中東欧 BWRX-300の導入で連携
13 Aug 2025
ポーランドの大手化学素材メーカーであるシントス社のグループ企業シントス・グリーン・エナジー(SGE)社は7月30日、ハンガリーならびにスロバキアの原子力関係機関とそれぞれ、米GEベルノバ日立(GVH)社製のSMR「BWRX-300」(30万kWe)の導入をめぐり協力することで合意した。SGE社は、ポーランドへのBWRX-300導入のため、同国最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社と50%ずつ出資し、2022年に合弁企業のオーレン・シントス・グリーン・エナジー(OSGE)社を設立。OSGE社は国内6地点における合計24基のBWRX-300建設に向けて、許認可手続きの準備を進めている。なおSGE社はGVH社と合意に基づき、欧州地域でのBWRX-300建設においてプロジェクト開発者としての役目を担う。
ハンガリーにおける導入計画
SGE社はハンガリーのHunatom社(原子力発電に関連する技術・イノベーション強化を目的に設立)と、ハンガリーに最大10基のBWRX-300導入を評価する基本合意書(LOI)に調印した。LOIは、BWRX-300の導入に関連して、必要な技術、インフラ、ファイナンス、法的な側面での共同作業を開始する枠組みを確立するもの。LOI調印式には、ハンガリーのP. シーヤールトー外相、ポーランドのJ. シュラデフスキー臨時代理大使、米国のR. パラディーノ臨時代理大使が立会った。シーヤールトー外相は、「我々は電力需要の増加に直面しているが、我々が自力で維持できる唯一の発電方法は、間違いなく原子力。大型炉をさらに建設することは国土の大きさからして現実的ではなく、SMRは理想的なソリューション。特に工業地域での設置に最適だ」と述べた。
ハンガリーでは現在、パクシュ原子力発電所の増設プロジェクト(=パクシュⅡプロジェクトとして5、6号機を増設、各ロシア製VVER-1200、120万kWe)が進められている。パクシュⅡは国際プロジェクトであり、ロシア国営原子力企業ロスアトム、仏アラベル・ソリューションズ社のほか多くの西側サプライヤーと提携して実施。今年6月、米政府が同プロジェクトに対する制裁を解除し、建設プロジェクトに弾みが出ると期待されている。
スロバキアにおける導入計画
SGE社は、スロバキアの大手電力会社のスロバキア電力(SE)社とBWRX-300の導入プロジェクトで協力を模索するMOUを締結した。スロバキアおよびその他の欧州諸国(特にチェコと英国)におけるSMRプロジェクトに係わる投資、許認可手続き、共同開発の可能性を検討する。合弁事業の設立、資金調達の構築、地域サプライチェーンの開発のほか、データセンターなどのデジタルインフラへの活用も視野にいれている。SE社のB. ストリチェクCEOは、「SGE社とのパートナーシップにより、最先端のBWRX-300を詳細に分析し、スロバキアにおける導入可能性を適切に評価できるようになる。原子力発電所の建設・運転で培った当社の長年のノウハウを活かして、地域のSMR開発を支援していきたい」と語った。
なおスロバキアは現在、米国と原子力分野における協力に関する政府間協定の締結の準備を進めており、D. サコヴァ副首相兼経済相はこのほど、欧州委員会(EC)が同協定について了承したと明らかにした。EU加盟国ではない国との政府間協定はEU機関による事前承認や審査を受けなければならない。R. フィツォ首相は自身のソーシャルメディアで、同協定の締結を契機に、ボフニチェ原子力発電所の新設に米ウェスチングハウス社製AP1000を採用する計画について言及している。