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全米の原子力発電所 設備利用率90%超を堅持

09 May 2025

大野 薫

全原子炉の設備利用率の中央値 ©ANS

米国原子力学会(ANS)によると、全米の原子力発電所92[1]2023年、2024年にそれぞれ営業運転開始したボーグル34号機を除く。の直近3年間(20222024年)の設備利用率は90.96%(中央値)と、前の3年間(20192021年)の91.24%をわずかに下回ったものの、引き続き90%を超える高水準を堅持していることが明らかになった。米国では、今世紀に入ってから一貫して90%前後の高い設備利用率を維持している。

今回の調査では、92基のうち54基が設備利用率90%を超え、全基が70%以上を記録した。すべての原子炉の設備利用率が70%を上回ったのは、20142016年調査時に次いで2回目。なお、19921994年では、設備利用率90%超の原子炉は、102基中わずか2基にとどまり、70%以上を記録したのは78基。20012003年では、104基中47基が90%を超え、2基を除くすべての原子炉が70%を超えた。

炉型別では、米国内の31基のBWRの設備利用率の中央値は91.19%で、61基のPWR90.73%だった。平均設備利用率は、BWR90.82%PWR90.13%とほぼ同水準だった。また、全米にある35の複数基の発電所では、20222024年の設備利用率の中央値が90.72%で、平均が90.81%17の単基の発電所では、中央値90.27%、平均87.96%とやや低い傾向となった。

運転年数別では、最も古い10基の原子炉の平均設備利用率は93.15%で、上位20基では91.67%となっており、長期運転において高い運転実績が維持されていることが示されている。なお、米国の原子力発電所の平均運転年数は約43年である。

また、複数サイトを保有する9事業者の合計設備利用率の中央値は89.66%、平均設備利用率は88.81%となり、いずれも全体の中央値と平均値(90.36%)を下回る結果となった。このうち、21基の原子炉を有する米国最大の原子力発電事業者であるコンステレーション社は、5年連続で9事業者中、最高の合計設備利用率を記録している。

コンステレーション社が現在保有する原子炉の多くは、2000年以前には少なくとも7社の異なる企業が所有していた。ANSによると、2000年当時、比較的業績が低迷していたコモンウェルス・エジソン(ComEd)社のイリノイ州5発電所(ブレイドウッド、バイロン、ドレスデン、ラサール、クワドシティーズ)と、ペンシルベニア電力(PECO)の2発電所(リメリック、ピーチボトム)を統合し、エクセロン社(現コンステレーション社)が設立された。同社は以後も発電所の買収・統合を進め、一時は最大23基を保有するまでに成長。今後、スリーマイルアイランド1号機が再稼働すれば、22基体制になる。

ANSは、同社の劇的な設備利用率の改善について、市場要因や技術と管理の進歩、ベストプラクティスの共有による業界全体の改善が背景にあると指摘。その一方で、同社が他社から原子炉を引き継ぎ、効率的に運用していることは、原子力が長期的に保有・管理する資産であること、そして複数サイトの所有管理が有効であることを示唆している、と分析している。

ANSによると、現在米国では94基の原子炉が運転中だが、運転認可更新や出力向上が進んだ結果、原子力発電電力量は、104基が運転していた2000年代初頭を上回っているという。米国エネルギー情報局(EIA)のデータによれば、2024年の原子力発電電力量は前年の7,750kWhからわずかに増加し、約7,820kWhとなった。一方、総発電電力量に占める原子力シェアは、2000年の19.8%から2024年には18.2%に低下している。こうしたなかでも、2024年には11[2] … Continue readingの原子炉が過去最高の年間発電電力量を記録した。

 

脚注

脚注
1 2023年、2024年にそれぞれ営業運転開始したボーグル34号機を除く。
2 ブランズウィック2号機、クリントン、コロンビア、ファーリー2号機、ハッチ2号機、オコニー2号機、パロベルデ1号機、ポイントビーチ1号機、リバーベンド、ターキーポイント4号機、ワッツバー2号機の計11基。

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