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米大統領、ルーマニアのSMR計画に1,400万ドルの支援を発表

28 Jun 2022

G7で発言するバイデン大統領 ©White House

米国のJ.バイデン大統領は6月26日、ドイツ南部のエルマウにおける主要7か国(G7)首脳会議で、ルーマニアが進めている米ニュースケール・パワー社製・小型モジュール炉(SMR)の建設計画を支援するため、1,400万ドルを拠出すると発表した。

この日のG7では、発展途上国へのインフラ投資を促す新たな枠組み「グローバル・インフラ投資パートナーシップ(PGII)」の発足が決定しており、米国政府は助成金や連邦政府資金、および民間資金も含めて今後5年間で2,000億ドルを調達すると表明。対象案件の一つとして、ルーマニアにおける「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」の建設計画を挙げたもの。米国政府がニュースケール社とともに拠出する助成金の1,400万ドルは、候補地である同国南部のドイチェシュティ(Doicesti)で出力7.7万kWのNPMを6基備えた発電設備「VOYGR-6」を建設するのに先立ち、実施が予定されている「(予備的な)基本設計(FEED)調査」に充てられる。

この計画については、米貿易開発庁(USTDA)がすでに2021年1月、建設サイトの選定作業を支援するため、ルーマニア国営の原子力発電会社(SNN)に約128万ドルを交付した。このような実績に基づき、今回の助成金は政府資金を呼び水として、数十億ドル規模の企業投資を促すことを狙っている。同時に、先進的原子力技術の分野で米国が保有する技術力を明確に示し、クリーンエネルギーへの移行を加速するほか、数千人規模の雇用を創出する意図がある。また、原子力発電で高いレベルの安全・セキュリティや核拡散抵抗性を維持しつつ、欧州のエネルギー供給を強化・保証するものでもある。

この発表については、SNNが翌27日に謝意を表明している。ドイチェシュティのFEED調査で得られる重要データは、コストの見積もりや綿密なスケジュールの立案、許認可手続きなど国内外の規制要件に基づいたプロジェクト設計に役立てるほか、ルーマニア国内で機器の製造・組立てや関連サービスを提供する可能性のあるサプライヤーを、この段階で特定すると説明した。

SNNのC.ギタCEOは、「米国の原子力規制委員会(NRC)が初めて承認した唯一のSMR設計を、我が国の脱炭素化のみならず、エネルギーの自給力向上と繁栄にも役立てたい」とコメント。その上で、「米国との協力を通じて、原子力分野の新しいプロジェクトでは最も厳しい安全基準を確実にクリアしていくとともに、ルーマニアが既存のチェルナボーダ1、2号機で25年以上にわたり蓄積してきた安全運転の経験や専門的知見で、欧州初のSMR建設に貢献したい。民生用原子力プログラムの導入を検討中の国々には、その範例を示すつもりだ」と述べた。

なお、ルーマニアではこのほか、建設工事が停止中のチェルナボーダ3、4号機(各70.6万kWのカナダ型加圧重水炉)を完成させる計画も進められており、米国政府は2020年10月、同計画への支援とルーマニアの民生用原子力発電部門の拡大と近代化に協力するため、ルーマニアとの政府間協定(IGA)案に調印した。米輸出入銀行(US EXIM)もこれと同じ日、ルーマニアのエネルギー・インフラ分野等に対する最大70億ドルの財政支援に向けて、同国の経済・エネルギー・ビジネス環境省と了解覚書を締結している。

(参照資料:ホワイトハウスSNNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月27日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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