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原子力文化財団、2021年度世論調査結果を発表

18 Mar 2022

原子力発電の利用に関し、「即時廃止」の回答割合は2014年度以降で最小に(原子力文化財団発表資料より引用)

日本原子力文化財団は、2021年度の「原子力に関する世論調査」結果を3月18日までに取りまとめ発表した。2006年度から継続的に実施しているもので15回目となる。今回、2021年10月に全国15~79歳の男女1,200人を対象に調査を行った。

それによると、「今後日本は原子力発電をどのように利用していけばよいと思うか」との質問に対し、最も多かった回答は「しばらく利用するが、徐々に廃止していくべき」(52.8%)で、「わからない」(23.8%)、「東日本大震災以前の状況を維持していくべき」(9.1%)、「即時廃止すべき」(7.5%)、「増やしていくべき」(2.2%)がこれに次いだ。これに関し、同財団では「原子力発電は、しばらく使わざるをえない技術と認識されている」などと分析している。「即時廃止」の回答割合は2016年度から継続して減少。「維持していく」と「増やしていく」の回答割合は近年であまり変化はないものの、年代別にみると若年層ほど高く24歳以下では合わせて21.0%となった。

また、原子力発電所を再稼働することに関しては、11の項目から肯定的な回答(複数回答可)と否定的な回答(同)を対比し、2017年度以降の推移を分析したところ、否定側の回答割合は全項目とも減少傾向。特に、電力の安定供給、経済への影響、新規制基準適合への信頼に係る項目で、肯定側の回答割合が否定側を最大16.4ポイント引き離し逆転していた。「地球温暖化対策を考えると、原子力発電の再稼働は必要」との見方に関しては、肯定側・否定側の回答が15.8%で拮抗。一方で、「再稼働を進めることについて、国民の理解は得られていない」(46.3%)、「放射性廃棄物処分の見通しも立っていない状況では、再稼働するべきではない」(36.4%)が引き続き上位に上がっている。

これらの調査結果を受け、同財団では「直近5年間で、原子力利用の『即時廃止』、再稼働に対する否定的な意見は減少傾向にある」と分析。また、高レベル放射性廃棄物に関しては、「聞いたことがない」が約5割で推移しており、「国民全体で考えねばならない問題であるため、情報をいかに全国に届けるかが最重要課題」としている。

今後日本が利用・活用すべきエネルギーについて尋ねたところ(複数回答可)、太陽光発電(76.5%)、風力発電(62.8%)、水力発電(56.8%)、地熱発電(39.5%)の順に回答割合が多く、2011年度以降、上位項目に変化はなかった。原子力発電は18.4%で前回2020年度調査の14.4%よりやや上昇。今回の調査で初めて天然ガス火力発電を上回った。

また、「原子力発電は発電の際にCO2を出さないので、地球温暖化防止に有効か」、「核燃料サイクルは、プルサーマルは役に立つか」に関し、「そう思う」または「どちらかといえばそう思う」との回答割合は、いずれも2015年度以降の調査で最高のそれぞれ41.8%、22.2%となったほか、性別では男性が女性を上回り、年代別では24歳以下で最も多かった。さらに、原子力に関する情報保有量別(多、中、少、無)に分析すると、「多」の層では肯定的回答の割合が顕著に高くなっていた。

今回の調査で、原子力に対するイメージとして、「危険」、「不安」、「信頼できない」は2年連続で減少。出来事やニュースで伝えられる情報量もこうした変動に影響しているものと推測される。自由記述の意見では、「事故やトラブルが起きたときにしか話題にならない。普段からの取組を国民に知らせることが大事なのではないか」(60代・男性)、「良いことと悪いことは『表と裏』である。良いことばかりを言うのではなく、悪い面はどんなことかも伝えた上で判断すべき」(70代・女性)といった指摘もある。さらに、「原子力やエネルギー、放射線に関する情報提供の中で、参加・利用したことがあるもの(したいもの)」について、施設見学会、実験教室、動画配信、オンライン講演会など、選択肢を設け尋ねたところ、「当てはまるものはない」との回答が引き続き大多数に上っていた。同財団では今後の広聴・広報に向け、「原子力に関する知識の普及活動における大きな課題だ」ととらえている。

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