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ドイツで残る3基が閉鎖 今後も供給量不足が課題

17 Apr 2023

ドイツ南部のネッカー原子力発電所 ©EnBW

ドイツに最後まで残されていたイザール原子力発電所2号機(PWR148.5kW)、ネッカー原子力発電所2号機(PWR140kW)、およびエムスラント原子力発電所(PWR140.6kW)の3基が、現地時間の415日深夜にすべて永久閉鎖された。

これにより、ドイツは20113月時点で保有していた商業炉17基を全廃し、脱原子力を完了した。ただし、他国向けの原子燃料加工サービスなどは国内で継続する。

不足する電力を補うため、2011年当時に約17%だった再生可能エネルギーの発電量は2022年に全体の約50%に拡大したが、再エネだけに適用されている固定価格買取制度等の優遇措置により電気料金は高騰している。また、ロシアによるウクライナ軍事侵攻でノルドストリーム1を経由した天然ガスの供給量が大きく減少したこともあり、ドイツでは石炭火力の発電量が激増、今や発電量全体の三分の一を石炭火力が占めている。

フランスの原子力発電所がトラブルやメンテナンス等で予定通り稼働しなかったことから、昨年はフランスからの電力輸入量が一時的に激減したものの、ドイツは今後も引き続き原子力発電によるフランスの電力輸入を見込んでいる。また、欧州の濃縮企業ユレンコ社がドイツのグロナウに置いている濃縮工場も、欧州の他の国にある原子炉向けに操業を継続するなど、ドイツの脱原子力は、EU域内の分業体制の一部を担っているといえる。

イザール2号機とエムスラント発電所では今後、それぞれを保有するプロイセンエレクトラ社とRWE社が立地州の州政府から廃止措置許可を取得し次第、燃料集合体の取り出しなど廃止措置の準備作業を開始する。EnBW社はすでにネッカー2号機の廃止措置に必要な許可をすべて取得しており、3社はそれぞれ10年~15年かけて、原子炉を解体していく方針である。

2011年の福島第一原子力発電所事故を受けて、当時のA.メルケル政権は同年6月、2022年末までに17基すべての原子炉を廃止するための原子力法修正案を閣議決定、同法案は翌7月に議会で可決した。2021年末までに14基が閉鎖され、今回閉鎖された3基も2022年末までに閉鎖予定だったが、政府はエネルギー供給リスクが増大する今回の冬季を乗り切るため、これら3基の運転期間を3か月半に限り延長していた。

プロイセンエレクトラ社によると、1988年に送電開始したイザール2号機は年平均で約120kWhを発電。同機だけでバイエルン州における電力消費量の約12%を賄っており、同州の約350万世帯に年中無休で約35年にわたって、信頼性の高い無炭素電力を供給した。

EnBW社のネッカー2号機は1989年に送電を開始して以来、年間約110kWhの電力を供給。34年間の総発電量は3,750kWhにのぼり、バーデン・ビュルテンベルク州における総電力需要の約六分の一、居住世帯の電力需要の三分の二までを賄った。また、炉内の既存燃料で2023年に同機が発電した電力量は19kWh以上にのぼっている。

1988年にニーダーザクセン州で送電開始したRWE社のエムスラント原子力発電所は、35年間の稼働期間中に3,900kWh以上を発電した。これは、ベルリンにおける近年の電力需要の約31年分に相当する。

WNNの報道によると、スイス原子力フォーラムのH.U.ビグラー理事長がドイツの脱原子力完了について、「国際的なエネルギー・気候危機の真っ最中に、政府決定により原子力技術を放棄することは遺憾だ」と表明。「昨年は原子力の段階的廃止と天然ガスによる発電量の不足が、気候に悪影響を及ぼす石炭火力で補われたが、これは欧州全体の気候保全にとって好ましいことではない」と指摘している。

ドイツでは昨年8月、公共放送ARDの委託で調査機関のドイチュラントトレンド(DeutschlandTrend)が原子力に対する同国民の意識調査を実施。この時点で、41%が最近のエネルギー情勢から「3基の運転期間の3か月間延長」を支持。同じく41%が「3基の長期的活用が有益」と回答した。

(参照資料:プロイセンエレクトラ社EnBWRWE、の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNA414日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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