原子力産業新聞

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エネ調基本政策分科会、エネルギー基本計画見直しの議論開始

14 Oct 2020

エネルギー基本計画見直しキックオフに際し挨拶する梶山経産相(インターネット中継)

総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会(部会長=白石隆・熊本県立大学理事長)は10月13日、次期エネルギー基本計画の策定に向け議論を開始した。

現行エネルギー基本計画は2018年7月に閣議決定されており、2030年の計画と2050年の方向性として、それぞれ「エネルギーミックス(原子力:20~22%、再生可能エネルギー:22~24%)の確実な実現」、「エネルギー転換・脱炭素化への挑戦」を示している。

冒頭挨拶に立った梶山弘志経済産業相は、法令上エネルギー基本計画見直しの期限となる2021年を控え、「東日本大震災から10年目の節目の年となる」とした上で、「福島復興を着実に進め安全最優先でエネルギー政策を進めていくことが大前提」と、原子力災害の教訓が議論の原点にあることを改めて強調した。同分科会では今後、「S+3E(安全性、エネルギーの安定供給、経済効率性の向上、環境適合性)を目指す上での課題整理」、「今世紀後半のできるだけ早期に『脱炭素社会』を実現するための課題検証」、「2030年目標の進捗とさらなる取組の検証」の順に検討を進めていく。

前回7月の同分科会会合では、「コロナショック」に伴うエネルギー情勢の変化を軸に議論が行われたが、13日の会合では、資源エネルギー庁が現行エネルギー基本計画策定以降の国内外の状況変化を整理し、次期基本計画検討に向けた課題を提示。これを踏まえた論点として、世界的な脱炭素化に向けた動き、エネルギー自給率の向上、サプライチェーンの再構築、需要サイドからの取組、日本の技術開発リードなどがあげられた。

基本政策分科会の模様(経産省庁舎にて、インターネット中継)

現行エネルギー基本計画で原子力は「長期的なエネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源」と位置付けられており、総合資源エネルギー調査会の原子力小委員会委員長代理を務めている山口彰氏(東京大学大学院工学系研究科教授)は、「原子力の持続的な活用はエネルギーの自立に不可欠」として、効率的な活用に向け制度・プロセス面の構築も必要なことを指摘。

また、杉本達治氏(福井県知事)は、北海道における高レベル放射性廃棄物処分地選定に向けた文献調査、核燃料サイクル施設の審査、女川発電所再稼働を巡る自治体の判断など、立地地域の立場から原子力政策に係る最近の動きを述べた上で、「これまでの受動的な対応では国民の理解は進まない」として、国に対しより前面に立った取組姿勢を求めた。

今回初出席となった澤田純氏(NTT社長)は、デジタル化が進む中で増加傾向にある自社の電力需要に備えた自家発電計画のコスト的課題を述べ、蓄電池技術や直流・交流のハイブリッドシステムを例に、長期的な研究開発における国のリーダーシップ発揮を期待。また、NTTが5月にITER機構と包括連携協定締結を行ったことなど、革新的原子力技術への進出機運に触れ、「安全性が高くコンセンサスを得やすい」として、小型炉による新増設・リプレースの展望にも言及した。

この他、委員からは、水素・燃料電池の導入、石炭火力のフェードアウト、産業競争力の強化、教育に関する意見や、脱炭素化に係る国民・企業の価値観や行動の変化を指摘する声、基本計画の議論に関し目標とするタイムスパンへの疑問や思考停止を招くことへの危惧などもあがった。

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