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米ワイオミング州、先進的原子力技術の開発等で国立アイダホ研と協力

12 May 2022

ワイオミング州のゴードン知事
© The State of Wyoming

米ワイオミング州の州政府は5月4日、西側に隣接するアイダホ州の国立研究所(INL)と先進的原子力技術等の研究開発や実証・建設で協力するため、INLの管理・運営を担当しているバッテル・エナジー・アライアンス(BEA)社と了解覚書を締結した。

ワイオミング州では2021年6月、ビル・ゲイツ氏が会長を務める原子力開発ベンチャー企業のテラパワー社が、GE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社と共同開発しているナトリウム冷却高速炉「ナトリウム(Natrium)」の実証炉建設について、同州のM.ゴードン知事、および同州を含む西部6州に電力供給しているパシフィコープ社の3者が協力することで合意。同年11月には、テラパワー社は実証炉の建設に適したサイトとして、同州南西部のケンメラー(Kemmerer)市にある(閉鎖予定の)石炭火力発電所を選定している。

こうした背景から、ワイオミング州は今回の覚書を通じて、原子力を含む先進的エネルギー技術の開発でINLの見識や能力、戦略等を活用。将来的に堅固で持続可能な州経済の基盤を実現するとともに、先進的なエネルギー技術で同州と米国がリーダー的地位を確立できるよう努めていく。具体的な協力分野としては、先進的原子炉技術とその活用、全般的な原子燃料サイクル、原子力関係機器の製造、水素の製造・輸送・消費とその産業利用、原子炉を組み込んだ先進的な無炭素エネルギーの生産と活用、およびその他の先進的エネルギーシステムを挙げている。また、州内のウラン産業を含む原子力産業に従事する従業員の教育・訓練についても、協力を促進していく方針だ。

5年間有効な今回の覚書について、ワイオミング州政府は「米国の国策産業ではINLが長年にわたりリーダー的役割を果たしてきた一方、当州には米国全土に安価で確実なエネルギーを提供可能なインフラや専門技術、天然資源がある」と指摘。世界市場が低炭素なエネルギーに向けて移行していくなか、覚書の締結はワイオミング州が引き続き、そのための解決策を提供していくことを示しているとした。

同州のゴードン知事は、「『ナトリウム計画』の誘致は大きなキッカケとなったが、私の目標は州内のウラン資源や労働力、技術力を活かして原子力産業を根付かせることだ」と表明。今回の覚書によって、この目標の達成が促進されると述べた。ワイオミング・エネルギー機関(WEA)のG.ミュレル事務局長も、「今後数年間で両者の連携関係が正式に形作られる」と指摘。「INLの専門的知見は、ワイオミング州が進める『あらゆるエネルギーを活用する戦略』において重要な役割を果たすだろう」としている。

(参照資料:ワイオミング州の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月9日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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