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英国政府、2030年代初頭の実証に向けた先進的原子炉プログラムにHTGRを選択

06 Dec 2021

ハンズ大臣©BEIS

英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のG.ハンズ・エネルギー担当相は12月2日、2030年代初頭の実証を目指して建設する先進的モジュール式原子炉(AMR)技術として、高温ガス炉(HTGR)を選択したことを明らかにした。

BEISは今年の7月末、柔軟性の高い活用が可能な原子炉開発のため確保した予算3億8,500万ポンド(約580億円)のうち、「AMRの研究開発・実証プログラム」の予算1億7,000万ポンド(約250億円)を使って、2030年代初頭までにHTGRの初号機を完成させるという提案を発表。英国が2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指すにあたり、政府がHTGRを最も好ましい技術と認識していることを示したもので、BEISは9月初頭までの期間、この提案に対するコメントを産業界や一般国民から募集していた。

ハンズ大臣の今回の発表は、英国原子力産業協会(NIA)の年次大会で述べられており、「得られたコメントを評価した上で、HTGRに重点的に取り組む判断を下した」と説明。ただし、BEISの幅広い活動の一環として、今後もすべてのAMR開発を継続的に支援していく方針であり、将来的な可能性を秘めた先進的原子炉技術の実現に向け、原子燃料の強力なサプライチェーンを国内で構築・維持するための予算7,500万ポンド(約110億円)を確保したと述べた。

同大臣は今年9月にエネルギー担当相に就任したばかりだが、NIAの発表講演では「新規原子力発電設備の建設に英国政府は本腰を入れている」と明確に示した。「エネルギー白書」や「CO2排出量の実質ゼロ化戦略」等を通じて、政府は過去一年間にこのような意図を再三にわたって表明しており、これらを通じて、投資家やビジネス界は自信をもって英国の原子力部門に投資してくれるだろうと述べた。

同大臣はまた、「CO2の排出量を実質ゼロ化するには原子力が必要だ」と明言している。近年はとりわけ、天然ガス価格の世界的な乱高下により、エネルギーミックスの多様化に向けた勢いが加速。エネルギーの自給を確実なものにするためにも、原子力など英国内の一層強力なエネルギーシステムに投資する推進力が増していると指摘している。

同大臣によると、英国では1990年以降、CO2排出量の44%削減を達成するなど、実質ゼロ化に向けた取り組みが驚くほど進展した。しかし、今後30年の間はこのペースをさらに上げ、2035年までに発電部門を確実に脱炭素化する必要がある。そのためには低炭素なエネルギー技術を広範囲に取り入れること、新たな原子力発電設備については特に、大規模かつ迅速に開発していかねばならない。再生可能エネルギー等のポテンシャルを全面的に活用するのに加えて、風が吹かなくても太陽が照らなくても、低炭素な電力を安定的かつ確実に供給可能な原子力が必要だと同大臣は訴えている。

今後の計画については、ハンズ大臣は新たな原子力開発プロジェクトの設定に向けた「ロードマップ」を2022年の前半に公表する方針だと述べた。その一環としてBEISはすでに今年10月、新規建設を支援する資金調達の枠組みとして「規制資産ベース(RAB)モデル」を導入するための法案を議会に提出している。BEISはまた、原子力新設プロジェクトへのさらなる投資を促すため、グリーン事業の分類投資である「英国版タクソノミー」に原子力を含められないか検討中であることを明らかにした。

(参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月3日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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