原子力産業新聞

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2019年度版原子力白書、人材育成をテーマに

31 Aug 2020

原子力委員会は8月31日、2019年度版原子力白書を取りまとめた。「原子力分野を担う人材の育成」を取り上げ、今後の取り組むべき方向性として、

  1. 研究・教育の国際的なプレゼンスの向上
  2. 学生を含む社会に対する原子力の魅力的な広報
  3. 産業界・国立研究機関と大学との連携による教育の質的向上――を示している。

白書では、同委が概ね1年間にわたり実施した有識者からのヒアリングを踏まえ、研究基盤の老朽化、学生間での人気低下、学部の大括り化による教育実験内容の希薄化など、国内の原子力教育を巡る課題を指摘。その上で、原子力分野の維持・発展のためには、「安全の確保を図りつつ、研究・開発および利用を支える人材を育成・確保していくことが必要」、「関係するセクター間での役割分担と連携により、優秀な人材を輩出していく好循環を構築していくことが重要」との考えから、今後の人材育成の参考となりうる海外での良好事例を紹介している。

例えば、研究インフラ活用・整備の取組としては、米国エネルギー省(DOE)による「原子力エネルギー大学プログラム」(NEUP)をあげ、22大学で運転中の研究炉のみならず、ニュースケール社が開発する小型モジュール炉(SMR)のシミュレータ設置(3大学)など、実用炉も支援の対象となっているとした。産官学の連携としては、フランスの様々な教育機関で実施されるプログラムの集約「12EN」を例示。原子力事業者もインターンシップの受入れや実験施設の提供などを通じ参画しており、「教育は原子力新規導入国への輸出コンテンツの一つ」との位置付けから、国際的なスケールで活躍できる人材の育成を目指している。

また、原子力発電所の新設が計画されている状況下、人材不足や専門的知見の喪失が課題とされる英国の取組として、産業界の主導による原子力労働需給評価(NWA、2019年)を紹介。それによると、現在計画中の原子炉(900万kW)が2030年頃までに運転するシナリオ1、その倍となる原子炉が運転開始するシナリオ2を設定・分析し、2017年の常勤雇用者数87,000人に対し、2030年までにシナリオ1では約40,000人、シナリオ2では約60,000人を新規雇用する必要があると予測している。

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