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斗山エナビリティ社、今年からニュースケール社製SMRの機器製造を開始

27 Apr 2022

両社の契約調印式 © Doosan Enerbility

韓国の斗山エナビリティ社(=Doosan Enerbility、今年3月に「斗山重工業」から社名変更)は4月25日、米ニュースケール・パワー社が開発した小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の最初の発電所を建設するため、主要機器の製造を本格的に開始する契約を同社と締結した。

早ければ今年中にもNPMの原子炉圧力容器の鍛造材生産を始め、2023年の後半から本格的な機器製造を開始する。

出力7.7万kWのモジュールを6基備えたNPM発電所「VOYGR-6」は、ユタ州公営共同電力事業体(UAMPS)が米アイダホ国立研究所の敷地内で建設を計画中。最初のモジュールを2029年までに完成させるため、2024年の前半に建設・運転一括認可(COL)を原子力規制委員会(NRC)に申請し、2026年前半に認可を受けて建設工事を始めたいとしている。ニュースケール社が開発した(1モジュール当たりの出力が5万kWの)NPMは、今のところ米国で唯一NRCから標準設計承認(SDA)を取得したSMR。同社は出力7.7万kW版のモジュールについても、SDAを2022年第4四半期に申請する予定である。

斗山エナビリティ社は2019年からニュースケール社に対する金融投資企業に加わっており、4,400万ドルの株式投資を現金で実施した。2021年7月にはこれに加えて新たな株式投資を行うと発表、その他の韓国投資家グループとともに同社が行った投資の総額は1億380万ドルにのぼっている。

これらを通じて、斗山エナビリティ社は数兆ウォン(1兆ウォン=約1,000億円)規模の機器や資材を供給する権利をニュースケール社から取得。2019年には同社から「SMRの製造可能性調査」を請け負っており、2021年1月にこのタスクを完了した。その結果に基づき斗山エナビリティ社は現在、建設スケジュールの遅延リスクを軽減するとともに確実なコスト設定が可能になるよう、NPM機器のプロトタイプを開発中である。

斗山エナビリティ社の朴会長兼CEOは、「ニュースケール社との戦略的協力関係は継続的に強化してきており、今やSMRを製造する万全な準備が整った」と表明。市場ではSMRの需要が一層高まりつつあることから、同社の下請企業にも参加のチャンスがあるとしている。

ニュースケール社のJ.ホプキンズ会長兼CEOは、「当社が最初のSMRを市場に出す最有力候補であることを世界中に示すことができた」と指摘。斗山エナビリティ社に対しては、「世界レベルの製造能力によって当社製SMRの商業化に大いに貢献して欲しい」と述べた。

なお、今回の発表によると、ニュースケール社は斗山エナビリティ社以外にも、多くのパートナー企業と機器発注の調整を行うなど、サプライチェーンの確保準備中。米国を含む北米のみならず、欧州やアジアの顧客にもSMRを確実に販売していくため、国内外の複数のサプライヤーと契約締結に向けた協議を進めているとしている。

(参照資料:斗山エナビリティ社ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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