【第59回原産年次大会】廃炉新段階で人材確保 廃炉に魅力を見出す若手の声
17 Apr 2026
「第59回原産年次大会」2日目には、「廃炉に挑む原子力人材の叡智と情熱」と題した福島セッション(セッション3)が行われた。福島第一原子力発電所の廃炉が長期に及ぶ中、作業は新たな段階に入りつつあり、それを担う次世代人材の確保・育成が重要な課題として改めて浮き彫りとなった。
東京電力ホールディングス・福島第一廃炉推進カンパニープレジデントの小野明氏は、燃料デブリの分析や試験的取り出しの進展により、「現場の軸足が燃料デブリの取り出しに移りつつある」と指摘。これまでの処理水対策や使用済み燃料の取り出しなど、リスク低減に向けた主要な取り組みは一定の方向性が見えてきた一方、今後は「極めて困難で不確実性の高い」デブリ取り出しという新たなフェーズに入るとの認識を示した。
こうした廃炉の段階の変化に伴い、人材への要請も質的に変化している。小野氏は、高度な技術課題に対応する高度専門人材と、長期にわたり現場を支える人材という「二層の人材」の必要性を指摘。遠隔操作や高線量環境下での作業など、高度技能を要する業務の増加を見据え、教育訓練環境の強化や海外の廃止措置経験者の活用に言及した。
続くパネルディスカッションでは、福島で学び、働く若者が登壇し、廃炉とのかかわり方を自らの言葉で語った。
福島工業高等専門学校4年の橋本拓真さんは、ロボット分野への関心から廃炉分野に進路を広げた経緯を説明。初めて福島第一原子力発電所を訪れた際には、「映像で見ていた景色でも、実際に見ると重みが違った」と語り、現場での体験や技術者との対話を通じて進路意識が具体化したとした。
一方、当初は廃炉に距離を感じていたという声も共有された。
福島県立小高産業技術高校3年の森山來星(らいる)さんは、震災後の復興が身近である環境で育ちながらも、当初は廃炉に対し「危ない、終わりが見えないもの」との印象を持っていたと振り返った。その後の学びや現場見学を通じて認識は変化し、「廃炉は未来の安全をつくるプロジェクト」との現場の言葉に共感。将来は電気工事士として廃炉に関わることを志していると述べた。
また、廃炉関連事業に携わる株式会社ビーエイブルの伊藤斐菜(ひな)さんは、入社当初は廃炉への関心が高かったわけではないが、業務を通じて現場への関心を深め、自ら希望して工事部へ異動した経緯を紹介。現在はドローンを活用した構内車両管理に従事し、作業工程を支える役割を担っているとした。その上で、地元出身者が現場に関わることが、外部人材との信頼関係構築や地域の安心感につながるとの認識を示した。
教育現場からは、福島県立相馬高校の高村泰広教諭が、普通科の生徒に原子力や廃炉への関心を持たせる難しさに触れつつ、現場見学や対話の機会を通じて理解を深める取り組みを紹介した。
議論では、若い世代の関心喚起には現地見学や体験の機会に加え、「身近な人の声」が重要であるとの認識が共有された。震災の記憶が薄れる中、福島県内においても廃炉への関心が必ずしも高くない現状が指摘され、橋本さんは、同世代でも関心に差があり、発電所の位置すら十分認識されていないケースがあると語った。その対応として、修学旅行などでの現地見学の活用や、東京電力のウェブサイトを通じたVR体験を入り口とする提案も示された。
モデレーターを務めた福島工業高等専門学校の鈴木茂和教授は、廃炉人材の育成には、学生たちが実際に現場を見て働く人の話を直接聞く機会を増やすことに加え、教員自身の理解深化も重要であると総括。国/産業界/教育機関の連携により、若い世代が廃炉に触れる機会を拡充する必要性を指摘した。廃炉は世界でも前例のない長期プロジェクトであり、技術的な挑戦の側面を持つ分野でもある。
作業が新たな段階に移る中で、その意義と魅力をいかに伝え、人材の裾野を広げていくかが、今後の進展を左右するカギとなる。





