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ハンガリー、パクシュII期工事の建設許可発給に遅れ 

05 Oct 2021

I期工事の4基に隣接するⅡ期工事の建設用地
© Paks NPP

ハンガリーでパクシュ原子力発電所II期工事(120万kWのロシア型PWR=VVER×2基)の建設許可申請を審査している国家原子力庁(HAEA)は9月30日、建設許可の発給までには今しばらく時間が必要だと発表した。

II期工事の建設プロジェクトは稼働中のI期工事(50万kWのVVER×4基)と同様、ロシア国営の原子力総合企業であるロスアトム社が請け負っており、建設許可申請書はハンガリーのプロジェクト企業であるパクシュII開発会社が2020年6月にHAEAに提出。HAEAはこの申請書を9月末まで15か月にわたり審査していた。

HAEAの今回の説明によると、同申請書は多くの点で非常に綿密にまとめられているが、すべての安全要件が完全に満たされていると確認するには、いくつかの点でさらなる分析・評価を実施する必要がある。国際原子力機関(IAEA)の専門家チームがHAEAに提示した勧告事項も考慮しなければならず、HAEAは国内外の専門家の支援を得ながら審査を継続すると表明。パクシュⅡ開発会社に対しては、追加資料の提出を命じたことを明らかにした。

ハンガリーでは、原子力発電所のように複雑かつ多くの専門分野が関係する施設については、必要な許可の発給や建設工事の監督に複数の政府当局が関わってくる。ハンガリーのエネルギー・公益企業規制庁(MEKH)は2020年11月、今回の建設プロジェクトが電力供給網のセキュリティ面で悪影響を及ぼす可能性は低いと判断し、電力法の義務事項に照らし合わせた発電実施許可を発給。HAEAも2017年3月に同プロジェクトのサイト許可を発給したほか、今年8月には、パクシュII開発会社が作成したⅡ期工事の核物質防護計画を承認している。

建設許可の発給が遅れることで、II期工事の5、6号機は完成までにさらなる遅れが生じる見通しである。この増設計画の実施について、総工費の約8割に相当する最大100億ユーロ(約1兆2,889億円)をロシアからの低金利融資で賄うとハンガリー政府が発表したのは2014年1月のこと。残り2割はハンガリー政府が調達するとしており、両国の担当企業は同年12月、これら2基をそれぞれ2023年と2025年に完成させることを目指して、EPC(設計・調達・建設)契約を含む主要な3契約に調印した。

しかし、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は2015年11月、これらの契約が公的調達に関するEU指令に準拠しているか、また、EU域内の競争法の国家補助規則に適合しているかについても調査を開始すると表明した。その結果としてECは2016年11月、公的調達に関しては違反行為がなかったと認めた一方、翌2017年4月に同計画への投資には国家補助が含まれると裁定。国内のエネルギー市場で、競争原理に過度の歪みを生じさせないよう政府が対策を取ることを条件に、投資を承認すると発表した。

両炉の完成時期については、ハンガリー外務貿易省のP.シーヤールトー大臣がメディアに対して「2028年から2029年にかけて両炉とも運転可能になる」と表明している。このような遅れにともない、ハンガリーがロシアからの低金利融資に返済を開始する時期については、両国政府が交渉した結果、今年4月に融資協定を一部改訂することで合意。2026年3月からとされていたハンガリーの返済は、両炉が運転開始した後の2031年からに修正されている。

(参照資料:HAEAの発表資料(ハンガリー語)、パクシュII開発会社の発表資料(ハンガリー語)、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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