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米エネ省、アイダホ研でマイクロ原子炉の実物大プロトタイプ作成

10 Feb 2022

MARVELマイクロ原子炉のプロトタイプ©INL

米エネルギー省(DOE)の原子力局(NE)は2月7日、傘下のアイダホ国立研究所(INL)内の燃料・材料研究施設群で、「MARVELマイクロ原子炉」の実物大プロトタイプが完成したと発表した。

このプロトタイプは「一次冷却材試験装置(PCAT)」と呼称されており、核分裂反応ではなく電気加熱で発熱を模擬する。DOEは今後、PCATを使ってMARVELマイクロ原子炉の最終的な設計の性能を確認し、2024年までに同炉をINL内の小規模電力網に接続する計画である。

MARVELの正式名称は、「Microreactor Applications Research Validation and EvaLuation(マイクロ原子炉の適用に関する研究検証と評価)」。DOEは2021年4月、2050年までにCO2排出量の実質ゼロ化を目指す米国の地球温暖化防止取り組みの一つとして、電気出力100kWのマイクロ原子炉を建設するという「MARVELプロジェクト」を発表した。その際、「今後3年以内にINLの過渡事象試験(TREAT)施設内でマイクロ原子炉の運転を開始する」と表明していた。

MARVELマイクロ原子炉では冷却材としてナトリウムとカリウムを使用、エネルギーを100kWの電力に変換するには、既存技術のスターリング・エンジン(*)を活用する。完成すれば、同炉ではマイクロ原子炉専用の規制承認プロセスの策定や、リモート操作によるモニタリング・システムの評価、自動制御技術の開発など、マイクロ原子炉の様々な適用に向けた試験が行われる。

DOEはまた、水の浄化や地域暖房用の熱生産、地球温暖化の防止に資する気候制御など、幅広い用途にマイクロ原子炉を活用できないか可能性を模索する。MARVELマイクロ原子炉をINLの電力網に接続した後、DOEは同炉を直ちに外部研究者の共用施設にする方針だとしている。

発表によると、PCATの組み立て作業は9か月で完了。その高さは3.6m、重さは900kg以上になるなど、INL内で組み立てられた機器類の中では最大級の大きさとなった。

PCATを使った試験について、同プロジェクトのY.アラファト技術リーダーは、「MARVELマイクロ原子炉の設計を規制当局が確認する際はモデリング・ツールを利用することになるが、熱流動などすべての側面をモデル化するわけにもいかない」と説明。このため、同炉が最終的に高度な信頼性を備えた設計になるよう、MARVELチームはPCATを使ってシミュレーションの結果を確認する。その後は、モデリングやシミュレーションのツールを使って同炉の安全性等を保証するとしている。

【注*】:19世紀初頭に開発された外燃機関の一種。シリンダー内に水素等の気体を封入し、外部から加熱・冷却を繰り返してピストンを作動させるエンジン。

(参照資料:米エネ省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの2月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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