日本原子力学会の「持続的な原子炉・核燃料サイクル検討・提言分科会」(主査=斉藤拓巳・東京大学大学院工学系研究科教授)は11月28日、中間報告書を発表した。同分科会では昨夏より、「エネルギー・経済安全保障とカーボンニュートラルを両立する社会の実現」に貢献する原子炉システムと核燃料サイクルのあり方について検討を開始。同報告書では、日本の原子力利用シナリオに関する政策提言に向け中間整理を行った。そこでは、「100年程度を目安に、時間フェーズに応じた技術の進化が見通せ、かつ数百年程度に及ぶ資源確保と環境影響の展望が描けるシナリオが必要」と述べ、短期的な観点から、既設軽水炉の再稼働と最大限活用中期的な観点から、安全性を向上させた革新軽水炉の新増設あるいはリプレース、高経年化した軽水炉の廃止措置プロセスの円滑な推進長期的な持続性の観点から、核燃料サイクルを閉じて、エネルギー資源の確保と放射性廃棄物の負担軽減を同時解決していく高速炉サイクルの実用化――の実現に向けた取組を、着実に継続・推進していく必要があると強調。「持続的な原子力利用シナリオ」の要件として、日本のエネルギー需給構造の特徴を踏まえ、エネルギーミックスとの整合性自律的なエネルギー需給構造核燃料サイクルと革新炉(高速炉)との整合性プルトニウム利用方針円滑な廃止措置最終処分との整合性人材育成とサプライチェーン――に適合することが必要と述べている。その中で、将来の高速炉の実用化に向け、サプライチェーンに関して、「プラント設計および機器製造の技術を持つメーカーを中核にして、サプライチェーンを構成する計装・機器メーカー、素材メーカー等の技術力が不可欠」と指摘。サプライチェーン再構築の必要性とともに、「もんじゅ」に係った技術者のリタイアや技術知見散逸の懸念から、「実証炉および関連する燃料サイクル施設の建設を急ぐ必要がある」と述べている。また、人材育成に関しては、「原子力分野を志す学生数を増やすことは、持続的な原子力利用を下支えする重要な点」と強調。社会の持続的な発展の中で「原子力エネルギーのステータスの再確立が求められる」とも指摘し、その実現に向け、予見性ある原子力政策や国民各層との丁寧なコミュニケーションが必要と述べている。
05 Dec 2023
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資源エネルギー庁は11月29日、2022年度のエネルギー需給実績(速報)を発表した。それによると、最終エネルギー消費は11,897PJ((ペタ〈10の15乗=千兆〉ジュール)))で、対前年度比2.9%減。部門別にみると、企業・事業所他部門は物価上昇や海外景気悪化などで生産活動が鈍化したことにより減少、運輸部門はコロナ禍からの回復により2年連続で増加、家庭部門は微増となった。2022年度、一次エネルギー国内供給は18,283PJで同2.3%減。そのうち、化石燃料は同1.9%減となった一方、再生可能エネルギー(水力を含む)は10年連続で増加。原子力は同21.7%減で、非化石燃料の同4.4%減に大きく影響した。同年度内は、計10基の原子力発電プラントが稼働。新たな再稼働プラントはなかった。また、関西電力大飯3・4号機、九州電力玄海3・4号機のテロなどに備えた「特定重大事故等対処施設」の設置期限が年度内に到来。それぞれ同施設整備のための停止期間があった。発電電力量は1兆82億kWhで同2.5%減。非化石発電率は27.3%で同0.1ポイント増となった。発電電力量の構成は、再生可能エネルギー(水力を含む)が21.7%で同1.4ポイント増、原子力が5.6%で同1.3ポイント減、火力(バイオマスを除く)が72.7%で同0.1ポイント減。また、エネルギー起源CO2排出量は9.6億トンで、同2.9%減、2013年度比22.5%減と、1990年度以降で最少となった。CO2排出量は、リーマンショック後の経済回復と東日本大震災後の原子力発電所停止などの影響で2013年度まで4年連続で増加したが、その後のエネルギー消費減、再生可能エネルギーの普及や原子力発電所の再稼働により減少傾向にあった。2021年度は対年度比2.0%増となったが、2022年度は企業・事業所他のエネルギー消費減が影響して2年ぶりに減少した。電力のCO2原単位は、0.46kg-CO2/kWhで、同1.8%減となった。
04 Dec 2023
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北海道・三陸・福島の復興を応援する「ホタテ祭り」が11月30日と12月1日の両日、東京・JR新橋駅西口SL広場で開催された。2日間の「緊急プロジェクト!」と題する同イベントの会期初日には、グループ総力を挙げて国産水産品の消費拡大に努める東京電力の小早川智明社長が駆けつけ、出店ブースでの試食や、「殻付きホタテの浜焼き」の調理・販売に当たった。福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出が開始されてから3ヶ月が経過したが、中国による日本産水産物の輸入停止措置の影響は深刻で、中国向けの水産物の輸出額が前年同月を90%余り下回る状況が続いている。特に大きな影響を受けている北海道・三陸産ホタテの消費拡大を呼びかけるとともに、福島県産の魚介類「常磐もの」を使ったメニューや、地酒・地ビールなどを提供し東日本大震災からの復興を後押しするのがねらい。イベントには近隣の商業施設「ニュー新橋ビル」や新橋二丁目烏森町会も協力。周辺は、ホタテの他、カニ味噌甲羅焼、ポーポー焼き(サンマのすり身に味噌と薬味を混ぜて団子にした漁師飯)など、香ばしさが漂い、人気のブースには行列ができるほどとなり、多くの仕事帰りの人たちが立寄り賑わった。入場無料。12月1日の午後8時まで。なお、農林水産省、経済産業省らは12月1日、これまで主に中国でなされてきたホタテの加工作業を、ベトナムで実施するなどの新たな支援策を発表。これまで中国で殻むき加工がなされてから米国に輸出されていたホタテについて、ベトナム等で殻むき加工を行って米国に輸出するルートの構築を進めており、農林水産省は先月からベトナムの水産加工施設で、輸出に必要な衛生条件を満たすかどうかの調査を行っている。今月上旬にはベトナムで商談を希望する事業者の募集を開始しているほか、販路拡大に向け、福島県や北海道などの産地に海外バイヤーを招き、商談の場を設けることも計画中。宮下農水大臣は、国内の消費も拡大していることから「中国などによる禁輸措置のダメージを乗り越えつつある」と述べている。
01 Dec 2023
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「青森県・立地地域等と原子力施設共生の将来像に関する共創会議」(資源エネルギー庁)の初会合が11月28日、青森市内で開かれた。〈配布資料は こちら〉今夏、青森県の宮下宗一郎知事が核燃料サイクル政策について県と関係閣僚らが意見交換を行う「核燃料サイクル協議会」で政府に早期設置を要請していたもの。県内には、建設中も含め、東北電力および東京電力の東通原子力発電所(東通村)、電源開発大間原子力発電所(大間町)、日本原燃六ヶ所再処理工場(六ヶ所村)、リサイクル燃料貯蔵使用済燃料中間貯蔵施設(むつ市)が立地。同会議は、国・立地自治体、事業者らが一体となり地域と原子力施設が共生していく将来像についてともに考え、築き上げていく場として、資源エネルギー庁が立ち上げた。今後、実務レベルのワーキンググループを設置し、来夏を目途にその取組の工程表が策定される運び。立地地域と原子力施設の共創会議については、2021年に福井県を対象に立ち上げられており、昨夏、将来像の実現に向けた基本方針を取りまとめている。青森県の共創会議は、立地自治体として、青森県、むつ市、六ヶ所村、大間町、東通村の各首長、事業者として、日本原燃、東北電力、東京電力、電源開発、リサイクル燃料貯蔵、電気事業連合会の各代表者の他、県の商工団体代表者、有識者らがメンバー。議論に先立ち、資源エネルギー庁が、立地4市町村の産業構造について整理。2045年に向け「生産年齢人口が大きく減少し、経済の担い手が減少」との問題意識を示した上で、むつ市は商業施設が多く卸売業・小売業が、六ヶ所村は原子力施設関連の製造業が、大間町と東通村は建設業や漁業が、それぞれ主要産業となっているなどと、各市町村の特徴を分析。宮下知事は、むつ市長在任時代にリードしていた立地市町村懇談会における検討の経緯も振り返り、「未だに立地地域に光が当たっていない」と憂慮し、「地域がまとまり国と連携し県全体が自立的に発展していく仕組みづくり」が図られるよう、共創会議での有意義な議論を期待した。立地市町村を代表し、むつ市の山本知也市長は、「運転期間延長や廃炉が進む福井県とは異なり、事業との共生、リスクとの共生が実質的にこれから始まる地域」とした上で、4市町村の共通課題として、防災安全対策と地域振興策の充実・強化を提示。六ヶ所村の戸田衛村長は、むつ小川原開発から続く産業振興策の歴史を振り返り、「先人たちがどのような思いで原子燃料サイクル施設を了承したのか。現在の六ヶ所村は、当時先人たちが描いていた未来への『道半ば』」とあらためて問題提起。大間町の野﨑尚文町長、東通村の畑中稔朗村長は、いずれも将来の町村人口の減少を懸念し、それぞれ、「建設の早期再開・本格稼働は重要」と、原子力開発の地域振興における役割を、600年の歴史を有する「下北の能舞」他、地元文化財を通じた観光振興の可能性などを強調した。これを受け、事業者として、日本原燃の増田尚宏社長は、六ヶ所再処理工場の「2024年度上期のできるだけ早期」のしゅん工を目指しオールジャパン体制で審査・工事に取り組んでいるとした上で、「地域とともに発展していくための取組」として、地元企業の活用、人材育成、地域産業の活性化をあげ、「当社事業は地域の皆様の信頼と支えなくして成り立たない」と強調した。
29 Nov 2023
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原子力委員会が主導する原子力平和利用の枠組み「アジア原子力協力フォーラム」(FNCA)の大臣級会合が11月28日(日本時間)、タイ・バンコクで開幕した。FNCAは、1999年に日本、オーストラリア、中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの9か国で発足。その後、徐々に参加国が拡大し、現在はバングラデシュ、カザフスタン、モンゴルを加え、計12か国が参加。毎年、行われる大臣級会合は、日本と他の参加国と、交互で開催されるのが通例となっており、今回のタイでの開催は、2000年の初会合以来、23年ぶりとなる。開会宣言に立ったタイのペルムスーク・スッチャピワート高等教育・科学・研究・イノベーション事務次官は、「原子力科学技術の平和的利用は多くの国々の発展にとって不可欠のもの。その適切な活用は多くの利益をもたらし、大きな成果をもたらす」と強調。さらに、FNCA傘下で実施される放射線利用を中心としたプロジェクト活動にも関連し、「貧困と飢餓の撲滅、エネルギー安定供給の確保、気候変動への対応、水資源の管理、人々の健康増進」と、その成果を列挙。また、戦乱が絶えない昨今の世界情勢を憂慮し、「異なる意見も排除しないバランスある議論を」とも述べ、有意義な会合となるよう期待した。続いて、原子力委員会の上坂充委員長が、国会対応のため出席がかなわなかった高市早苗内閣府科学技術担当相の挨拶を代読。その中で、高市大臣は、カーボンニュートラル社会の早期実現に向けた原子力の役割と責任に言及するとともに、「新しい多様な人材が幅広く活躍できる場となる可能性を秘めている」などと述べ、FNCA活動を通じてアジア地域の持続的発展に期待を寄せた。今回のFNCA大臣級会合では、シンガポールが初めてオブザーバー参加。同国の代表者は、原子力技術に関し、放射線治療分野での利用が主となっている国内の現状を述べた上で、将来の気候変動対策における有用性、安全確保の重要性にも言及し、「参加各国から学びさらに知識を深めていきたい」と意欲を示した。セッションでは、円卓討議「人間の健康と医療福祉における原子力科学の貢献」を通じた議論、国別報告「カントリーレポート」の発表が行われ、28日晩(日本時間)に共同コミュニケが採択される運び。
28 Nov 2023
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日本原子力産業協会(JAIF)の新井史朗理事長は11月24日、記者会見を行い、30日に開幕するCOP28(UAE ドバイ)におけるJAIFの取組について紹介した。COP28に向けては、9月に世界原子力協会(WNA)とUAEの原子力公社(ENEC)によって、「ネットゼロニュークリア」イニシアチブが立ち上がっており、JAIFも発足メンバーとして参加している。〈既報〉会期中、海外の原子力産業団体とともに、IAEAと連携し、同イニシアチブのもと、パビリオン設置などの活動を行い、共同声明を発出する予定。COPで原子力に特化したパビリオンが設置されるのは、今回で3回目となる。2021年に英国・グラスゴーで行われたCOP26では、世界150か国以上の原子力関係組織が結集した草の根イニシアチブ「Nuclear for Climate」(N4C)が初めてブースを設置。2022年のCOP27(エジプト シャルム・エル・シェイク)では、IAEAが初めて原子力パビリオンを設置したほか、JAIFを含む世界の原子力産業団体が運営に協力し、「現在の地政学的状況における原子力発電の重要な役割に関する共同声明」を公表している。今回のCOP28でも、各国代表団が集まるメイン会場にパビリオンを設置し、プレゼンテーションやメディアインタビューを実施。12月7、8日に開催されるイベント「ネットゼロニュークリアサミット」では、世界から官民のハイレベルな関係者が参集し、パネルディスカッションやラウンドテーブルなどが行われる予定だ。新井理事長は、「COPにおける原子力のプレゼンスは年々高まっており、原子力が気候変動対策の有効な手段になるとの認識も確実に浸透してきている」と強調。「COP28で、気候変動対策において原子力が果たす多大な貢献を訴求するとともに、現地から様々な情報を発信していく」としている。
28 Nov 2023
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日本原子力産業協会は11月24日、「原子力発電に係る産業動向調査2023報告書」を刊行した。同協会が原子力発電に係る産業の全体像を把握し、事業活動に活かすことを目的に、1959年以来、毎年実施しているもの。今回の報告書は、国内で10基の原子力発電プラントが再稼働していた2022年度を対象とする調査の結果で、電気事業者、重電機器メーカー、商社、サービス業など、245社からの回答を取りまとめた。それによると、電気事業者の原子力関係支出高は、1兆8,392億円で、前年度比4%増加。鉱工業他における原子力関係支出高は、1兆9,104億円で、同6%増加した。電気事業者の支出高、鉱工業他の売上高ともに、近年、横ばいの状態が続いている。電気事業者の原子力関係支出高の内訳を費目別にみると、前年度との差が大きいものとしては、「機器・設備費」が558億円減少、「土地・建物・構築物」が540億円の増加、「運転維持・保守・修繕費」が503億円の増加。新規制基準対応支出額は3,322億円で全体の約18%を占めており、2019年度以降、減少傾向にある。鉱工業他の原子力関係売上高を納入先別にみると、「電気事業者向け」が前年度比2%減の1兆2,428億円となった一方、「鉱工業等向け」が33%増の5,650億円となった。さらに、産業構造区分別にみると、「プラント既設」が5%増の1兆324億円、「バックエンド」が11%増の5,757億円となった。また、定性調査では、現在(調査実施期間の2023年6、7月)の景況感を「悪い」とする回答が、近年、徐々に減少していたが、今回の調査では大幅に減少し48%となり、「悪い」と「普通」が拮抗。1年後の景況感については、前回調査で5年ぶりに「良くなる」が「悪くなる」を上回ったが、今回は、さらに「良くなる」が対前年度比8ポイント増の23%となり、「悪くなる」の7%を大きく上回った。一方で、原子力発電所の長期停止が売上のみならず「技術力の維持・継承」に大きな影響を与えており、8割以上がOJT機会の減少、3割以上が雇用の確保、2割以上がモノや役務の入手に具体的な影響が出ていると回答。他社の撤退によって影響を受けている、または受ける恐れがある分野としては(複数回答可)、4割以上が「技術者・作業者」、2割以上が「素材・鋼材」と回答。人材に関しては、採用や配置について65%が「現状維持」と回答した一方で、21%が「拡大する」意向を示した。国内の新型炉・革新炉については、76%が関心を示し、そのうち、6割近くが「プロジェクトへの参加や機器・部品の供給を行いたい」といった意欲を表明。海外の新型炉・革新炉についても、56%が関心を示しており、そのうち、5割近くが積極的な参画に意欲を表した。原子力発電に係る産業の課題としては、8割以上が「政府による一貫した原子力政策の推進」を望んでおり、「早期再稼働と稼働したプラントの安定運転によって国民の信頼を回復することが必要」と考えている割合も多いことが示された。原産協会の新井史朗理事長は、同日の記者会見で、景況感の改善に関し、「世界的なエネルギー価格の高騰やロシアのウクライナ侵攻によりエネルギー安全保障の重要性が高まる中、国内においては、『GX脱炭素電源法』((脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律))が成立し、原子力を積極的に活用していく方針が明示されたことが背景にあると推測している」と述べた。
27 Nov 2023
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全国各地の魚介グルメが堪能できる「SAKANA & JAPAN FESTIVAL」(実行委員長=近藤豊和・産業経済新聞社上席執行役員)が11月26日まで、東京・お台場で開催されている。東日本大震災からの復興応援を目的に、「常磐もの」と呼ばれる福島の魚介を使った料理が味わえる「発見!ふくしまお魚まつり」、北海道・三陸エリアを中心に厳選した魚介料理を集めた「食べて応援!ニッポンの幸」エリアも併催・併設。会場内には約80の店舗ブースが設けられ、会期中(11月23~26日)、約15~20万人の来場者が見込まれている。23日の会期初日は、晴天に恵まれ、祝日でもあったことから、10時の開場前から入場待ちの列ができ、家族連れや若者同士、近隣のアウトドア系イベントへの参加がてらに立寄るサイクリストや愛犬家など、多くの来場者で賑わった。ノドグロ、ヒラメ、アナゴ、メイプルサーモン、ネギトロ、生エビと、「常磐もの」をふんだんに盛った「ふくしま全部のせ丼」(かに船)を提供する海鮮丼ブースには、開場から間もなく長蛇の列ができる盛況。定評ある「福島の地酒」飲みくらべコーナー(福島県酒造協同組合)も、魚介類と相性のよい品種を揃え、人気を博していた。開会挨拶に立った土屋品子復興相は、風評が懸念される一方、多くの飲食店が福島産の魚介類の活用に積極的なことを「本当に嬉しく思う」と述べた上、その安全性について「国内外にしっかり発信していく」と強調。栄養士の資格を持つ同相は、海鮮丼やポーポー焼き(サンマのすり身に味噌と薬味を混ぜて串刺し団子にした漁師飯)を試食し、「日本料理は世界でも注目の的で、健康に直結する。是非、お魚を食べる習慣をつけてもらいたい」とも話した。マグロ解体ショーの模様昨今、輸出減が憂慮されるホタテを使った料理も、北海道、青森、宮城から多数出店しそれぞれの味を提供。宮城県石巻産のホタテを使った「ホタテクリームコロッケバーガー」(Bon Quish)は、和洋中3種類の味が楽しめる。会期中の毎日、数回行われる本マグロの解体ショー(豊洲かんぺい会)も見どころだ。さばきたての新鮮なマグロの赤身、中トロ、大トロをのせた「本まぐろの大とろ入り三色丼」も味わえる。また、食品の安全性に関する理解に向け、会場内では、専門家による放射性物質検査の実演・説明が行われている。会場入口は、新交通「ゆりかもめ」東京国際クルーズターミナル駅(旧 船の科学館駅)からすぐ。開催時間は、24、25日が午前10時~午後8時、26日が午前10時~午後6時。入場無料(飲食代は別途)。
24 Nov 2023
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政府の復興推進委員会(委員長=今村文彦・東北大学災害科学国際研究所教授)の第43回会合が11月22日に開催され、東日本大震災被災各県(岩手、宮城、福島)の復興状況に関する報告を受けて、復興・再生に向け意見が交わされた。〈配布資料は こちら〉冒頭、挨拶に立った復興庁の高木宏壽副大臣は、最近の被災地視察経験から、「復興の状況を一言で言えば、実に複雑多様」と強調。特に、福島県については、避難指示解除の段階による復興状況の差異に言及し、「原子力災害からの復興は今、ようやく緒に就いたばかり」と述べ、引き続き国が前面に立って支援していく姿勢を示した。福島県内の避難指示については、政府・原子力災害対策本部が21日、富岡町に設定された帰還困難区域を11月30日に一部解除することを決定。これで、6町村に設定された特定復興再生拠点区域((帰還困難区域のうち、避難指示を先行して解除し居住を可能とすることにより、復興・再生の推進を図るエリア))のすべてが解除されることとなる。リモートで出席した内堀雅雄委員(福島県知事)は、あらためて「帰還困難区域すべてを避難指示解除し、復興・再生に最後まで責任をもって取り組む必要がある」と強調。同氏は、福島第一原子力発電所で発生するALPS処理水の海洋放出に関し、一部の国における輸入規制強化などの影響を懸念し、「幅広い業種に対する万全な風評対策に政府一丸となって最後まで全責任を全うして欲しい」と国に対し要望。さらに、発災から12年8か月を経て「今後は風化との闘いとなる」とも述べ、マスメディアを巻き込んだ積極的な情報発信、若手に対する災害教育の重要性を強調した。現地調査報告を行う戸塚委員「福島復興の姿を世界に発信すべき」と今回の委員会会合では、教育が一つの論点となった。福島県の大熊町、双葉町、浪江町を10月25日に現地調査で訪れた戸塚絵梨子委員(パソナ東北創生社長)が、その調査結果を報告し、今春、大熊町に開校した幼保小中一体化施設「学び舎 ゆめの森」の校長の話を紹介。それによると、特徴的な校舎や少人数を活かした特色ある教育が注目され「同校に入るための町内転入者も増えている。子供たちは地域のコミュニティを担う大きな存在だ」という。また、浪江町の震災遺構「請戸小学校」では、町担当者より、発災時の適切な避難により教職員・生徒全員の命が守られた経験、防災教育・訓練の重要性が説明されたことを強調。戸塚委員は、この他、「創造的復興の中核拠点」を目指し浪江町内に設立された福島国際研究教育機構(F-REI)など、計7か所の施設・区域を訪れた感想として、「『これから始まっていく』というエネルギーを感じた。世界に注目され飛躍していく場所となる」などと述べ、福島県が東北全体の復興の牽引役となることを期待した。これに対し、「子育て世代」と称する小林味愛委員(株式会社 陽と人 代表)は、教育の充実化に加え、小児医療の課題などを指摘。高等教育に携わる山﨑登委員(国士舘大学防災・救急救助総合研究所教授)は、「発災から10年以上が経過し、学生が学ぶにも断片的な情報だけで、全体を俯瞰し理解するのが難しくなっている。被災地から離れるほど、小中学生は当時のことを既に知らない」と述べ、過去の取組を再整理し、継続的な防災教育・人材育成が図られるよう求めた。今村委員長は、「学び舎 ゆめの森」について、今後の運営に向け予算面が課題となっていることを指摘した。内堀委員は、今回、復興・再生のさらなる推進に向けて、財源確保の必要性を強調している。今後の会合では、「第2期復興・創生期間」(2021~25年度)における財源の枠組みが論点となりそうだ。※写真は、いずれもオンライン中継より撮影。
22 Nov 2023
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原子力機構・菅原氏©原子力機構“16,000トン”、“300億円”、“4.8kg”――。これは、日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究センター研究主幹の菅原隆徳氏が「サステナブルな原子力利用への鍵」として標榜する「燃えないウランの蓄電池化」、「使用済燃料の元素利用」、「熱・放射線による発電」に関し、それぞれ潜在化するポテンシャルを表す数値だ。菅原氏は、11月15日に開催された同機構の年次報告会で「放射性廃棄物を資源に変える技術革新」と題し講演。同氏はまず、天然ウランから原子力発電所の燃料となるウラン235を除き貯蔵されている劣化ウラン約16,000トン(2021年時点)に着目した「レドックスフロー電池」(URF電池)の展望を紹介した。URF電池は、ウランの酸化・還元反応を利用するもので、1基当たり3万kWh(およそ3,000世帯分/日)の容量を持ち、「燃えないウランの貯蔵」16,000トンを74万kWh相当の「貯電」とすることが可能だという。再生可能エネルギーや原子力発電の余剰電力を蓄電し、電力供給の系統安定化に資することも期待される。また、菅原氏は、使用済燃料中で14%を占める白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム)につき、資源価値が約300億円/年に上ると強調。実際、抽出されるパラジウムは、歯科材料やアクセサリーとして有効利用されている。使用済燃料からの有用元素分離の研究に関しては、内閣府の革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)で実施された「核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化」(藤田玲子プロジェクト・マネージャー)が知られているが、「基礎の段階にあり未だ実用化に至っていない」ことから、新たな分離手法「レーザーアシスト」の開発・高度化や、いわゆる「都市鉱山」への技術応用に期待を寄せた。菅原氏が構想する絵姿(原子力機構発表資料より引用)さらに、同氏は、米国NASAの火星探査ローバー(自動車の一種)用熱源として用いられるプルトニウム238の、わずか4.8kgで出力110Wに相当する発電の可能性に言及した上で、電気と磁気のハイブリット「スピントロニクス」など、新たな技術や、放射性廃棄物を利用した「熱・放射線による発電」の実証計画を紹介した。菅原氏は、こうした放射性廃棄物を資源に変える技術革新を通じ「現状の核燃料サイクルに新しい価値を加えていきたい」と強調した。
21 Nov 2023
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電気事業連合会の池辺和弘会長は、11月17日の定例記者会見で、将来の電力需給に関し、「電力需要を定量的に見定め、長期的な需給バランスを検討することは大変重要であり、エネルギーミックスを考える上での出発点」と述べ、まず需要想定の位置付けを整理することの重要性を強調した。〈電事連発表資料は こちら〉池辺会長は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が7日に始動した有識者会議「将来の電力需給シナリオに関する検討会」について言及。同検討会は、資源エネルギー庁が4月に示した「10年超先の電力需給のあり得るシナリオ」について、建設のリードタイムが10年を超える電源も存在することから、シナリオ検討の時間軸として、2040年および2050年を対象とする将来的にはエリア別のシナリオを策定することを念頭に置きつつ、検討会においては、全国のシナリオを策定する「kW・kWhバランス」を検討することとし、将来的な調整力の必要量については、分析の進め方や論点を踏まえ検討を行う――もので、2024年度末までの取りまとめを目指す。初回会合の議論について、池辺会長は、「2050年カーボンニュートラルに向けて、2040年および2050年を対象に、多様な視点から、将来の電力需給シナリオを検討する方向性が確認された」と紹介。具体的なシナリオ想定は今後、検討会で作業が進められるが、同氏は将来の電力需要について、電化率の上昇やデジタル化の進展に伴い大きく伸びていくとの展望を明らかにするとともに、日本エネルギー経済研究所などの各機関の分析においても、発電電力量は、2020年度に約1兆kWhだったのが、2050年には約1.3兆~1.6兆kWhにまで増加するといった見通しにも触れた。また、供給力に関しては、火力発電所の休廃止が進む中で新設が停滞。各種調査・環境アセス、建設工事など、今後の電源開発に要するリードタイムは、太陽光で約8年、風力で約10年、水力、地熱、水素で各々約13年、原子力で約20年と、相応の年月が見込まれることから、池辺会長は、「カーボンニュートラルを達成していくためには、時間軸を考慮した上で、既設電源の脱炭素化や新規電源の建設を計画的に進めていくことが重要」と強調した。今後、同検討会が策定するシナリオは、法令に基づく各種計画・マスタープランとの整合性を前提とするものではないが、現行の「第6次エネルギー基本計画」は、来秋、エネルギー政策基本法に定める策定から3年後の改定時期を迎えることから、こうした中長期のエネルギー見通しに係る分析も検討材料となりそうだ。
20 Nov 2023
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「国際原子力エネルギー協力フレームワーク」(IFNEC)の閣僚級会合が11月2、3日、ガーナ(アクラ)で開催され、開催地のアフリカを念頭とした新規参入国に対し、「原子力先進国ができることは何か」を主なテーマに議論がなされた。日本からは原子力委員会の佐野利男委員らが出席した。〈原子力委員会発表資料は こちら〉IFNECは、米国の提唱で2006年に立ち上げられた「国際原子力エネルギー・パートナーシップ」(GNEP)を前身とする原子力国際協力の枠組みで、概ね毎年開かれる閣僚級会合は日本でも2018年に開催されている。今回のIFNEC閣僚級会合の参加国・機関は、メンバー国がオーストラリア、カナダ、中国、ガーナ、ハンガリー、日本、ケニア、韓国、オランダ、米国の10か国、オブザーバー国・機関がナイジェリア、アフリカ原子力委員会(AFCONE)で、この他、国際機関として、IAEA、OECD/NEA。主催国として開会挨拶に立ったガーナのクワク・アフリイエ環境科学技術相は、同国における原子力発電の「脱炭素化実現に向けた重要なエネルギー源の一つ」としての位置付けを強調し、IFNEC会合の開催を歓迎した。原子力発電を持たないガーナでは現在、小型モジュール炉(SMR)の導入を検討中。IFNECには2010年から参加している。AFCONEからは、「アフリカの人口は急増しており、原子力発電の利用可能性の検討は喫緊の課題であり、複数のアプローチを活用して原子力発電導入への検討を進めていきたい」との発言があった。14日の原子力委員会定例会でIFNEC閣僚級会合出席の報告を行った佐野委員は、「原子力エネルギーを導入していないアフリカ諸国を将来のマーケットとした場合に、今後の諸問題をどう考えるか」と述べ、安全確保、ファイナンス、人材育成、PA、規制、バックエンドなどの課題を提示。SMR開発に関しては、日本企業の参画の一方、先日の米国ニュースケール社によるSMR初号機建設計画の中止にも鑑み、「ベンダーの方もしっかりとした技術を確立すべき」と強調。さらに、大型軽水炉のスケールメリットにも言及し、各国のエネルギー需要に応じた開発を進めていく必要性などを指摘した。上坂充委員長は、「経済的にも発展していくアフリカに安全な原子力を適切に導入していくため、規制の調和に関し先進国がどう対応すべきか」と問題意識を示した上で、最近のIAEAによる関連会合への出席経験も踏まえ、SMR規制の標準化に向けて、今後も、IFNECでアフリカのSMR開発を取り上げる必要性などを指摘。さらに、原子力開発が進む南アフリカの大学における教育スタッフの意欲に触れ、人材育成で日本が協力していくことの重要性を強調した。
16 Nov 2023
1665
東日本大震災・福島第一原子力発電所事故後の福島に関する学生の知識が、時間の経過とともに薄れている。福島大学教育推進機構の前川直哉准教授らが同学学生を対象に実施した調査で明らかになったもの。〈福島大発表資料は こちら〉11月1日に発表された同調査結果によると、2019~22年度、福島大の一般教養科目「ふくしま未来学入門」を受講する学生を対象に、成績とは無関係の調査・研究目的として、同一の設問で震災・原子力発電所事故に関する知識チェックを実施したところ、20点満点の平均得点は、2019、21、22年度で、それぞれ9.5点、8.6点、8.1点と低下傾向にあり、学生の知識が時間の経過とともに薄れてきている多くの設問で正答率の低下がみられたが、「事故を起こした発電所の正式名称」、「シーベルトの定義」に関する設問では正答率が上昇した福島県内出身者の得点は、「福島県以外の東北地方」、「東北地方以外の国内」の出身者よりも統計的に優位に高かった――ことが明らかになった。調査で実施した知識チェックは、「震災と原発事故」、「原発事故と避難」、「放射線と除染」、「現在の福島県」の4セクションに分類され、各セクション5問・全20問で5者択一形式。計968名の学生が回答した。その中で、「福島第一原発でつくられた電気の供給先」との設問(正解は、つくられた電気は首都圏など、東京電力管内に供給されていた)では、正答率が2019、21、22年度で、それぞれ49.6%、47.0%、33.9%と、大幅に低下。この他、正答率が低下した設問としては、「風向きの影響で多くの放射性物質が降り注いだ方角」、「ピーク時の県内外への避難者数」などがあった。また、県内・県外の出身者で正答率の差が大きかった設問としては、「除染の具体的作業」(正解は、表土をはぎ取る)があり、正答率は、福島県で84.4%、福島県以外の東北地方で46.2%、東北地方以外の国内で51.7%だった。今回の調査結果を踏まえ、研究グループでは、「震災・原発事故に関する『風化』は確実に進行している」と懸念し、「学校と社会全体で知識を伝えていく必要がある」などと分析・考察している。
15 Nov 2023
2244
若手の指導に当たる小泉さん(厚労省発表資料より引用)厚生労働省は11月10日、卓越した技能者の功績を称える「現代の名工」の2023年度表彰対象者150名を発表。13日には都内ホテルで表彰式が行われた。同表彰制度は、技能の世界で活躍する職人、これを志す若者に目標を示し、将来を担う技能者の確保・育成を進め、優れた技能を次世代に承継していくことを目指し、1967年に創設されたもの。今回は、放射性物質からの隔離に必要な製品「グローブボックス」の製造に係る技能に卓越した技術者の小泉英雄さん(茨城県・株式会社ヨシダ)らが選ばれた。小泉さんは、65年以上にわたり機械・溶接加工・組立の全般を通じ携わった経験と幅広い知識を有しており、特に原子力業界においては、同氏の手がけた高い密閉性と遮蔽性を持つ「グローブボックス」が福島第一原子力発電所の廃炉現場に設置されるなど、高い評価を受けている。小泉さんは、現在、82歳だが、仕事に不可能はないという「信念をもって取り組む」これまでに習得してきた技術を活かしつつ「常に挑戦し続ける」ともに繁栄していくグループとして「協力先には迷惑をかけない」――という気概を持ち、得られた製作ノウハウを「未来への財産」と重んじ、若手・中堅への技術継承にも邁進中だ。この他、原子力関連では、PWRにおける機器組立作業に従事してきた製缶工の梅原信男さん(兵庫県・三菱重工業神戸造船所)が「現代の名工」に選ばれている。梅原さんは現在54歳。「管寄せ」と呼ばれる複数の配管を集合・分配するための高精度な配管曲げ・組立技能が評価された。
14 Nov 2023
1550
内閣府は11月10日、7~9月に18歳以上の日本人3,000人を対象として実施した気候変動に関する世論調査(2023年7月調査)の結果を発表した。有効回収数は1,526人。今回の調査結果では、前回実施した2020年11月の調査と比較を行っている。それによると、地球環境問題に対する関心で、2020年11月調査と今回の調査とを比較すると、「関心がある」との回答はそれぞれ88.3%、89.4%、「関心がない」との回答はそれぞれ9.3%、9.8%と、いずれも微増(無回答が1.5ポイント減少)。気候変動対策のための国際的枠組み「パリ協定」の認知度については、「知っている」が84.0%から78.8%に減少。2020年11月調査は日本政府が「2050年カーボンニュートラル」を宣言した頃に実施されたが、脱炭素社会の認知度については、「知っていた」が68.4%から83.7%に増加。気候変動が及ぼす農作物の品質低下、気象災害のリスク増加などの影響に関しては、「知っていた」が93.6%から87.6%に減少したこうした気候変動問題や脱炭素社会に関する関心の度合いや認知度は、若年層で低く、年齢層が上がるにつれ高まる傾向がみられた。特に、2023年3月に発表された今世紀中の1.5℃気温上昇を予測している「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)統合報告書については、「知っている」と回答した割合が、18~29歳で12.1%、30~39歳で20.0%、40~49歳で25.5%、50~59歳で37.3%、60~69歳で54.5%、70歳以上で64.3%と、その傾向が極めて顕著で、気候変動対策に向け今後は若い世代への啓発が課題といえそうだ。脱炭素社会の実現に向けた取組意欲については、「取り組みたい」との回答が、2020年11月調査で91.9%、2023年7月調査で90.2%と微減。今回の調査で、日常生活で行っていることとしては(複数回答可)、「こまめな消灯、家電のコンセントを抜くなどによる電気消費量の削減」が最も多く70.1%で、「軽装や重ね着などにより、冷暖房の設定温度を適切に管理」の60.7%、「冷蔵庫、エアコン、照明器具などの家電製品を購入する際、省エネルギー効果の高い製品を購入」の47.8%が、これに次いでいる。また、昨今の社会情勢を反映し、「宅配便の1回での受取り、または宅配ボックスでの受取りなどによる再配達の防止」が、前回調査の27.2%から今回調査では32.4%に増加。気候変動の影響に対処し被害を防止・軽減する取組「気候変動適応」を実践する上での課題としては、「経済的コストがかかること」をあげる割合が37.3%から47.4%に急増していた。
13 Nov 2023
1715
原子力分野で国際的に活躍する若手のリーダー育成を目的とした「世界原子力大学・夏季研修」(WNU-SI)が、今夏、初めて日本で開催された。〈既報〉WNUは、世界原子力協会(WNA)が国際原子力機関(IAEA)、経済協力開発機構原子力機関(OECD/NEA)、世界原子力発電事業者協会(WANO)他の協力によって2003年に設立した国際教育訓練パートナーシップ。2005年以降、毎夏、世界各地で開催するWNU-SIには、これまでに千人を超す研修生が参加している。今回、日本原子力産業協会の「向坊隆記念国際人材育成事業」による支援を受けた5名を含む、計7名の日本人参加者の報告会が10月18日に行われ、6月25日~7月28日の5週間にわたる研修成果が報告された。研修プログラムは、各国の原子力産業界や国際機関の現役リーダー・OBらの指導による講義・グループワーク、および施設見学が中心。講義を踏まえ日々与えられるテーマについて10名程度の研修生らで議論し発表し合うグループワークでは、原子力発電を導入しようとする国を想定し、その国の政府や企業の立場から原子力産業のあり方や地域住民への説明内容を発表するという課題もあった。研修に参加した東京電力ホールディングスの滝口剛司さんは、「客観的視点で自国の原子力産業を振り返る契機となった」とするとともに、グループワークで政府広報マンの役として発表した経験から、「まずは『伝えよう』とすること、たとえ初歩的な質問であっても自ら『議論に参加しよう』という姿勢が必要」と、コミュニケーションの重要性を強調した。また、日立GEニュークリア・エナジーの多田岳史さんは、研修生らとの議論を通じ、「『他のやりかた・言い方がないか?』と常に自問する」姿勢を学んだ一方、「あまり差のない2つの案の間で悩み、議論が止まる」場面に戸惑った経験から、リーダーシップの涵養に向け、適応力と決断力を身に付ける必要性を強調。昨今のAI普及から英語プレゼンにおけるChatGPTの有用性にも言及した。今回のWNU-SIでは、小型モジュール炉(SMR)や核融合など、革新的原子力技術に係る内容が拡充され、ITER機構主席戦略官の大前敬祥氏も講義。関西電力の的場大輔さんは、「特にアフリカ諸国からはSMR導入への熱い視線を感じた」などと、研修の所感を述べたほか、自身が主な業務とする新型燃料開発に関し、今後、海外の原子力技術者との交流を深めていくことに意欲を示した。研修プログラムの一環となるテクニカルツアーでは、福島第一・第二原子力発電所などを見学。同施設で通訳を任された東芝エネルギーシステムズの中村勇気さんは、「事故発生当時は学生だった。当事者の視点に立つ貴重な経験となった」と振り返った。講義・グループワークの放課後を利用し行われた異文化交流では、国ごとにブースを出展し伝統芸能や特産物などを紹介。日本ブースでは、参加国の味覚に応じた日本酒、伊勢銘菓「赤福餅」などが振る舞われ、特に国内でも親しまれているスナック菓子「うまい棒」には絶大な人気が集まったという。会期中、懇親会、スポーツ観戦、ショッピングなどを通じ海外研修生との交流を深めたという日立GEニュークリア・エナジーの皆川祐輔さんは、「文化の違いを実感した」としたほか、コミュニケーション能力に関して「『わからないことを“わからない”と伝える』のに最も苦労した」などと振り返った上で、日本の文化、歴史、政治的考え方をあらためて勉強し直すことを今後の抱負として述べた。次回のWNU-SIは、2024年6月2日~7月6日にブラジル(リオデジャネイロ)で開催予定。原産協会では11月24日まで、「向坊隆記念国際人材育成事業」による支援対象者を募集している。*「向坊隆記念国際人材育成事業」の概要、これまでのWNU-SI参加報告、次回WNU-SIの支援対象者募集は、こちら をご覧ください。
10 Nov 2023
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原子力委員会は11月7日、ロシアが2日、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准撤回に関する法律を公布し発効したことについて、「CTBTを基盤とする核実験禁止規範の確立に向けた国際社会の長年の努力に逆行するもの」と非難する委員長談話を発表した。その中で、ロシアに対しCTBTへの復帰を強く求め、CTBTの発効促進・普遍化を進めることを広く国際社会に向け訴えると明言。原子力基本法に定める原子力平和利用の基本方針をあらためて述べた上で、「国際社会が人類の福祉の向上を目指して原子力の研究、開発および利用を行うためには、核軍縮の推進と国際的な核不拡散体制の維持・強化が必要不可欠」と強調。原子力委員会として、「核兵器のない世界」の実現に向けて引き続き国際社会とともに粘り強く取り組んでいくべきとの考えを示している。核兵器の開発あるいは改良を行うためには、核実験の実施が必要と考えられており、CTBTは、従来の部分的核実験禁止条約(PTBT)が禁止の対象としていなかった地下核実験を含む、すべての核実験を禁止するという点において、核軍縮・不拡散上で極めて重要な意義を持つ。日本は、CTBTを、IAEAの保障措置と並び、核兵器不拡散条約(NPT)を中核とする核不拡散・核軍縮体制の不可欠の柱ととらえ、その発効促進を核不拡散・核軍縮分野の最優先課題の一つとして重視している。その一方で、CTBTは、2023年3月時点で、177か国が批准しているが、発効条件となる44か国の批准が36か国にとどまっており未発効だ。日本では、CTBTに基づく国際監視制度(IMS)により、日本気象協会・日本原子力研究開発機構が地震学的監視観測所、微気圧振動監視観測所、放射性核種監視施設と、計10か所のIMS監視施設を運用するなど、条約の遵守状況検証に係る技術面での協力が行われている。
09 Nov 2023
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原子力規制委員会は11月8日、IAEAによる総合規制評価サービス(IRRS)ミッションの2025年度下期頃の受入れに向け準備を進めることを決定した。〈規制委発表資料は こちら〉IRRSは、IAEAが加盟国の要請に基づき原子力利用の安全確保に向け実施しているレビューサービスの一つ。専門家で構成されるレビューチームにより、対象国の原子力規制に関し、その許認可・検査に係る法制度、関係組織も含む幅広い課題について、規制当局や被規制者へのインタビュー、原子力施設への訪問などを通じた総合的レビューを実施し助言・勧告を行う。IRRSミッションは、欧州諸国を中心に、毎年、数か国で受け入れられてきたが、近年では新興国での活動も顕著で、2022年には原子力発電所の建設が進むトルコ、バングラデシュでも受け入れている。日本におけるIRRSミッションは、2007年に旧原子力安全・保安院および旧原子力安全委員会が受け入れており、両者の役割の明確化などが助言・勧告された。福島第一原子力発電所事故後は、規制委員会が2016年に受け入れ。IRRSミッションによる勧告・提言に関し、同委は「IRRSにおいて明らかになった課題への対応方針」のもと、プロジェクトチームを設置し検討を行い、検査制度や放射線源規制の改善に向けた法整備などにつなげている。規制委員会による今回のIRRSミッション受入れは、山中伸介委員長が就任して1月後の2022年10月、今後の重点的活動方針の一つとして示された「国際機関による外部評価」を具体化するもの。同委では、今秋11月中を目途にIAEAに対する正式要請文書を発出。関係省庁とも調整しながら、2024年度冬以降、IAEAとの公式準備会合を行いスケジュールの詳細を詰めていく。なお、2023年に、IRRSミッションの受入れは、チェコ、オランダ、ベルギー、ポーランド、サウジアラビアで実施されたほか、ルーマニア、モロッコでも予定されている。
08 Nov 2023
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東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)は11月6日、中国のIon Nova社と、重粒子線治療装置の中国での販売に向けた業務提携契約を締結した。両社は今後、中国市場における早期の初号機受注を目指す。〈東芝発表資料は こちら〉Ion Nova社は、重粒子線治療装置の専門家で構成され、同装置の開発・販売に特化した会社だ。中国政府から中国産の陽子線治療装置の製造販売認可を唯一受けたAPTR社とも協力協定を締結している。今回の業務提携契約の締結を契機に、東芝ESSは、長年培ってきた重粒子線治療装置における先進技術・納入実績をもとに、中国での受注活動をさらに強化していく。中国では、新規のがん患者が約450万人(2020年時点)にも上り、適切ながん治療を行うことが国家の喫緊の課題となっている。そのため、中国政府では、患者の治療時の身体的負担が少ない重粒子線治療装置の導入・拡大に力を入れており、現在、中国では、重粒子線治療施設が2か所で稼働中だ。さらに、2025年までに重粒子線と陽子線を合わせて41か所の導入許可が予定されている。世界に広がる重粒子線治療施設(2020年時点、QST・中野隆史氏発表資料より引用)東芝ESSでは、量子科学技術研究開発機構とともに重粒子線治療装置を開発し、2016年には同機構放射線医学研究所(千葉市)の新治療棟に、世界で初めて超伝導電磁石を採用することで小型化・軽量化に成功した重粒子線回転ガントリーを納入した。海外でも、これまでの同社実績や技術力が評価され、韓国の延世大学向けに同装置を納入し、2023年4月に治療が開始されているほか、ニーズが高まっている米国においても受注活動を鋭意進めている。同社では、今後、重粒子線治療装置の普及を目指して、国内外での積極的な受注活動を展開し、質の高いがん治療の実現に貢献していくとしている。
07 Nov 2023
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旭日大綬章を受章する中山氏(2005年10月、原子力機構設立記念式典にて)政府は11月3日、秋の叙勲受章者を発表した。旭日大綬章を、元文部科学相の中山成彬氏、元石川県知事の谷本正憲氏、元経済産業相の鉢呂吉雄氏らが受章する。中山氏は、2004~05年に文科相を務め、科学技術行政では、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の法人統合による日本原子力研究開発機構設立、むつ市の中間貯蔵施設立地計画に係る地元対応、ITER(国際熱核融合実験炉)計画を国内施設での研究開発を通じ補完・支援する「幅広いアプローチ(BA)」活動の推進などで尽力。原子力機構法案の国会審議では、「エネルギー資源の乏しいわが国において、高速増殖炉を中核とする核燃料サイクル事業は重要であり、立地地域の協力を得ながら、円滑に進めていきたい」と、明言した。谷本氏は、石川県知事を1994~2022年、7期・28年(期数では京都府・蜷川虎三知事〈1950~78年在任〉と並び歴代都道府県知事で3位)にわたり務め、在任中は、中部電力他より申し入れられた珠洲原子力発電所建設計画の凍結や、2007年に発覚した北陸電力志賀原子力発電所1号機における臨界事故など、原子力利用に係る厳しい局面にも対応しながら、地域の産業振興に尽力。鉢呂氏は、2011年の東日本大震災発生後、経産相を務め、福島第一原子力発電所の事故収束で指揮を執ったほか、エネルギー政策の建て直しに先鞭をつけた。この他、旭日重光章を元鹿児島県知事の伊藤祐一郎氏、瑞宝重光章を元文部科学審議官の田中壯一郎氏、元文部科学事務次官の森口泰孝氏らが受章する。会談に臨む伊藤鹿児島県知事(左)と今井原産協会会長(いずれも肩書は2007年当時)伊藤氏は、2004~16年に鹿児島県知事を務め、九州電力川内原子力発電所に係る安全・防災対策で地元の立場から指導力を発揮。2007年には日本原子力産業協会の今井敬会長(当時)と、将来の原子力開発の展望を巡り会談を行ったことがある。森口氏は、旧科学技術庁で動力炉開発課長として、「もんじゅ」事故後の原子力行政建て直しで手腕を発揮。2001年の中央省庁再編後は、文科省の科学技術関連部局の審議官・局長などを歴任し、事務次官退任後は、東京理科大学副学長として高等教育の発展にも貢献した。
06 Nov 2023
1697
東京電力は11月1日、柏崎刈羽原子力発電所の保安規定変更認可を原子力規制委員会に申請した。保安活動における7項目の基本姿勢に、核物質防護に係る不適切事案への取組から得た教訓を反映している。〈東京電力発表資料は こちら〉2017年12月、規制委員会は、柏崎刈羽6・7号機の新規制基準適合性審査に係る原子炉設置変更許可と合わせて、福島第一原子力発電所事故の当事者たる東京電力に対し、特に実施したいわゆる「平成29年の適格性判断」で、「運転主体としての適格性の観点から、原子炉を設置し、その運転を適格に遂行するに足りる技術的能力がないとする理由はない」と結論。一方、2020年以降、柏崎刈羽原子力発電所では、核物質防護に係る不適切事案が発生。同委は2023年6月、東京電力経営層より、核物質防護に関する改善措置活動の進捗状況について報告を受け、「平成29年の適格性判断」の再確認を行うこととなり、それに向け、8~9月に公開会合、現地検査が実施され、今回、同社からの保安規定変更の認可申請となったもの。「自律的かつ持続的に原子力発電所の安全性向上に努める」との決意をあらためて示した上で、変更申請された保安規定では、現行の基本姿勢7項目を、廃炉をやりきる覚悟必要な経営資源の投入トップとしての責任安全最優先の発電所運営リスクの低減現地現物の観点による情報共有自主的な改善――に項目立てし再整理。その中で、社長のトップとしての責任については、「当社および協力企業の従業員の意識と行動について、モニタリングを実施し、劣化兆候を把握した場合には、迅速かつ適切に対応し、継続的な安全性向上を実現する」と明記。自主的な改善については、核物質防護に関する改善措置活動から得た教訓を反映し、CAP(小さな気付きを広く収集し改善につなげる取組)の活用なども盛り込んでいる。なお、柏崎刈羽原子力発電所については、核物質防護に係る不適切事案を受け、規制委員会から東京電力に対し、原子炉等規制法に基づき、規制上の対応区分が改善するまで、特定核燃料物質の移動を禁ずる(事実上運転できない)是正措置命令が発出され、同委による追加検査が継続中。また、地元の動きとしては、9月に新潟県が県独自による福島第一原子力発電所事故の検証結果を総括しており、花角英世知事は、今後、柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関する議論を行う考えを表明している。
06 Nov 2023
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英国ビジネス・通商省および駐日英国大使館の主催による「日英原子力産業フォーラム」が10月25日に駐日英国大使館で開催され、英国側は15の企業、日本側は電力、大手メーカー、ゼネコン、商社など、31の関係機関・企業から、合わせて約100名が参加し、両国関係者らによる活発な情報・意見交換が行われた。同フォーラムは、英国市場協議会、英国原子力産業協会(NIA)、日本原子力産業協会が後援。7回目となった今回、メインテーマとして、これまでの廃止措置・廃棄物管理に加え、小型モジュール炉(SMR)などの先進原子力技術も取り上げられた。冒頭、歓迎挨拶に立ったジュリア・ロングボトム駐日英国大使は、G7広島サミット(5月19~21日)に際し行われた日英首脳ワーキング・ディナーにて発出の「強化された日英のグローバルな戦略的パートナーシップに関する広島アコード」に言及。広島アコードに盛り込まれたSMR、廃棄物管理、技術・多様性、核融合、原子力安全、広報など、原子力エネルギーの重要事項に関する協力姿勢をあらためて述べるとともに、高温ガス炉や福島第一原子力発電所の廃炉における技術的知見共有の可能性を一例に「既存の日英間パートナーシップをさらに深めていきたい」と強調した。また、原産協会の新井史朗理事長は「世界のエネルギー価格が高騰する中、日本の原子力政策では脱炭素への取組や国際協力が進展した」と、NIAのトム・グレイトレックス理事長はビデオメッセージを通じ「英国でも原子力発電は非常に大きな岐路に立たされている。今回のフォーラムが両国の産業界にとって互いに発展する機会となって欲しい」と述べ、有意義な国際間の企業交流が図られるよう期待を表明した。「新規建設と先進原子力技術」のセッションでは、日本ロールス・ロイス社社長の神永晋氏、コア・パワー社CEOのミカル・ポー氏、モルテックスフレックス社商業開発担当ディレクターのトリス・デントン氏、英国原子力公社(UKAEA)RACE((Remote Applications in Challenging Environments:遠隔操作・ロボット技術センター))・JET((Joint European Torus:EUの核融合実験装置))廃止措置担当ディレクター兼責任者のロブ・バッキンガム氏らが登壇。神永氏は、欧州諸国でロールス・ロイス社が開発を進めているSMRについて、低コスト・低炭素で水素製造も可能な他、「再生可能エネルギーとバランスよく既存のインフラ設備に接続できる」メリットを強調。4月の原産年次大会にも登壇したポー氏は、「原子力と海事の融合」と標榜し、船舶の動力源としてクリーンな燃料供給にも貢献する浮体式原子力発電の展望を披露。1兆ドル規模にも及ぶビジネスチャンスを見込み、同氏は、遠隔地・離島へのエネルギー供給の可能性や、「世界の海運業で排出される11億トンのCO2削減に挑む」との意気込みを示し、日本のメーカー・造船業の積極的な参画を期待した。デントン氏、バッキンガム氏は、それぞれ溶融塩炉、核融合における要素技術開発や人材育成の取組について発表。将来の社会実装に向けて、燃料、ポンプ機器、材料開発、コンピューター、ロボティクスなどの諸分野において、サプライチェーンを確保し国際間のパートナーシップを図っていくことの重要性を強調した。フォーラムでは、日英原子力関連企業の連携を促進するため、英国企業によるパネル展示のほか、今回、初となる日英企業による個別面談の機会も設けられた。
02 Nov 2023
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原子力規制委員会は11月1日、九州電力川内原子力発電所1・2号機について、運転開始から60年までの運転期間延長を認可した。〈規制委発表資料は こちら〉川内1・2号機は、それぞれ2024年7月、25年11月に原子炉等規制法で定められる原則40年の運転期間を満了する。これに伴い、九州電力は、2021年10月より特別点検を行い両機の原子炉容器などの健全性を確認した上で、2022年10月に20年間の運転期間延長認可を規制委員会に申請した。11月1日の規制委定例会合で、原子力規制庁が審査結果を説明。主要な6つの物理的な経年劣化事象(低サイクル疲労、中性子照射脆化、照射誘起型応力腐食割れ、2相ステンレス鋼の熱時効、電気・計装設備の絶縁低下、コンクリート構造物の強度低下)について、特別点検の結果を踏まえた劣化状況評価が行われており運転を延長する期間において「審査基準の要求事項に適合している」ことが確認されたとした。〈高経年化規制の概要は こちら〉川内1・2号機は、2013年7月の新規制基準施行後、先陣を切って2015年に再稼働。熱出力一定運転に伴い、冬季には設備利用率が107%にも達しており稼働状況は好調だ。40年超運転が認可された国内の原子力発電プラントは、既に再稼働した関西電力美浜3号機、同高浜1・2号機、まだ再稼働していない日本原子力発電東海第二を合わせ計6基となった。なお、2023年5月に成立した「脱炭素社会の実現に向けた電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律」(GX脱炭素電源法)の本格施行(2025年6月)後は、運転開始から30年以降、10年以内ごとに、新制度(長期施設管理計画)での認可が必要となる。
01 Nov 2023
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日本原子力研究開発機構、三菱重工業、三菱FBRシステムズ(MFBR)、米国テラパワー社は10月31日、2022年1月に4者が締結した「ナトリウム冷却高速炉技術に関する覚書」を、高速炉の実証計画を含むよう拡大したことを発表した。昨年末に改訂された日本における高速炉開発の戦略ロードマップで、実証炉の概念設計が2024年より開始されることとなり、テラパワー社が関心を持つ高速炉の経済性向上に向けた大型化の検討や、金属燃料の安全性などを新たな協力範囲として追加。カーボンニュートラル実現に貢献すべく、高速炉開発に係る日米協力を強化していく。〈原子力機構発表資料は こちら〉テラパワー社は、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が設立した原子力技術革新企業。同社が米エネルギー省(DOE)の「先進的原子炉実証プラグラム」(ARDP)による支援のもと、開発を進めている小型ナトリウム冷却高速炉「Natrium」炉(電気出力34.5万kW)は、米西部ワイオミング州に石炭火力の代替として建設が計画されており、早ければ年内の着工、2030年の運転開始が見込まれている。また、日本では、2022年12月に高速炉開発の戦略ロードマップを改訂。2023年夏頃に炉概念の仕様を選定し、2024~28年度に実証炉概念設計・研究開発を行うとする今後の開発作業計画を踏まえ、2023年7月には、MFBRが提案する「ナトリウム冷却タンク型高速炉」(電気出力65万kW、「もんじゅ」とは異なるタイプ)が、実証炉の概念設計対象として選定された。今回の覚書拡大を受け、原子力機構の小口正範理事長は「日米間の高速炉開発協力を発展させていきたい」と、三菱重工の加藤顕彦原子力セグメント長は「長年培ってきた技術と経験を活かしていきたい」と、それぞれコメント。また、テラパワー社のクリス・レベスク社長は、新型炉の市場投入に向けた日本の意欲に期待を寄せたほか、カーボンニュートラル実現を目指し、「世界中の国で2030年代から新型炉を配備する必要がある」として、日米協力を通じた大型ナトリウム冷却炉開発の意義を強調した。
31 Oct 2023
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