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フィンランド規制当局、SMRの安全評価と許認可の体制準備

06 Feb 2020

フィンランド放射線・原子力安全庁(STUK)は1月30日、一般に「小型モジュール炉(SMR)」と呼称される原子炉の安全な運転条件について取りまとめた報告書を公表した。SMRに対して国内外の関心が高まっていることから、その安全性評価など特有の課題を議論する内容であり、許認可体制についても原子力法の改正等を対象項目とすることを検討中だとしている。

 フィンランドでは今のところSMRを建設する具体的な計画は存在しないものの、STUKは今後のことを考慮した準備体制を整える方針である。STUKのP.ティッパナ長官は「我々は新型の原子力プラントに適用される安全要件についても関係者に考慮すべき内容を通達できるようにしておかねばならない」と説明。そうしたプラントの安全評価に関してもSTUKが状況に応じて対応できるようにしておく必要があると述べた。

 発表によると、この件については現在、同国の経済雇用省が作業部会を設置して調査を実施中。課題の1つは原子力施設に関する既存の法定許認可システムを、どのようにしてSMRの許認可や放射線安全モニタリング等に適合させるかであるとした。

また、世界では近年、SMR開発に莫大な投資が行われており、伝統的な原子力発電企業に加えて市町村の自治体、プロセス産業なども新たにSMRの電力とプロセス熱の利用に関心を表明しているとした。

STUKは今後10年以内に、国内市場にもSMRなどの新型原子力プラントの投入が予想されることから、今回の報告書ではSMRの安全性評価や許認可、モニタリング等で持続可能な条件を設定するため、当局や政策立案者、科学コミュニティ、エネルギー企業らが行う議論に対してガイドラインを提示。技術の進展にともない、当局の規制環境では社会の期待に直ちに応えられないようなリスクも生じることを想定した上で、そうした状況への対策については次のような認識の共有を図りたいとしている。すなわち、

(1)SMR向けに法体系を修正する必要性を見極める:既存の許認可手続きや安全要件は主に軽水冷却方式の大型炉向けに設定されている。今こそ政府が原子力法を包括的に改正する準備を進め、これらとは大幅に異なるSMR用の許認可システムを策定する好機である。

(2)関連の国際協力に参加することが重要:SMR製造業者の主な目的は国際市場向けにSMRを量産することにあるが、ここでの課題は国毎の安全要件が少しずつ異なる点。様々な国の安全規制当局が協力してSMRの安全要件を調和させれば、適切な許認可システムや実行可能な良好事例が明確になるため、STUKはこの作業に積極的に関わっている。

(3)研究と経験に基づく知見がSMRの安全性の基盤になる:SMRの性質はそれぞれに異なり、いくつかのSMRでは現在世界で稼働中の原子炉とも違っている。このため、SMRの安全性は実地で証明しなければならず、それぞれの安全確保対策を設計・評価する際も、膨大な量の研究や経験に基づく知見、実験・計算などが必要になる。

(4)SMRの安全性は全体的な評価が必要:SMRは地域暖房用のプロセス熱を供給する目的のものがあるため、住宅地に比較的近い地点での設置がしばしば検討されるが、緊急時に備えた予防的防護措置の準備区域については適切に配慮する必要がある。

(5)放射性廃棄物の管理を確実に:フィンランドでは世界に先駆けて放射性廃棄物の地層処分場を建設中であり、軽水炉方式のSMRについては同様の措置が有効と考えられる。ただし、SMRの放射性廃棄物管理用に新たな責任体制や組織モデルが必要になるかも知れない。

 

 (参照資料:STUKの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月30日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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