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米ニュースケール社、企業戦略をSMRの納入・顧客サービスにシフト

21 Jun 2022

「VOYGR-6」の完成予想図 ©UAMPS

米国のニュースケール・パワー社は6月20日、同社製の小型モジュール炉(SMR)「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の商業化を一層加速していくため、同社の戦略をSMRの開発と製造から、今後はNPM納入後のライフサイクルを通した顧客満足の重点化にシフトすると発表した。

新しい事業組織「VOYGRサービシズ&デリバリー(VSD)」を設置し、NPMを複数備えた「VOYGR」発電設備の製造と販売、納入および商業運転にともなう機器・サービスの提供など、顧客との協力に特化した対応を取る方針。VSDの社長には同社のT.マンディCOO(最高商務責任者)が就任する予定で、J.ホプキンズCEOの直属組織となるVSDの堅実な運営について、全面的な責任を担うことになる。

米原子力規制委員会(NRC)は2020年9月、1モジュールの出力が5万kWの同社製「NPM」に対し、SMRとしては初の「標準設計承認(SDA)」を発給した。これを受けてニュースケール社は、「VOYGR」発電設備の建設に向け、プラントとしての設計標準化やサプライチェーンの確保といった長期的視点での活動の在り方を検討している。同社はまた、今年5月に特別買収目的企業(*未公開会社の買収を目的として設立される法人)であるスプリング・バレー社(Spring Valley Acquisition Corp.)との合併を完了し、SMRの設計・開発企業としては初めて株式を公開。今回の戦略シフトと併せて、同社製SMR技術の商業化を長期的観点から促進・強化していく考えだ。

「NPM」初号機については、ユタ州公営共同事業体(UAMPS)が出力7.7万kWのNPMを6基備えた「VOYGR-6」をアイダホ国立研究所内で建設する計画を進めており、最初のモジュールは2029年の運転開始を目指している。SMRを通じて、UAMPSは2015年に開始した「無炭素電力プロジェクト(CFPP)」を推進する方針で、すでにSMRの長納期品発注に向けた活動を実施中。このため、顧客を中心に据えた組織改革となるVSDの設置は、世界で急速に進展している脱炭素化への需要に、同社のクリーンエネルギー技術で迅速に対応する非常に重要なステップになると同社は指摘している。

「VOYGR」発電設備についてはまた、ポーランドとルーマニアで建設する計画があり、これらの計画で効率的かつ効果的にSMRを納入するには事前の組織改革が必要だと同社は強調。ホプキンズCEOも、「設備の納入とその後に目を向けた組織改革は、当社が次の段階に進む上で自然なことだ」と指摘した。同CEOによると、ニュースケール社のSMRは、クリーンで信頼性の高い安全なエネルギーの生産に新たな時代を開く画期的な技術。「その建設で顧客と緊密に連携していくことは、当社の重要な使命の一部でもある」と述べた。

VSDの社長に就任するマンディCOOは、「他にも数多くの国家や電気事業者がグローバルな繁栄を維持しつつ地球温暖化の影響を緩和する主要な取り組みとして、VOYGR発電設備の導入を検討している」と指摘。その上で、「あらゆる人々の将来のエネルギー利用による恩恵を究極的に改善・拡大するため、今こそ組織的な準備を進めるべき時だ」と強調している。

(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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