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サムスン重工 海上浮揚式原子力発電所の概念設計を完了

06 Jan 2023

CMSRを搭載したパワー・バージの完成予想図 ©Seaborg

韓国のサムスン重工業(SHI)は1月4日、デンマークのシーボーグ(Seaborg)社製コンパクト溶融塩炉(CMSR)を搭載した海上浮揚式の原子力発電所「CMSRパワー・バージ」の概念設計を完了したと発表した。また、アメリカ船級協会(ABS)から、初期段階の実行可能性を認証したことを意味する「原則承認(AIP)」を取得したことを明らかにした。

SHI社の造船技術と溶融塩炉の開発企業であるシーボーグ社の技術を融合した「CMSRパワー・バージ」は、電気出力10万kWのCMSRを2~8基搭載でき、24年間稼働が可能。船体には蒸気タービン発電機や陸上の送・配電施設と接続する設備も備わっており、設置点まではタグ・ボート等で曳航されるためサイト選定上の制約が少ない。また、製造期間が約2年と短いことから、コストも大幅に軽減されると指摘している。

今後は同バージの設備について詳細設計を進め、2028年までの商業化を目指す方針だ。同バージは化石燃料発電所を代替する熱電併給設備として需要が見込まれるだけでなく、水素製造や海水脱塩、産業用の熱供給施設にも幅広くエネルギーを供給できるとしている。

SHI社はすでに2021年6月、溶融塩炉(MSR)技術に基づく小型モジュール炉(SMR)で海上浮揚式原子力発電所や原子力船を開発するため、熱電併給可能なSMR「SMART」(電気出力10万kW)の開発実績を持つ韓国原子力研究院(KAERI)と協力協定を締結した。その際KAERIは、MSR内部で異常信号が発生した場合、液体燃料の溶融塩が凝固するよう設計されているため重大事故の発生を抑制できると説明。このような固有の安全性に加えて、MSRには電力と水素を効率よく生産できるという利点があり、次世代のグリーン水素製造など様々な分野で活用が可能である。

2022年4月には、SHI社は溶融塩炉の技術についてシーボーグ社と戦略的技術協力の覚書を締結した。この覚書に基づき、両社は「CMSRパワー・バージ」をターンキー契約で製造・販売し港湾に係留するほか、陸上の送電施設と接続することを計画。協力オプションとして、同バージの近くに水素やアンモニアの製造プラントを共同建設し、同バージから安全かつクリーンな電力を安定的に供給するとしている。

SHI社の開発担当者は、「引き続き海上浮揚式原子力発電所の開発を進め、将来的に新たな市場を開拓していきたい」と述べた

(参照資料:サムスン重工業シーボーグ社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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