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英政府、脱炭素化目標の達成スケジュールを15年前倒し 

11 Oct 2021

©BEIS

英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は10月7日、英国が発電部門で全面的な脱炭素化を達成する目標スケジュールを15年前倒しし、2035年とするプランを発表した。スケジュールを早めたことで、英国は今後、化石燃料や卸売価格が不安定な国外エネルギーに左右されない国産エネルギー技術で確実な発電部門を構築するとしている。

英国では今月31日から11月12日にかけて、国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP26)が北部スコットランドのグラスゴーで開催される。同会議で英国のCO2排出量実質ゼロ化戦略を披露するのに先立ち、英国政府は原子力や洋上風力など、価格が手ごろで確実に供給できる国産のグリーン電力により化石燃料への依存を軽減、脱炭素化社会へ移行するための一助とする方針を固めたもの。

英国のB.ジョンソン首相が2020年11月に公表した「緑の産業革命に向けた10ポイント計画」と、BEISが2020年12月に公表した新しい「エネルギー白書」では、英国政府が2050年までに国内の発電システムからの温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロ化する方針が明記されている。今回、BEISのK.クワーテング大臣がジョンソン首相に確認した方針では、前倒しされた意欲的な目標の実現に向けて、英国政府は洋上風力や太陽光、水素によるエネルギー供給から、原子力、陸上風力、CO2の回収・貯留(CCS)に至るまで、新しい世代の発電設備の建設努力を一層強化、英国内で生産したクリーンな電力を英国民のために活用していく考えだ。 

BEISによると、近年乱高下している天然ガス価格は、英国がエネルギーの供給保証やさらなる自給に向けて体制を強化し、家計の中でエネルギー料金を長期的に抑えるためにも、そのような電力が必要であることを裏付けている。天然ガスを使った発電は、英国が今後も安定した電力供給システムを維持する上で重要な役割を果たすが、クリーンエネルギー技術の開発は将来的に天然ガス火力発電の利用頻度を抑えることにもなると述べた。

さらに、クリーン電力の供給システムを信頼性の高いものにするには、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを、原子力やその他の柔軟性の高いクリーン発電技術で補完する必要があるとBEISは指摘。原子力のような電源は、風力や太陽光の発電量が少ない折にも電力を供給し、需要を満足させることができる。英国政府はCOP26でホストを務める前に、CO2排出量を実質ゼロ化する一層詳細かつ広範なプランをさらに策定するとしている。

今回のプランについてBEISのクワーテング大臣は、「このようなグリーン発電技術は英国内の多種多様な天然資源の活用につながることから、英国全土の新しい産業分野で数千人規模の雇用を創出できる」と指摘。また、「世界中が脱炭素化社会への移行を成功させるには、英国企業の企業家精神や類まれな能力、技術革新が必要になる」と強調している。

なお、BEISの発表によると、英国では1990年から2019年までの間、GDPが76.4%上昇した一方でCO2排出量を44%削減することに成功。2000年以降、G20諸国のなかでは英国の脱炭素化が最も速く進んでいるとした。また、2019年に英国では、発電部門からの温室効果ガスの排出量が2018年レベルから12%、1990年レベルからは71%低下した。2020年には総発電量における低炭素電力の割合が59.3%に上昇しており、再エネによる発電量は過去最高の43.1%を記録。送電網に接続された再エネの設備容量も、2009年時点の800万kWが2021年6月末には500%増加し、4,800万kWになったとしている。

(参照資料:BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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