原子力産業新聞

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日立、英国の原子力発電所建設プロジェクトから撤退を決定

17 Sep 2020

日立製作所は9月16日、英国におけるウィルヴァ・ニューウィッド原子力発電所建設プロジェクトからの撤退を決定したと発表した。2019年のプロジェクト凍結から20か月が経過し、新型コロナウイルス感染拡大の影響などにより投資環境が厳しさを増していることを考慮し判断に至ったもの。〈日立発表資料は こちら

同プロジェクトは、英国で発電事業を行う日立の子会社ホライズン社(2012年に独E.OnとRWEから買収)がウィルヴァ・ニューウィッドに英国版ABWR(135万kW×2基)を建設するもので、2017年に英国規制当局より包括的設計審査(GDA)の認可を取得後、実現に向けて英国政府と資金調達モデルなどに関する協議が進められていたが、合意に至らず、日立は2019年1月に経済合理性の観点から凍結を決定した。

今回、同プロジェクトからの撤退を決定したことに伴い、日立は英国政府や関係機関とともに建設予定地の扱いや今後の協力などについて調整を進めるとしている。また、2019年3月期連結決算においてプロジェクト凍結に伴う減損損失2,946億円を計上していることから、業績への影響は軽微となる見込み。

再稼働と廃炉に力点が置かれている国内の原子力発電を巡る現状から、日本の産業界ではプラントの設計や建設に関わる技術力維持への懸念も示されており、日立の東原敏昭社長は、2019年のプロジェクト凍結決定に際し、特に今後の原子力人材確保について「他のメーカーとともに議論し、なるべく早い段階で結論を出す必要がある」などと、危機感を表明していた。先般取りまとめられた2019年度版原子力白書でも、「原子力分野を担う人材の育成」の課題について取り上げた海外トピックスの中で、新規プラントの建設が進む中国と遅延が見られる欧米との比較から、建設経験の維持・蓄積の重要性を指摘している。

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