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韓国で新ハヌル3、4号機の主要機器発注

06 Apr 2023

新ハヌル3、4号機の完成予想図
©KHNP社

韓国の産業通商資源部(MOTIE)は329日、前政権が白紙撤回した新ハヌル(新蔚珍)34号機(各PWR140kW)の建設に向けて、韓国水力・原子力会社(KHNP)が今後10年間の関係業務で約29,000億ウォン(約2,900億円)の契約を斗山エナビリティ社と締結したと発表した。

具体的には、設計・製造に長期間を要する原子炉や蒸気発生器、タービン発電機などの製造・供給契約が正式に結ばれたもの。34号機はそれぞれ2032年と2033年の完成を目指しており、今年の上半期に環境影響評価を完了後、MOTIEでは早ければ7月にも電源開発事業の実施計画として承認する予定である。

これにともないKHNP社は同日、両機の環境影響について再検討した評価書案の公聴会を開催した。斗山エナビリティ社はすでに今年2月までに、450億ウォン(約45億円)規模の業務を下請け企業に予備的に発注。KHNP社から今回受注した契約を通じて、今年中にさらに約2,100億ウォン(約209億円)の業務を追加発注するとしている。

2022年5月に発足したユン・ソンニョル(尹錫悦)政権下のMOTIEは、脱原子力政策の影響で経営難に陥った原子力産業界の中小企業に対し、昨年だけで4,000億ウォン(約400億円)規模の緊急金融支援を提供した。4月以降はさらに、2,000億ウォン(約200億円)規模の低金利「特別金融プログラム」を施行する計画。このように円滑な融資を企業側に提供することで、MOTIEは韓国の原子力サプライチェーン再建に万全を期す考えである。

このプログラムについては、すでにMOTIEと国策銀行の韓国産業銀行、KHNP社、および斗山エナビリティ社が共同業務協約を締結しており、同行の金利優遇策、およびKHNP社と斗山社の資金貯蓄に基づき、35%台の低金利融資を提供。一次分として500億ウォン(約50億円)規模の融資を開始したのに続き、8月には二次分としてさらに1,500億ウォン(約150億円)規模の融資を行い、中小企業の経営難克服支援に総力を傾けるとしている。

輸出拡大に向け「ツー・トラック戦略」を推進

なお、MOTIEは同日、韓国企業による原子力発電所の輸出拡大を目指し、国営企業と中小の機器製造企業が共同で輸出を行う現行の方式と、単独輸出が可能な中小企業を100社育成するという「ツー・トラック戦略」を推進していくと発表した。

2027年までに現行方式で合計5兆ウォン(約5,000億円)規模の輸出契約受注を目指す一方、輸出の意思と潜在能力を持つ中小企業を選定し、輸出の前段階で最大5年間サポートするという特別プログラムを新設する。このような計画を「原子力発電所の機器・資材輸出の活性化案」に取りまとめ、第4次原子力発電所輸出戦略推進委員会で明らかにしたもの。

MOTIEによると、世界では近年原子力発電所の新規建設と既存炉の運転期間延長等により、機器・資材の需要が増加している。しかし、主要な供給国は過去に建設計画が停止したこと等が影響し、これらの製造能力が低下。これにより、グローバルな原子力サプライチェーンに韓国企業が参入する機会が拓かれている。

韓国企業の原子力機器・資材輸出は、過去5年間(2017年~2021年)に143件、5.3億ドルに留まっており、その前の5年間(2012年~2016年)との比較では、件数で43%、契約額では12.4%減少した。このうち、中小企業の単独輸出は全体の9%(件数)であり、ほとんどは国営企業が受注したプロジェクトの下請け輸出だった。

韓国政府としては、このような現状を打開する方針であり、新規原子炉の建設プロジェクトや既存炉の改修工事、および原子燃料工場の建設など、事業規模が大きくて機器・資材メーカーが数多く参加できる大型事業に集中する。また、付加価値の高い単品の機器・資材やメンテナンスサービス、小型モジュール炉(SMR)などにも、輸出分野を多様化していくとしている。

(参照資料:MOTIEの発表資料KHNPの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA329日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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