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米加両国の規制委、先進的原子炉設計に関する初の共同技術審査を完了

09 Jun 2022

IMSRの完成予想図 © Terrestrial Energy

カナダのテレストリアル・エナジー社の6月7日付け発表によると、同国の原子力安全委員会(CNSC)と米国の原子力規制委員会(NRC)が初の「共同技術審査」として実施した同社製小型モジュール式・一体型溶融塩炉(IMSR)の審査が、このほど完了した。

この共同技術審査は、NRCとCNSCが小型モジュール炉(SMR)や先進的原子炉設計を一層効率的、効果的かつタイムリーに分析し、原子力安全・セキュリティを一層向上させるために締結した2019年8月の協力覚書(MOC)に基づいており、国境を跨いで両機関が実施する共同規制プログラムの一部である。同MOCは両機関による2017年8月の了解覚書(MOU)の協力項目を拡大させたもので、ここではSMR等の技術開発における経験や専門的知見、良好事例を両機関が共有し、原子力安全規制の実効性をさらに高めることが目標となっている。

今回の初の共同技術審査で、両機関はテレストリアル・エナジー社が実施したIMSRの「設計に起因して想定される事象(PIE)」の分析結果やIMSRに使われている技法などを審査。テレストリアル・エナジー社によると、このような作業は将来、同社がカナダや米国でのIMSR建設に向けて許認可申請の準備を行う際、一層詳細な安全評価作業を実施するための基盤になる。

CNSCのM.バインダー前委員長は初の共同技術審査が完了したことについて、「IMSRの商業化に向けた規制プログラムが大きく進展するとともに、原子力規制で国際的な調和が可能であることを明確に示した」と評価。「独立の立場を持つ2国家の規制機関が審査することで、対象技術の信頼性が高まるだけでなく、世界市場への投入に向けた推進力が生み出される」と強調した。

NRCのJ.メリフィールド元委員は、「2つの規制機関の間で審査の調和を図り、規制の重複を避けるという意味で重要な節目が刻まれた」と指摘。「今回の審査で、北米大陸における次世代原子炉の開発は実際の建設に向けて大きく前進した」と述べた。

テレストリアル・エナジー社のIMSR(熱出力40万kW、電気出力19万kW)は、電力のみならずクリーンな熱エネルギーも供給可能な第4世代の原子炉設計。他の先進的原子炉設計の多くがHALEU燃料(U-235の濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を装荷するのに対し、IMSRはこれまで世界中の軽水炉に装荷されてきた(濃縮度5%以下の)標準タイプの低濃縮ウランを使用する。

同社としては、まずIMSRの最初の商業用実証炉をカナダで建設し、その後に米国法人(TEUSA社)を通じて、北米を始めとする世界市場にIMSRを売り込む方針。CNSCは現在、カナダの規制要件に対するIMSRの適合性を「ベンダー設計審査」と呼ばれる非公式の予備的設計評価サービスで審査中である。IMSRはすでに同審査の第1段階をクリアし、2018年12月から第2段階の審査が行われている。NRCの設計認証(DC)審査に関しては、TEUSA社が将来的に申請することを計画中である。 

(参照資料:テレストリアル・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月8日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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