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米ニュースケール社 SMRで新たな水素製造を共同研究へ

02 Dec 2022

ニュースケール社製SMR発電所の完成予想図 ©NuScale Power

米国で小型モジュール炉(SMR)を開発しているニュースケール・パワー社は12月1日、SMRを活用したクリーン水素の新たな製造コンセプトを共同で開発・実証するため、石油化学大手のシェル・グループに属する研究開発サービス・コンサルティング企業のシェル・グローバル・ソリューションズ(Shell Global Solutions)社、アイダホ国立研究所(INL)およびその他の関係企業と共同研究協定を結んだと発表した。

協定に参加したのは同シェル社のほか、米国内でニュースケール社製SMRの初号機建設を計画しているユタ州公営共同事業体(UAMPS)と、その建設予定地であるINL、燃料電池開発企業のフュエル・セル・エナジー(Fuel Cell Energy)社、発電分野のコンサルティング・サービスを提供しているFPoliSolutions社とGSEソリューションズ社である。

UAMPSは米国西部6州の地方自治体と共同組合48機関による卸売電力サービスの共同活動組織で、近年独自の「脱炭素化プロジェクト」を推進中。SMRの建設は同プロジェクトの一部であり、UAMPSは出力7.7万kWの「ニュースケール・パワー・モジュール(NPM)」を6基備えた「VOYGR-6」発電所(出力46.2万kW)の建設で、2029年までに最初のモジュールの完成を目指している。今回の研究協定では、同プロジェクトが地方経済に与える影響についても評価が行われる予定で、エネルギーの需給管理がリアルタイムで行われる「インバランス市場」の影響もこれに含まれるとしている。

ニュースケール社によると、同社のSMRは応用性に富んだ技術であるため、様々な再生可能エネルギー源に接続された電力網を安定させる可能性がある。電力需要が高いにも拘わらず再エネの発電量が低い場合、ニュースケール社はSMRで製造したクリーン水素は貯蔵エネルギー源や、高需要時の最終製品として活用できると考えている。今回の共同研究により、プラントの熱を有効活用する「水素製造の統合エネルギーシステム(IES)」を開発する方針である。

IESは熱、電力、それらの貯蔵システムを統合することで、エネルギー効率の向上と、温室効果ガスの排出低減を目指している。まさに柔軟性を有するSMRに適したシステムと言われている。

ニュースケール社は「固体酸化物形電解セル(SOEC)システム」で水素を製造し、SOECの逆動作である「可逆型の固体酸化物形燃料電池(SOFC)」を用いて、貯蔵した水素から発電を実施する。これにより、変動する再エネをバックアップし、電力網の脱炭素化を目指す。このため同社は、まずSMR制御室のシミュレーターを改造してIESの動作を評価、その後モデル化したSOECと可逆型SOFCを導入するとしている。

ニュースケール社の説明によると、SOECで水素を製造し発電用に一定量貯蔵するには複数のNPMが必要になる。同社のJ.ホプキンズCEOは、「世界規模で脱炭素化を進めるには水素の活用が欠かせない」とした上で、「当社製SMRによる低炭素水素でその達成に貢献したい」と述べた。

シェル社で研究戦略を担当するD.スミット副社長は、今回の協定について「低炭素エネルギーへの移行支援と脱炭素化技術の模索という点で、当社の目標にも合致する」と評価している。

(参照資料:ニュースケール社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月1日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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