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財務省が「スマート税関構想2020」、AIによるX線画像解析も

23 Jun 2020

AI によるX線検査画像解析のイメージ(財務省発表資料より引用)

財務省はこのほど、税関行政の中長期ビジョン「スマート税関構想2020」を発表した。多様化・複雑化が進む税関業務の現状を踏まえ、「Solution」(S:利便向上策)、「Multiple-Access」(MA:多元連携)、「Resilience」(R:強靭化)、「Technology & Talent」(T:高度化と人材育成)の4つキーワードに掲げ、AIなどの先端技術を活用し「世界最先端の税関」を実現するための施策を取りまとめたもの。

同構想では冒頭、過去30年間で、貿易額は約2.8倍、訪日外国人旅行者数は約13.2倍と、大幅な伸びを見せ、経済連携協定(EPA)の締結も進むなど、税関を取り巻く環境は大きく変化したとしている。こうした「モノの流れ」、「ヒトの流れ」、「カネの流れ」に加え、「社会構造の変化/災害リスク」、「先端技術の進展」、「国際治安情勢の変化」も見据え、「SMART」で今後10年程度に取り組むべき各種施策について工程表を整理。

その中で、「Technology & Talent」に関する取組として、ビッグデータ解析、AIによるX線画像解析、NQR装置(覚醒剤隠匿探知装置)の活用などがあげられている。これまでも税関では、輸出入貨物の増加に伴い、全国各地の港にコンテナ車にも対応できる大型X線検査装置の配備を進め、検査時間を短縮化するとともに、不正薬物、銃器・銃弾、ワシントン条約に該当する動植物、盗難自動車などを摘発してきた。今後は、貨物のX線画像データを大量に学習させAIで貨物の品目を自動識別しリスクを判定するシステムを実用化し業務のさらなる高度化・効率化を図っていく。NQR装置は、旅客の体内や身辺に隠された覚醒剤をラジオ波により探知する。諸外国税関での先端技術活用事例としては、オランダでAIを用いたコンテナX線検査画像解析アルゴリズムの実証試験が、オーストラリアや中国では顔認証技術により空港旅客の通関を自動化する取組が進められている。

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