IAEA総会 分断した時代においても「共通の献身の精神」を
16 Sep 2026
国際原子力機関(IAEA)の第70回通常総会が9月14日から18日の日程で、オーストリアのウィーンで開催されており、各国政府、国際機関、NGOなどから168か国・3,200人以上が参加している。
開会の冒頭にスピーチしたIAEAのR. グロッシー事務局長は、IAEA創設から70年を迎えた今も、原子力安全、保障措置、がん治療支援、災害時の緊急支援などを通じ、各国がIAEAを通じて協力する姿を日々、目の当たりにしていると述べ、IAEAが果たす幅広い役割を強調した。IAEAは発電のみならず、医療、農業、環境など幅広い分野で原子力科学技術へのアクセスを世界に広げ、新興加盟国では安全で信頼性の高い原子力発電の導入支援を続けている。グロッシー事務局長は、国際情勢が分断と緊張に直面する中においても、IAEA初代事務局長W. スターリング・コールが1957年10月の第1回総会で表明した原子力の平和利用に向けた「共通の献身の精神」に立ち返り、国際協力を継続することの重要性を訴えた。
また、世界的な原子力発電への関心の高まりを反映し、着工・運転開始に至る基数が着実に増えていると指摘。IAEAが本総会に合わせて公表した最新予測では、電力需要の増加や脱炭素化、産業・運輸の電化、デジタル経済の拡大などを背景に、世界の原子力発電設備容量が2060年までに、現在の3倍以上になる可能性があるとの予測を紹介した。特に、IT大手企業が原子力発電への投資を進めていることに注目。原子力は、低炭素で信頼性の高い電力を安定して供給できるため、AIやデジタルインフラとの親和性が高く、両者の結び付きは偶発的なものではなく、構造的な連携になっているとの認識を示した。
また、原子力発電の導入を検討する国が増えるなか、IAEAは現在、「マイルストーン・アプローチ」に基づき43か国の新規導入を支援し、さらに20か国が導入を検討していることに言及。小型モジュール炉(SMR)への世界的な関心の高まりについては、国際的な普及に向け、各国で異なる規制手法の調和や設計の標準化が必要だと指摘。IAEA主導の原子力の調和および標準化イニシアチブ(NHSI)を通じ、複数国の規制当局が参加する事前許認可のパイロット事業などを紹介した。また、世界貿易の約80%を担う海運の脱炭素化における原子力の役割を強調。今年8月に海洋分野における原子力技術の応用(ATLAS)イニシアチブを立ち上げたほか、国際海事機関(IMO)とも協力し、海洋におけるSMR利用に関する法的、規制的、技術的および保障措置上の課題を検討していくとした。さらに、World Fusion Energy Groupを通じて、核融合発電の研究、開発、実証、展開の加速を支援していくとしている。
こうした原子力利用拡大の機運は「確かなもの」だとする一方、野心的な目標と実際の設備容量の伸びのギャップを埋めるためには、資金調達の抜本的な変革が必要だと強調。世界銀行が原子力への融資を認める方針に転換したことを歓迎し、国際金融機関の原子力プログラムに対する理解促進に向けた能力開発事業を進めていると紹介した。
これに続く各国代表からの一般討論演説では、日本代表として、小野田紀美科学技術政策担当大臣が登壇。日本がIAEAとの協力を通じ、原子力の平和利用と核不拡散を推進する決意を表明した。また、日本はエネルギー安全保障と脱炭素に貢献する原子力発電について、安全性を最優先に最大限活用するとした。そのうえで、今年7月に閣議決定された「日本成長戦略」の下、海外の原子力発電所建設プロジェクトへの日本企業参画の促進や次世代革新炉の開発・導入を進め、さらに、2030年代のフュージョンエネルギーの発電実証に向けて、IAEAとの連携を強化すると述べた。福島第一原子力発電所の廃炉では、使用済み燃料の取出しや燃料デブリの試験的取出しなどの進展を説明し、ALPS処理水の海洋放出についても計画通り安全に実施されており、IAEAによる安全性確認が継続していると強調した。加えて、IAEA保障措置の強化、追加議定書の普遍化、人材育成と技術開発にも取組むと表明。北朝鮮やイランの核問題、ウクライナの原子力安全・セキュリティへのIAEAの関与を支持し、NPT体制の維持・強化と核兵器のない世界の実現に向け、日本としてIAEAを最大限支援していく考えを示した。
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例年通りIAEA総会との併催で加盟国等による展示会も行われている。
日本のブース展示では、「クリーンエネルギー、イノベーション、レスポンシビリティ」をテーマとし、革新軽水炉やSMRなどの次世代革新炉開発、フュージョンエネルギー社会実装への道筋、核セキュリティや緊急被ばく医療分野における能力構築を目指した国際協力、放射性医薬品の開発・製造・利用を取り上げた内容を展示するとともに、福島第一原子力発電所の最新の廃炉進捗状況も紹介している。
展示会初日には、日本政府代表の小野田紀美科学技術政策担当大臣がブースのオープニングセレモニーに出席し、挨拶の中で日本政府がエネルギー安全保障と脱炭素に寄与する原子力の最大限の活用を方針としていることをあらためて強調するとともに、ブース展示については有益で魅力的な内容を備えているとアピールした。
福島復興をアピールする観点から日本ブース展示に参加している復興庁は福島産の農産物や民芸品を多数提供するほか、ブース・オープニングでの日本原子力産業協会の増井理事長による乾杯でも福島県産の日本酒が用いられブース来訪者に振舞われた。
一方、翌日にはIAEAのグロッシー事務局長が初めて日本ブースを訪問した。同局長は、IAEAの協力イニシアチブに対するこれまでの日本の貢献を評価し、日本と加盟国の強い連帯の表れであると述べるとともに、ブースで提供されている福島県産食品を試食するよう来訪者に勧めるなど、今総会での日本ブースは従来以上に福島復興を後押しする機会となっている。





