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IPCCが9年ぶりに報告書 今世紀中に1.5℃の気温上昇を予測

22 Mar 2023

IPCC総会終了後の記者会見の模様(インターネット中継)

「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の総会が3月13~20日、スイス・インターラーケンで開催され、2014年以来、9年ぶりとなる統合報告書(第6次)を採択した。1850~1900年を基準とする世界の平均気温は2020年までに約1.1℃上昇したと指摘。「人間活動が主に温室効果ガスの排出を通して地球温暖化を引き起こしてきたことは疑う余地がない」と、警鐘を鳴らしている。前回の統合報告書では、平均気温の推移について、1880年から2012年の間に0.85℃上昇と評価していることから、地球温暖化がさらに深刻化してきたといえそうだ。

パリ協定(2015年12月に採択された2020年以降の温室効果ガス排出削減のための国際枠組み)では、「世界の平均気温の上昇を2℃より十分下回るものに抑えること、1.5℃に抑える努力を継続すること」との目標を掲げているが、今回の報告書は、「現状の政策による2030年の世界全体の温室効果ガス排出量では、気温上昇が21世紀の間に1.5℃を超える可能性が高い」と指摘。人為的な地球温暖化の抑制に向け、「カーボンニュートラル」の必要性を述べている。

今回のIPCC報告書について、西村明宏環境相は、3月22日の閣議後記者会見で、「行動変革を通じたエネルギー需要の削減が強調された」ことをポイントとしてあげ、今後、「GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針」を踏まえ所要の施策に取り組んでいく姿勢を示した。また、「来月のG7札幌気候・エネルギー・環境相会合などの機会を通じ、世界全体の脱炭素化に向けて議論をリードしていきたい」と強調。アントニオ・グテーレス国連事務総長が先進国に対し「カーボンニュートラル」の前倒しを要請したことに関しては、「人類に対する科学の強いメッセージと受け止めている。IPCCの科学的知見も踏まえ、わが国として、緩和策、適応策の両面から気候変動対策をさらに強化していきたい」と述べた。

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