原子力産業新聞

海外NEWS

英ロールス・ロイス社、オランダでのSMR建設に向け現地企業と独占契約

31 Aug 2022

ロールス・ロイスSMR社製SMR発電所の完成予想図 ©Rolls-Royce SMR

英国ロールス・ロイス社の小型モジュール炉(SMR)開発子会社であるロールス・ロイスSMR社は8月25日、オランダで同社製SMRの建設に向けて協力していくため、オランダの新興原子力事業者であるULC-エナジー社と独占契約を締結したと発表した。

ULC-エナジー社は昨年アムステルダムで設立された企業で、オランダ国内で原子力発電所の建設プロジェクトを進め、同国の脱炭素化を促進することを使命としている。

確証済みの技術に基づく近代的で最新鋭のモジュール式原子炉の建設を目指しているため、同社はSMRの供給者としてロールス・ロイスSMR社を選択。両社はともに「原子力発電こそ、オランダがクリーンで安価、かつ信頼性の高いエネルギー・システムへ移行するのを加速できる」と考えており、今回の正式な連携協力契約に基づき、今後数年間にわたりオランダでSMR建設を準備する。

ロールス・ロイスSMR社の発表によると、同社製SMRはPWRタイプで出力は47万kW。これは陸上風力発電のタービン150台以上に相当し、少なくとも60年間はベースロード用電源として稼働が可能。再生可能エネルギーの間欠性を補えることから、その設備拡大を支援することができる。同社のSMRはまた、機器の90%が工場で製造されるため、設置場所での作業は主に既製の試験済みモジュールを組み立てるだけ。これによりプロジェクトとしてのリスクが著しく軽減され、工期も大幅に縮減される可能性がある。

ULC-エナジー社のD.ラベリンクCEOは今回、「エネルギー市場の中でも特に西欧の状況が厳しくなるなか、信頼性の高い安価なエネルギー・システムの重要性が浮き彫りになった」と指摘した。「オランダ政府は原子力が国内で有意な役割を果たせること、また果たすべきだと確信しており、出力47万kWで設備利用率が95%を超えるロールス・ロイスSMR社のSMRは正に理想的。これを効率的に建設していくことで、電力の供給や産業用の熱電併給が可能になる」としている。

ロールス・ロイスSMR社のSMRについては、英国のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)が2021年11月、民間部門で行われている投資のマッチングファンドとして、2億1,000万ポンド(約339億円)を提供すると発表した。ロールス・ロイスSMR社も、同じ月に同社製SMRについて包括的設計審査(GDA)の実施を申請しており、BEISによる初期スクリーニングを経て、今年4月から原子力規制庁(ONR)と環境庁(EA)が審査を開始。英国内では2030年代初頭にも、最初のSMRが運開する計画だ。

また、国外ではトルコとチェコ、およびエストニアに対して、輸出のための覚書が締結済みである。

(参照資料:ロールス・ロイスSMR社ULC-エナジー社(オランダ語)の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの8月25日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

cooperation