原子力産業新聞

風の音を聴く

新年に高市・メローニ 日伊「同盟」のススメ

08 Jan 2026

2026年はトランプ旋風が吹き荒れた昨年にもまして、波乱のスタートとなった。13日(現地時間)、米国は戦闘機や無人機で南米ベネズエラを攻撃し、ニコラス・マドゥロ大統領夫妻を拘束連行した。

筆者にはまるでデジャブだ。麻薬問題から対米対立を深めていた中米パナマの最高実力者マヌエル・ノリエガ将軍に単独会見した1か月あまり後の198912月、米軍はパナマに侵攻。逮捕連行されたノリエガ氏は、その後の人生の大半を米刑務所で送った後に病気と高齢を理由にパナマに戻され、亡くなった。

会見の最後に「パナマと将軍の今後はどのように?」と尋ねると、「国家は永遠に不滅である。私については『神のみぞ知る』とさせて頂く」と運命を覚悟していたかのようだった。

今、マドゥロ氏の脳裏を過るものは何だろう。独裁者連行の報に多くのベネズエラ市民が街頭に飛び出し、歓喜したのもパナマと同じだ。不正選挙で大統領の椅子に居座り続けたマドゥロ氏には、そもそも統治者の資格はなかった。

しかしデュープロセスを無視したばかりか、ベネズエラの国家運営も石油権益も当面、米国が握ると公言するドナルド・トランプ大統領も、剥き出しの権力行使と米国益優先が過ぎて、大義がない。

気に入らぬ相手は軍事力で排除し、自分の支配下に置くという点で、これではウクライナを侵略したロシアのウラジーミル・プーチン大統領と変わらぬことになる。

トランプ大統領と電話会談し、「緊密な日米協力」で一致したばかりの高市早苗首相は、国際政治のリアルを実感したことだろう。ただここは持ち前の即決即行より熟慮断行の時。同志国と連携し、冷静に着々と政治日程を進めていく他ない。

今月中旬、イタリアのジョルジャ・メローニ首相がVIPのトップを切って来日するのは、その意味でタイムリーだ。

今年は日本とイタリアの外交関係樹立160周年の節目にあたる。大政奉還前年の1866(慶応2)年、日本は安政5か国条約の一環でイタリアとの修好通商条約を締結した。

その160年後、いずれも初の女性宰相が両国を率いるとは、偶然以上の歴史の采配を感じるのは筆者だけだろうか。

しかも2人には共通点が意外に多い。親の七光りとは無縁の叩き上げの政治家であること。政治信条も保守で共通すること。特にメローニ氏は若い頃にネオファシズムのイタリア社会運動や国民同盟に属し、「極右・国家主義者」のレッテルも貼られた。しかし2022年の首相就任後は移民排斥や反EUなど過激な主張を封印、経済問題などに手堅い手腕を発揮し、伊政界としては珍しい長期政権も視野に入っている。

高市首相も自他共に認める保守派だが、今は思想信条より「強い経済」を政策の前面に押し出し、高い支持率を維持する。

さらにフェミニズムやジェンダーに殊更肩入れしない点も似ている。

また首相がコロコロ変わる政治的不安定さや、文化・芸術の伝統など、国柄に共通点の少なくないことも付け加えるべきだろう。

首脳会談では二国間関係の強化はもちろん、日英伊3国で行う次期戦闘機の共同開発など安全保障問題が話し合われる予定だ。

加えて筆者が望むのは、6月に仏エビアンで開かれるG7に向けて、高市・メローニ「同盟」への取り組みである。

女性宰相が複数揃うのは半世紀を超えたG7史上でも初めてのことで、それ自体画期的だ。

しかもG7は独裁・権威主義国の台頭で今、衰退か再興かの岐路にある。G7を牽引すべきトランプ氏が、中国の習近平国家主席やプーチン氏との二国間・個人外交に執心し、G7に無関心、時に否定的なことが大きい。

トランプ氏は目下、4月の訪中成功に頭が一杯だ。歴代米大統領が注意深く排して来たのを知ってか知らずか、G2(米中)の用語を連発して習氏を喜ばせ、関税交渉もその術中に嵌った感がある。ウクライナ和平を巡ってもプーチン氏にあしらわれているように見える。

そこで2人の出番である。トランプ氏との相性が良い点でも共通する2人には、トランプ氏を中ロへの傾斜から、G7へと引き戻す役割を期待したい。

トランプ2.0が戦後国際秩序の破壊と再編を促していることは、ますます明らかになって来た。2人のG7「工作」が多少とも功を奏するようなら、高市氏の「世界の真ん中で咲き誇る」日本外交も、夢物語から現実へと一歩踏み出せるかもしれない。

千野境子Keiko Chino

Profile
産経新聞 客員論説委員
神奈川県横浜市出身。早稲田大学第一文学部卒業後、産経新聞社入社。マニラ特派員、ニューヨーク支局長、外信部長、シンガポール支局長、論説委員長などを歴任。最新刊は「江戸のジャーナリスト 葛飾北斎」。

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