原子力産業新聞

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「ぐぐるプロジェクト」最終年度 当事者の声生かす発信へ

23 Mar 2026

佐藤敦子

「ふくしまメッセンジャーズ」のメンバーら(右から3人目がサポーターの箭内夢菜さん)

環境省は319日、放射線の健康影響に関する情報発信事業「ぐぐるプロジェクト」の最終年度フォーラムを東京都内で開催した。2021年の発足から5年間の取り組みを総括するとともに、今後の情報発信のあり方について議論した。

 「ぐぐるプロジェクト」は、放射線の健康影響に関する正しい情報の発信を目的に2021年に開始された。福島第一原子力発電所事故から15年が経過する中、最新の科学的知見の周知をはかるため、公開講座や企業・学校向けセミナー、作品コンテストなどを展開し、今年度で最終年度を迎えた。

 フォーラムでは、5年間の取り組みを振り返るとともに、環境省による調査結果や有識者の分析が示された。同省は、福島第一原子力発電所事故の被災地における放射線の将来世代への健康影響について、「影響は低い、もしくは極めて低い」と認識する人の割合を80%まで高めることを目標に取り組んできたが、調査では2020年度の58.8%から2025年度は61.3%にとどまり、目標には達しなかった。一方で、「極めて低い」とする回答は12.3%から22.6%へと増加しており、一部では理解の深化もうかがえると指摘した。

 大阪大学の大竹文雄特任教授は、行動経済学の観点から情報発信の手法について分析。プロジェクトでは当初、国連科学委員会など専門的知見に基づく発信を重視してきたが、調査の結果、福島に関わる人や現地で生活する人の声の方が、受け手の認識に影響を与える可能性があると指摘した。これを踏まえ、同プロジェクトでは発信のあり方を見直し、福島で暮らす若者が自らの言葉で伝える取り組みへ軸足を移してきた。2024年には福島県在住・在勤・在学の10~30代で構成される「ふくしまメッセンジャーズ」を結成し、活動を開始した。

 フォーラムでは、「ふくしまメッセンジャーズ」の活動報告も行われた。メンバーは、地域でのフィールドワークや被災地住民との交流を通じて得た福島の実情を、全国でのイベントやSNSなどを通じて発信してきたという。参加した大学生からは、「学びを通じて認識が変わった」「国内にとどまらず世界にも伝える必要がある」といった声が聞かれたほか、SNS上には依然として福島に関するネガティブな情報も見受けられるが、実際には関心や理解を持つ人が各地にいると感じたとの意見もあった。

 また、事故から15年が経過する中、関心の低下も課題として浮き彫りとなった。福島で医療に携わる専門家からは、震災直後は放射線に関して切実な関心が寄せられていたが、現在では「過去の出来事」として受け止められる傾向が強まっているとの認識が示された。

 環境省は、5年間の取り組みは一定の成果を上げた一方で、関心の維持という課題も残るとし、同プロジェクトについて、形を変えながら来年度以降も継続するとしている。

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