原子力産業新聞

国内NEWS

設立10周年のJANSIが年次大会

16 Mar 2023

開会挨拶に立つウェブスター会長(インターネット中継)

原子力安全推進協会(JANSI)は3月15日、「JANSI Annual Conference 2023」を都内で開催。オンライン視聴も含め約500名が参加した。JANSIは2012年に、「福島第一原子力発電所事故のような過酷事故を二度と起こさない」という原子力産業界の強い決意のもと、米国原子力発電運転協会(INPO)をモデルに設立された自主規制組織で、現場観察やヒアリングによる評価を通じ規制適合だけに満足せず自主的な安全性向上活動を促す「ピアレビュー」などを実施している。

開会挨拶に立ったウィリアム・エドワード・ウェブスター・ジュニア会長は、昨秋、JANSIが設立10周年を迎えたことについて「単なる通過点に過ぎない」との認識を示し、「引き続き自主的な改善に努めていく」と強調した。

続いて、原子力規制委員会の山中伸介委員長、INPOのロバート・フレデリック・ウィラードCEO、電気事業連合会の池辺和弘会長が挨拶。

山中委員長(ビデオメッセージ)は、JANSIに対し、「民間の原子力規制機関と考えており、人員規模は原子力規制委員会にも匹敵する」と、組織の有する意義・リソースの大きさを明言した上で、技術情報の共有、継続的な安全性の向上、検査制度の実効性向上、安全・セキュリティ文化の醸成、人材育成において、産業界を牽引する指導的取組を図っていくよう期待した。

ウィラードCEO(ビデオメッセージ)は、JANSI設立10周年の節目に際し祝意を表した上で、「INPOはTMI事故、JANSIは福島第一原子力発電所事故、どちらも国内の原子力が危機にさらされている中で設立された」としたほか、設立から10年時点のINPOを振り返り、会員企業に対する懸命な理解活動など、困難の克服に挑んだ経緯を回顧。JANSIに対し「国際的な原子力産業の視点から見ても、価値の高いプログラムが評価されている」とする一方、「過去の成果に決して甘んじてはいけない」と述べ、原子力の安全性・信頼性のパフォーマンス向上に向け、JANSIと引き続き協力していく姿勢を示した。

池辺会長は、事業者を代表する立場から「JANSIが自主規制組織として果たす役割の重要性はますます高まっている」と強調。昨秋、JANSIの「ピアレビュープログラム」が世界で初めて、世界原子力発電事業者協会(WANO)によるものと「同等」と認定されたことなど、最近のJANSIに対する国際的評価に言及。「10年間の成果が目に見える形で表れている」とする一方、今後に向け「JANSIを含む産業界全体が『運命共同体である。“We are in the same boat”』の精神のもと、緊密に連携する必要がある」と述べ、慢心せず自主的・継続的に安全性向上に取り組んでいく姿勢を示した。

基調講演を行った米国エナジー・ノースウェスト社CEOのロバート・シュッツ氏は、コロンビア原子力発電所(ワシントン州)を例に、米国原子力産業界における安全性向上の取組を紹介。INPOの取組に関しては、会員企業のCEOが集まる年次総会で行う改善活動の相互比較をあげ、「最下位となった企業のCEOは他社から批判的コメントを受ける」と説明。その上で、「学ぶべきことは『われわれは互いに説明し合う義務がある』ことで、これこそが自主規制の神髄だ」と強調した。

パネルディスカッションには、山下ゆかり氏(日本エネルギー経済研究所常務理事、座長)、シュッツ氏、山口彰氏(原子力安全研究協会理事)、ビクター・マクリー氏(ニュークリーダー・コンサルティング社オーナー兼プリンシパル・オペレーティング・オフィサー)、森望氏(関西電力社長)、JANSIからウェブスター会長と山﨑広美理事長が登壇。JANSIの今後10年に向けた展望、日本の原子力産業が目指すべき方向性などをテーマに意見交換が行われた。

cooperation