原子力産業新聞

海外NEWS

米エネ省、地元の合意に基づく廃棄物の中間貯蔵に向け情報提供を依頼

01 Dec 2021

ホルテック社の中間貯蔵施設完成予想図
©Holtec International

米エネルギー省(DOE)は11月30日、原子力発電所から出る使用済燃料の中間貯蔵地点を特定するため、「地元の合意に基づく立地プロセス」の策定に向けた情報の提供依頼書(RFI)を、関係するステークホルダーやコミュニティに対して発出した。得られた情報は、同プロセスおよび放射性廃棄物の全体的な管理戦略の策定活動を、公正なやり方で次の段階に進めるために活用する。

DOEによると原子力発電は、J.バイデン政権が目標とする「2035年までに米国の電力部門を脱炭素化」し、「2050年までに米国経済全体でCO2排出量の実質ゼロ化を達成する」上で非常に重要な電源。放射性廃棄物の適切な管理は、原子力を一層持続可能なオプションとするだけでなく、DOEが使用済燃料の管理義務を履行する一助にもなると指摘している。 

DOEが1998年1月から各原子力発電所の使用済燃料引き取りを開始し、深地層最終処分場で処理するという事項は「1982年の放射性廃棄物政策法(NWPA)」に明記されているが、ネバダ州ユッカマウンテンにおける最終処分場の建設計画は2009年、同州の強い反対を背景にB.オバマ政権が打ち切った。政府の有識者(ブルーリボン)委員会は2012年、「NWPAを修正して地元の合意ベースで最終処分場の立地を進めつつ、複数の中間貯蔵施設を建設すること」を政府に対して勧告。これにともないDOEは翌2013年、2025年までに集中中間貯蔵施設を、2048年までに最終処分場の操業を開始するという管理処分戦略を策定した。2017年初頭には、地元の合意に基づく処分場立地プロセスの案文を作成したものの、発足したばかりのD.トランプ政権が優先項目を変更したため、同プロセスは最終決定していない。

一方、民間部門においては、中間貯蔵パートナーズ(ISP)社がテキサス州アンドリュース郡で進めている集中中間貯蔵施設の建設計画に対し、原子力規制委員会(NRC)が今年9月に建設・操業許可を発給。NRCは、ホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ州南部で進めている同様の建設計画についても、「周辺住民や環境への影響に問題なし」と結論付けた「環境影響声明書(EIS)」案文を2020年3月に公表している。

DOEのJ.グランホルム長官は今回、「放射性廃棄物の管理問題を最終的に解決するには、このような施設の誘致に関心を持つコミュニティから直接意見を聞き、ともに働くのが最良の方法だ」とコメント。施設の建設にともない、地元では雇用の創出という現実的な恩恵がもたらされるほか、一般から意見を求めることにより、立地点の特定に向けたプロセスを可能な限り効果的、かつ多くの人が参加可能なものにできると述べた。

DOEの発表によると、2020年12月末にトランプ政権が成立させた「2021会計年度の包括歳出法」では、「(放射性廃棄物の)中間貯蔵および放射性廃棄物基金の監督プログラム」に2,750万ドルの予算が認められており、DOEは使用済燃料を管理する当面の措置として中間貯蔵のパイロット・プログラムを進めることが可能になった。DOEとしては地元の合意ベースというアプローチの下、関係する人々やコミュニティを立地プロセスの中心部分に位置付け、使用済燃料の効果的な管理という数10年にわたる課題を成功裏に解決する機会を得たいとしている。

(参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)

 

cooperation