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アルメニア、既存原子力発電所の原子炉増設に向けロシアと合意

24 Jan 2022

©Aikakan Atomajin Electrakayan (Armenian NPP)

ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は1月20日、アルメニア西部のメザモールにある同国唯一のアルメニア原子力発電所(40.8万kWのロシア型PWR=VVER)で新たなVVERを建設する可能性を探るため、同発電所の経営幹部と了解覚書を締結したと発表した。

覚書への調印は、今年の3月末までドバイで開催されている国際博覧会のロシア・イベントに合わせて、同社の国際事業部門であるルスアトム・オーバーシーズ社のE.パケルマノフ総裁と、アルメニア発電所のE. マーティロスヤン所長が行った。パケルマノフ総裁は、「すでに数多くの国々がロシアの近代的な原子力技術を使って、途切れることのない電力供給を実現している」と指摘。その上で、「原子炉の増設に向けた両国の協力は、アルメニアの経済成長や繁栄に不可欠の重要ファクターになるだけでなく、両国の良好な関係を一層強化することになる」と述べた。

マーティロスヤン所長によると、アルメニアは脱炭素化という世界的な潮流に追随すると決定しており、そのために必要な近代的技術の開発も進める方針である。同所長はまた、「当発電所の原子炉が運転期間を終えた後も、アルメニアは電源ミックスの中で原子力を維持していく」と明言。「そのために、世界で最も先進的な原子炉の一つであるVVERを将来的にも使用することを検討している」と説明した。

アルメニア原子力発電所は旧ソ連時代に完成した発電所で、1988年に大地震が発生した際、政府は同発電所で当時稼働していた1、2号機を停止した。翌年に1号機(40.8万kWのVVER)を永久閉鎖したものの、2号機はソ連から独立した直後の電力需要を賄うという経済的重要性から、1995年に運転を再開。同炉は国内の総発電量の約4割を賄う重要電源であり、2015年からはロシアからの融資により、運転期間を2026年まで10年延長するための設備の近代化プロジェクトが始まった。

同プロジェクトでは、機器類の点検や取り換え等、安全性を改善する膨大な作業が行われており、2021年11月にはこれらが完了したのにともない、ロスアトム社のA.リハチョフ総裁一行が出力の15%増強が可能になった同炉を視察で訪れている。

その際、アルメニアのG.サノスヤン地域行政・インフラ大臣は、「国家のエネルギー供給保証と自給において、この発電所は決定的な役割を担っている」と指摘。同プロジェクトがアルメニアにとって、最も重要な大型プロジェクトの一つであった点を強調した。同相はまた、2号機では2026年以降もさらに10年運転期間を延長できるよう目標設定していくと表明。さらには、新しい原子力発電所の建設によって、原子力産業を一層発展させたいとしていた。

(参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月21日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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