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ポーランドのシントス社と石油精製企業、SMRの建設・商業化に向けJV設立

08 Dec 2021

JVの設立発表イベントに出席した両社の首脳
©PKN Orlen

ポーランド最大の化学素材メーカー、シントス社のグループ企業であるシントス・グリーン・エナジー(SGE)社、および同国最大手の石油精製企業であるPKNオーレン社は12月7日、ポーランドでマイクロ原子炉や小型モジュール炉(SMR)の建設と商業化を進めるため、合弁事業体(JV)の設立に向けた投資契約を締結したと発表した。

両社が50%ずつ出資するJVは「オーレン・シントス・グリーン・エナジー社」と呼称され、SMRの中でも特に、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社が開発した「BWRX-300」の建設に重点的に取り組む。2030年の初号機完成を目指して、年内にも反トラスト規制当局に許可申請書を提出し、正式な活動の開始に備える方針だ。このプロジェクトを通じて、オーレン・グループは2050年までに自社のCO2排出量の実質ゼロ化を達成出来るよう、製品生産の脱炭素化を加速。その際、地元のサプライチェーンを活用することでポーランドの経済成長とエネルギー供給保証につなげたいとしている。

同JVで展開する具体的な活動として、両社はBWRX-300の開発を支援するともに、建設に向けた法的枠組みの整備を支援する。立地点を選定し、着工。完工後は生産したエネルギーと熱を自社用に活用するだけでなく、地元地域の需要にも対応する考えだ。

ポーランドのJ.サシン副首相兼国有財産相によると、同国は欧州連合(EU)の地球温暖化防止政策に沿って、エネルギー部門を改革しなければならないが、「SMRの商業化に向けた今回の投資契約によって、両社はエネルギー部門の脱炭素化を効果的かつ安全・迅速に進めることになる」と述べた。原子力発電設備を持たないポーランドの政府は現在、国内の2サイトで合計出力600万kW以上の大型炉を建設する計画を進めており、小型炉開発に向けた企業の今回の動きについても、同相は「原子力は将来最も安定したエネルギー源になる」との見解を表明した。

SMRの商業化協力で、GEH社のBWRX-300を選んだ理由として、オーレン・グループはカナダのオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が今月2日、ダーリントン原子力発電所で建設するSMRとして3つの候補設計の中からBWRX-300を選定したことにも言及。OPG社がBWRX-300の初号機を建設した場合、オーレン・シントスJVのSMRはその2基目となるため、同炉の開発や投資手続の準備、許認可、建設、運転等についてOPG社が積み重ねた経験を参考にすることができると強調した。

同グループはまた、SMRの建設候補サイトをポーランド国内で無数に入手することが可能であり、大型の投資計画では数多くの実績を残している。最先端のエネルギー生産設備を広範囲に建設した経験もあるため、同グループはモジュール式原子炉をポーランドで商業化する企業としては理想的な立場にあると説明。これらを背景に、BWRX-300に関するシントス社との協力では、同グループがプロジェクトを一層迅速かつ円滑に実行に移すことができると述べた。

一方、シントス・グループのオーナーであるM.ソウォヴォフ氏も、PKNオーレン社との過去20年にわたる協力関係に触れ、協力範囲が革新的原子力技術に広がったことを歓迎した。BWRX-300を開発したGEH社についても、親会社のGE社グループにはポーランド市場で30年もの実績があるほか、同国内の3,000社以上をカバーする巨大サプライチェーンを保有していると指摘。その上で、「これらのうち何社かはすでに他国の原子力発電所用機器を製造しており、このことはポーランドをSMR製造ハブとする機会を提供する投資計画の重要な要素だ」と強調している。

(参照資料:PKN オーレン社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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