東芝 UAEと重粒子線治療装置供給で調印
25 Apr 2025
東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)は京浜事業所で4月22日、アラブ首長国連邦(UAE)のクリーブランドクリニックアブダビ(CCAD)との間で、同国初となる重粒子線がん治療装置の機器供給契約調印式を開催した。同装置の導入は中東初でもある。
調印式には、東芝ESSの竹内努パワーシステム事業部長、駐日UAE大使のアル・ファヒーム閣下、CCADを傘下に収めるM42グループのアル・ノワイスCEO、量子科学技術研究開発機構(QST)の小安重夫理事長、経済産業省の渡辺信彦医療・福祉機器産業室長らが出席した。
竹内事業部長は挨拶で、「重粒子線がん治療装置の導入は、中東地域における医療イノベーションの推進とがん治療向上への共通のコミットメントを示すもの」と指摘。1988年以来、ガス火力発電所建設やインフラ整備などを通じてUAEで培った信頼関係に触れつつ、今回のプロジェクトがUAEおよび中東地域における持続可能な発展への重要な節目になると強調した。また、「重粒子線治療により、より少ない回数と短時間の治療で、より効果的な治療を実現する」と語った。
アル・ノワイスCEOは「今日は単なる契約の調印ではなく、人々の命を変える大きな一歩だ」と述べ、最新の重粒子線治療装置が導入されることで、これまで遠方への治療で経済的・精神的な負担を強いられてきた患者たちが、地元で高度な治療を受けられるようになると、その意義を強調。東芝の最先端技術とQSTの協力に感謝を表し、「ともに未来のがん治療に新たな1ページを!」と呼びかけた。
小安理事長は、2023年の岸田文雄首相(当時)訪問時にUAEのアブダビで締結した研究協力覚書を振り返り、「QSTで重粒子線治療が始まって30年、16,000人を超える患者を治療してきた。今回アブダビでこの技術がさらに発展することを喜ばしく思う」と語った。今後もQSTとM42およびCCADの間で研究・人的交流を進め、世界的な治療普及を推進していく意向を示した。
経産省の渡辺室長は、「重粒子線の導入に関しては、長年の議論を経て今回の契約締結に至った」と述べ、特に東芝の回転ガントリー型技術が患者負担の軽減につながることを評価。「アブダビでの治療が発展していくことを期待している」とエールを送った。
アル・ファヒーム大使も、医師がたった一人だった1960年代のアブダビの医療事情から、現在までの大きな発展を紹介し、今回のプロジェクトが両国の協力関係をさらに深める節目になると期待を表明した。
東芝ESSは今後も積極的に国内外での重粒子線治療装置の普及に取り組み、最先端医療の提供を通じて世界各地のがん治療水準向上に貢献する考えだ。