。米国では、データセンターや人工知能(AI)による電力需要増加を背景に、テクノロジー企業による原子力開発への関心が高まっている。IEAによると、構想段階のものも含めると、新たな原子力発電設備容量は5,000kW超に達するという。米政府も、資金面や規制面で大型炉やSMR開発への支援を進めている。

一方、各炉型の規制面での進展度には差があり、米原子力規制委員会(NRC)の承認を取得しているSMRは米企業1社にとどまる。設計認証を受けた炉型も限られ、多くの契約が法的拘束力を伴わないことから、計画実現にはなお不確実性が残ると指摘している。

欧州でも投資促進策が進展している。欧州委員会(EC)は最新の「原子力実証プログラム(PINC)」で、大型炉新設や既設炉改修に2050年までに累計2,410億ユーロの投資が必要と試算したほか、SMR開発向けに2億ユーロ規模の保証基金創設を発表した。英国ではロールス・ロイスSMR社の初号機建設、フランスでは総事業費730億ユーロとされるEPR2×6基の建設計画が、ともに政府支援の下で進められている。

こうした動きは中国や日本、新興国にも広がっている。中国は毎年約10基の新規建設を承認しており、第15次五か年計画では2030年までに原子力発電設備容量を11,000kWへ拡大する方針を掲げ、輸出も視野に入れている。日本でも原子炉の再稼働が進展しているほか、新設に向けた資金調達や投資回収などの事業環境整備の検討が進められている。さらに、これまで原子力融資に慎重だった世界銀行グループやアジア開発銀行(ADB)も方針を見直し、原子力導入検討国への支援に向けた取組みを開始した。

IEAは原子力投資の拡大基調は続くとの見方を示す一方、新設炉やSMR初号機では依然として建設リスクが大きく、各国による制度支援が成否を左右すると指摘している。

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