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フメルニツキ原子力発電所へのAP1000建設で契約 ウクライナ

24 Nov 2021

©Westinghouse

ウクライナの民生用原子力発電公社であるエネルゴアトム社と米ウェスチングハウス(WH)社は11月22日、ウクライナのフメルニツキ原子力発電所における最初のAP1000建設に向け、同国の首都キエフで契約を締結したと発表した。

WH社側の発表によると同社はこの契約に基づき、同発電所のAP1000初号機用に長納期の機器を設計・調達する予定だが、エネルゴアトム社側は「同発電所で原子炉を2基新設するため」と説明している。

両社は今年8月、ウクライナ国内で複数のAP1000を建設していく内容の独占契約を締結しており、その際、フメルニツキ発電所で建設工事が中断している3、4号機(各100万kWのロシア型PWR:VVER)(K3/K4)のうち、進捗率が28%のK4をAP1000に変更すると明言。このほか、その他の発電所に含めてさらに4基のAP1000を建設すると表明していた。10月になるとエネルゴアトム社は、フメルニツキ発電所でAP1000を採用した最初の原子炉を今年の年末、あるいは来年始めに着工すると発表しており、WH社が指摘したAP1000初号機はK4になると見られている。

今回の契約の締結式典では、ウクライナのエネルギー大臣とウクライナ駐在米国大使代理の立ち会いの下、エネルゴアトム社の実質トップであるP.コティン総裁代理とWH社のP.フラグマン社長兼CEOが契約書に署名した。

コティン総裁代理によると、「WH社との契約でウクライナの原子力部門は新たな開発局面に入った。」ウクライナでは、旧ソ連時代に着工したVVERが15基(合計出力約1,380万kW)稼働中だが、このうち11基では高経年化が進んでいる。同国の総発電量のうち約半分を原子力発電所で賄っていることから、同総裁代理は「2040年までに国内の原子力発電設備を2,400万kWに拡大することを目指している」と表明。同社の専門家が現在、国際的なパートナーからの支援を得ながらこれに向けた努力を重ねていると説明した。

同総裁代理はまた、「新たな原子炉の建設はウクライナのエネルギー自給にとって非常に重要であるだけでなく、これらを通じて当社は欧州を脱炭素化に導く原動力にもなるつもりだ」と強調。米国企業との協力を通じて、エネルゴアトム社がクリーンで廉価なエネルギーの供給に移行する準備はできているとした。

一方、WH社の発表によると、第3世代+(プラス)の原子炉設計であるAP1000は、受動的安全システムをフルに備えるほか、操作性も高く、負荷追従運転など柔軟な運転が容易だ。AP1000設計の建設は、エネルゴアトム社とウクライナに持続可能な経済的恩恵をもたらすとともに、各原子炉の建設と運転を通じて技術を国産化する機会も提供することができる。

同社のP.フラグマン社長兼CEOは、「最初のAP1000建設に向けた今回の契約により、ウクライナは脱炭素化とエネルギーの安定供給という目標の達成に一歩近づいた」と指摘。WH社はすでにウクライナで稼働する原子炉の約半分に燃料を供給しているが、これらのVVERは高経年化しているため、新たな原子炉の建設が必要である。「当社としてはエネルゴアトム社への協力を継続し、低炭素なエネルギー技術の開発や原子力発電所における高い安全性の維持で貢献していきたい」としている。

(参照資料:エネルゴアトム社WH社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月22日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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