原子力産業新聞

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エネ調基本政策分科会、コロナショック踏まえ次期エネ基に向けて議論

02 Jul 2020

10か月ぶりに開かれた基本政策分科会(インターネット中継)

総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(分科会長=白石隆・熊本県立大学理事長)が7月1日に開かれ、新型コロナウイルス感染症拡大を起因とする国内外の情勢変化を踏まえ、次期エネルギー基本計画の検討に向けて意見交換を行った。現行のエネルギー基本計画は2018年に策定されており、間もなくエネルギー政策基本法に基づく「少なくとも3年ごと」の見直し時期を迎える。

同分科会の開催はおよそ10か月ぶりで、冒頭、昨今の新型コロナウイルス感染症を起因とする情勢変化と、それを踏まえた課題と方向性について資源エネルギー庁が整理。IMFやIEAによる試算を示し、過去の第一次オイルショック(1973年)、第二次オイルショック(1979年)、リーマンショック(2008年)と異なり、物理的な行動が制限される「コロナショック」により、「2020年は世界的にGDPもエネルギー需要も大きく低下」などと見通した。また、国内においては、例えば電力需給で、4、5月は前年同月と比較し消費量がそれぞれ約3.6%(速報値)、9.2%(同)減少するなど、影響はあったものの、中央給電指令所や発電所での担当班が相互接触しないローテーション業務・バックアップ体制構築により、電力の安定供給に支障は生じていないと説明。その上で、今後の課題として、(1)新たな日常・生活様式・企業活動を踏まえたエネルギー需要高度化・全体最適化に向けた取組の検討、(2)エネルギー転換(電化・水素化など)の支援・推進、(3)資源・燃料の安定的な調達、(4)エネルギー・環境イノベーション投資に向けた環境整備・デジタル化の促進、(5)脱炭素エネルギー供給のさらなる導入、(6)レジリエンスの強化――をあげた。

初出席の白石分科会長

今回、分科会長として初めて会合に出席した白石氏は、2021年に見込まれるエネルギー基本計画の改定に向けて「大きな視点から方向性を議論して欲しい」と述べ、委員らに意見を求めた。

これに対し、化石燃料に関して、豊田正和氏(日本エネルギー経済研究所理事長)は、石炭火力発電でのアンモニア混焼など、脱炭素化に向けた技術導入・国際協力の可能性を披露。原子力立地地域からは、杉本達治氏(福井県知事)が、「総発電電力量に占める比率は現在6%」と、2030年エネルギーミックスの掲げる「20~22%程度」に遠く及ばない状況を指摘し、次期エネルギー基本計画に向けて、MOX燃料の再処理、リプレース、廃炉の進展を踏まえた交付金制度のあり方、電力業界の不祥事なども「真正面から議論していく」必要性を強調。

また、市民との対話活動に取り組む崎田裕子氏(ジャーナリスト)は、海洋プラスチック問題やレジ袋有料化など、SDGsを巡る最近の話題に触れたほか、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による水素社会構築の情報提供事業に対し若年層が高い関心を示していることを述べ、「社会との情報共有の定着化」の重要性を指摘。今回、委員として初出席した隅修三氏(東京海上日動火災保険相談役)は、官民一体となったイノベーション創出を図るべく「小型モジュール炉(SMR)のような安全性の高い原子力技術についても議論を」と主張した。

資源エネルギー庁は「コロナショック」に伴うエネルギー需給への影響の一つとして、人流・物流の変化により「需要が集中型から分散型にシフト」したことをあげた。武田洋子氏(三菱総合研究所政策・経済研究センター長)は、最近のアンケート調査結果から「コロナ前後で一番の違いは地方中核都市への分散」と、住まい方に変化が生じつつあることを述べた上で、「コロナ以前から日本が抱えていた社会課題への投資、産業育成や雇用創出につなげていくことが重要」として、次期エネルギー基本計画で、生活者の行動変化を見据えながら中長期的方針を示す必要性を強調した。

この他、中東の地政学的リスクへの対応、エネルギー教育・技術基盤の強化、原子力規制のあり方などに関する意見があった。

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