原子力産業新聞

海外NEWS

英規制当局 原子力規制の抜本的改革へ

06 Oct 2026

桜井久子

© ONR

英原子力規制庁(ONR)は9月13日、原子力規制を抜本的に改革する「ONR Together」戦略を発表した。高度な安全・セキュリティ・保障措置の水準を維持したまま、規制上の重複や不要な手続きを減らし、規制の予見性を高め、英国全土における原子力プロジェクトをより迅速に進めることが目的。

英国では、エネルギー供給と安全保障への対応が急務である一方、原子力プロジェクトでは大きなコスト超過やスケジュール遅延が発生している。こうした状況を踏まえ、2025年11月、K. スターマー首相(当時)の委託を受けた独立した専門家パネル「原子力規制タスクフォース」が「Nuclear Regulatory Review 2025」を公表。同レビューでは、原子力規制システムが「過度に複雑」かつ「官僚的」であり、安全面よりプロセスの遵守を優先していると結論づけ、英国の原子力産業を抜本的に改革するため、規制の複雑化を招いている根本的な要因への対処を勧告した。これを受け、2026年3月には英エネルギー安全保障・ネットゼロ省(DESNZ)が「Building our nuclear nation: government response to the Nuclear Regulatory Review 2025」を発表。原子力部門の刷新と新規プロジェクトの迅速な実施に向け、規制枠組みの再構築や計画・環境評価の効率化を打ち出した。また同日、R. リーブス財務相(当時)がONRに今後の規制対応方針について質問状を送付している。

こうした動きに応えたものが今回の「ONR Together」戦略である。ONRのM. フィナーティCEO兼首席原子力検査官は、「抜本的な規制改革が必要との結論を全面的に支持する。人々と環境を守るという使命を損なうことなく、より成果重視の規制システムに注力していく。ONRが実施する抜本的な規制改革は、不必要な官僚主義を削減するとともに専門的判断を強化し、産業界が事業を加速できるように規制の確実性を高めるものだ」と述べ、以下の3分野を優先課題に掲げている。

①より統合された原子力規制システムの構築:
複数の規制機関の調整・協力強化を目的とする「主要原子力規制当局グループ(LNRG)」を設置する。また、政府が検討している、民生用および防衛用規制を統合し、英国の原子力規制を一体的な仕組みにする「原子力規制委員会」の創設を支持。

②より強いリーダーシップと文化:
「遅延は中立的な結果ではなく、それ自体がリスクを伴う」との認識の下、ONR全体で現代的で機動的、生産性の高い規制機関への転換を図る。また、政府・産業界・規制当局の幹部による「業界CEOフォーラム」を創設し、業界全体の文化改善、リーダーシップの強化、不必要な遅延を招く慣行の見直し、集団的責任意識の醸成に取り組む。

③よりスマートで、デジタル化され、リスク情報に基づく規制へのシフト:
安全評価原則(SAP)の見直しや安全性を示すセーフティケースの指針の改定・簡素化、デジタル技術やデータ分析の活用を通じて、より迅速で一貫性のある決定を可能にし、重大なリスクへの取組みにリソースを集中する。複雑で膨大な文書作成から、重要なリスクとその管理策を明確に示す、簡潔で根拠に基づいたセーフティケースへの転換も進める。

新型炉の設計評価方法についても見直しを進めており、英国で初めて導入される炉型を対象に審査する包括的設計審査(GDA)では、より柔軟なアプローチを採用するとともに、多様な炉型の複数基の展開を前提とした規制に取組んでいる。実際、規制プロセスの改善や規制当局間の国際協力により、米GEベルノバ日立ニュークリアエナジー社製のBWRX-300と米ホルテック・インターナショナル社製SMR-300の直近のGDAでは、従来の同等の審査と比べ、審査範囲や規制上の厳格さを維持しながら、リソースの投入量を35%以上削減。双方とも当初予算を数百万ポンド下回る費用で審査を完了したという。

ONRは、「今回の改革は安全基準を下げるものではない」と強調。規制を緩和するのではなく、リスクの高い部分に重点を置き、重複や不要な負担を減らすことで、安全性を維持しながら英国の原子力プロジェクトの迅速かつ効率的な遂行を後押ししていく方針だ。

こうした改革と並行して、DESNZは9月15日、米X-エナジー社が開発するSMR「Xe-100」(高温ガス炉, 8.0万kWe)について、3段階のGDAの開始を正式に規制当局に要請した。X-エナジー社と英エネルギー企業セントリカ社は、同国北部のハートルプールに12基、総出力96.0万kWeのXe-100発電所の建設を計画している。GDAでは、ONRが設計の安全性とセキュリティ面を、環境庁(EA)およびウェールズ自然保護機関(NRW)が環境面をそれぞれ審査し、立地サイト特定後の建設申請とは別に、規制プロセスの早い段階で炉型の設計を評価する。X-エナジー社は、Xe-100のGDA完了までに約3年間を想定。将来的には英国全体で最大600万kWe規模の展開を計画している。

cooperation