原子力産業新聞

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JAEAとQST 高精度な宇宙線被ばく線量地図の作成に大きく貢献

23 Apr 2026

中西康之助

宇宙線被ばく線量地図の作成に大きく貢献した ©UNSCEAR

量子科学技術研究開発機構(QST)と日本原子力研究開発機構(JAEA)は413日、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR) ※1が、212日に公表した最新の報告書「UNSCEAR 2024年報告書 (Volume.2)」において、JAEAが開発した宇宙線挙動解析モデル「PARMA」が採用されたと発表。あわせて、QSTが同モデルを用いて算出した公衆の宇宙線被ばく線量も同報告書に採用された。

高精度な「世界の宇宙線被ばく線量地図」の作成に両機構が大きく貢献し、世界の公衆被ばくにおける影響評価の基礎データへの利用が期待されるという。

同報告書によると、自然放射線源からの世界平均年間実効線量は約3.0mSv(ミリシーベルト)と推定される。地球上では、自然放射線による被ばくは日常的に生じており、その線量の把握はリスク評価の基礎となっている。UNSCEARは自然放射線による被ばく線量を最新の科学的知見に基づき、適宜見直しを行ってきた。

自然放射線のうち宇宙から飛んでくる宇宙線は、高度や緯度、太陽活動によって大きく変動するため、従来の評価手法では十分に反映しきれず、以前から、世界平均線量が過大に評価される課題が指摘されてきた。

しかし、JAEAが開発したPARMAモデルは、大気中での宇宙線の挙動を物理学的に精緻にシミュレーションし、あらゆる条件下での線量を解析的な数式で与えることができるという。この、画期的なモデルを用いることで、地球上のあらゆる地点における高度や緯度・経度、さらには日付に対する宇宙線強度や被ばく線量を導き出すことが可能になった。

同報告書はこのPARMAモデルを、「現在利用可能な最も信頼性の高いモデル」と位置付けており、QSTはこれを用いて、地球上の居住地域を1km四方のグリッドで約3,000万地点の宇宙線被ばく線量を解析。人口分布データも組み合わせることで、世界各地の実態に即した線量評価を行った結果、「世界の宇宙線被ばく線量地図」が完成。報告書の基礎データとして全面的に採用された。なお、宇宙線による全世界平均の年間実効線量は、従来の0.38mSv/年から0.30mSv/年へと見直された。

今回、日本発の解析モデルが採用されたことで、宇宙線による被ばく線量の評価精度は一段と向上。こうした成果は、日本の放射線科学分野における国際的な存在感を示すとともに、今後の放射線防護や被ばく評価の高度化につながるものとして期待される。

1955年設立。日本を含む31の加盟国から任命された科学分野の専門家で構成され、人やその環境が受ける放射線被ばくのレベル、影響、リスクについて評価し報告が任務。

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