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東北大学で次世代放射光施設着工、燃料電池開発や創薬での活用に期待

24 Apr 2020

次世代放射光施設のイメージ(文部科学白書より引用)

東北大学の青葉山キャンパス(仙台市)で次世代放射光施設の中核となる「基本建屋」の起工式が4月22日に行われた。地上2階、地下1階、延べ床面積約25,000平方mの「基本建屋」には、2021~23年度に加速器(電子エネルギー3GeV、蓄積リング周長約350m)の据付け・調整が行われ、同施設は2024年度に供用開始となる予定。

1997年に供用開始した電子エネルギー8GeVの「SPring8」が主に高エネルギー領域のX線(硬X線、5~20keV)を用い「物質の構造を知る」解析を行うのに対し、この次世代放射光施設は、主に低エネルギー領域のX線(軟X線、~2keV)を用い「物質の機能を知る」解析に強みを持ち、燃料電池開発や創薬などの分野での活用が期待されている。

軟X線向けの放射光施設については、スイス、フランス、英国、中国、韓国などに続き、近年、米国、台湾、スウェーデン、ブラジルでも新設が進んでおり、文部科学省の有識者委員会では2018年1月に、「諸外国と互角に競争するための環境が整っていない」、「高い産業利用ニーズが見込まれている」との認識から、早期に整備すべきとする報告書を取りまとめている。これを踏まえ、量子科学技術研究開発機構が「整備運用を進める国の主体」として指名され、2018年に9月には、同機構と、一般財団法人光科学イノベーションセンターを代表機関とする、宮城県、仙台市、東北大学、東北経済団体連合会による地域・産業界パートナーとが連携協力協定を締結し、施設の建設が具体化に向けて動き始めた。

東北大学では、2019年3月に次世代放射光施設の敷地造成が始まったのを受け、10月には「国際放射光イノベーション・スマート研究センター」が発足するなど、同施設を活用した国際研究ネットワークの構築や教育・人材育成に向けた準備が進められている。4月20日には、新型コロナウイルス感染症の制圧に関し、有望な放射光利用関連技術を取りまとめた上で、研究課題の募集を開始するとともに、ウェブ会議により「世界主要放射光施設サミット」を開催することを発表した。

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