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ハンガリーのパクシュⅡ期工事に建設許可

30 Aug 2022

パクシュⅡ期工事の完成予想図 ©Rosatom

ハンガリーのパクシュⅡ開発会社は8月26日、同国唯一の原子力発電所であるパクシュ発電所(50万kW級のロシア型PWR=VVER-440×4基)のⅡ期工事(120万kWのVVER-1200×2基)建設について、国家原子力庁(HAEA)が25 日付で建設許可を発給したと発表した。

同社の5月19日付の発表によると、ハンガリー議会の持続可能開発委員会は2023年後半にⅡ期工事の着工を目指すとしており、この10年間で2基とも運転開始させる方針である。計画を担当する外務貿易省のP.シーヤールト大臣は今回、「このプロジェクトがハンガリーのみならず国際的な安全要件を満たしていることが確認された」と表明。2030年までに2基とも完成させ、ハンガリーが安定したエネルギー供給を確保できることは間違いないと強調している。

5、6号機となるⅡ期工事の建設はロシアの原子力総合企業ロスアトム社が請け負っており、2014年にハンガリー政府は建設プロジェクトに関する政府間協定とEPC(設計・調達・建設)契約をロシア側と締結。総工費の約8割に相当する最大100億ユーロ(約1兆3,850億円)をロシア政府の低金利融資で賄う計画である。今年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始した後、ハンガリー政府は建設プロジェクトの実施を大幅に加速すると表明しており、関係責任をすべて外務貿易省に移管。「5、6号機はハンガリーの国家安全保障と経済、および戦略的な国益に資する」と述べてその重要性を強調している。

Ⅱ期工事の建設許可申請書は2020年6月末にパクシュⅡ開発会社が提出したもので、HAEAはこれを約2年かけて審査した。内容の複雑さから、審査期間中に同社が提出した文書は最終的に40万ページを超えたが、HAEAはそれらについて包括的かつ詳細な審査を行うとともに、コロナ禍の中で2021年にはオンラインで公開ヒアリングも開催。Ⅱ期工事の建設について寄せられた意見や質問は150件以上にのぼり、これらを踏まえた上でHAEAは「同発電所で建設される5、6号機は『原子力安全法』など、関係法の要件を満たす」と結論付けている。

ロスアトム社は今回の建設許可発給について、「欧州連合(EU)加盟国で第3世代+(プラス)のVVERに建設許可が発給されたのは初めて」と指摘。動的と静的、2種類の安全系を備えた最新鋭設計VVER-1200の特長として、コンクリート製の二重格納容器や、設計基準外事象の発生時に放射性物質の漏洩を防ぐコア・キャッチャーが備わっている点を強調した。

同社のA.リハチョフ総裁は、「申請書の準備ではハンガリーのパートナーとともに膨大な作業を実施したが、今回我が国のVVER-1200が試練を乗り越え、その安全性と信頼性が証明された」とコメント。Ⅱ期工事の2基によって、ハンガリーのエネルギー供給は今後100年近く保証され、欧州諸国はCO2の削減目標達成に近づくことができるとしている。

なお、ハンガリーでは原子力発電所を建設する際、様々な許認可を取得する必要があり、Ⅱ期工事では建設許可のほかに、「サイト許可」や電力法に基づく「発電実施許可」、建設工事に必要な資機材用貯蔵建屋など「付属施設の建設許可」等がすでに発給されている。プロジェクト企業の「原子力発電会社(Atomerőmű Zrt)」はまた、8月26日付でHAEAから長納期品である原子炉容器の製造許可を取得している。

(参照資料:国家原子力庁(HAEA)パクシュⅡ開発会社ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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