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EU司法裁・法務官が見解:司法裁は英国の国家補助問題でオーストリアの控訴を棄却すべき

12 May 2020

アイルランド選出のG.ホーガン法務官 ©EU司法裁判所

欧州連合(EU)司法裁判所のG.ホーガン法務官(=写真)は5月7日、英国ヒンクリーポイントC原子力発電所(HPC)に対する英国政府の国家補助を欧州委員会(EC)が承認したことについて、オーストリアが行った異議申し立てを司法裁は却下すべきであるとの見解を表明した。

EU司法裁判所の複数の法務官は、公平かつ独立の立場から意見を述べ、同裁判所を補佐する役割を担っている。その見解は法的拘束力を持つものではないが、判事らはすでにこの件に関する審議を開始しており、司法裁が後日判決を下す際、参考にされると見られている。

同発電所は現在、2025年末の初号機完成を目指して建設中であるが、着工前の2014年10月にECは、英国政府が同建設計画の投資契約に関して事業者の仏電力(EDF)グループと合意した財政支援策――完成した発電所の発電電力の固定(行使)価格による買い取り制度など――はEU競争法の国家補助規則に適合していると判断し、これを承認した。

オーストリアはこの承認を不服とし、取り消しを求める手続きを2015年に開始したが、EU司法裁判所の第一審裁判所は2018年7月、EC承認を改めて確認する判断を下しオーストリアの求めを却下。その際、HPC発電所事業者に対する英国政府の支援策について、①発電電力の買い取り制度は販売価格の安定を保証するものであり、②同発電所が政治的理由で早期閉鎖された場合の補償を確保するため――などと説明していた。

その後オーストリアは、第一審裁判所によるこの判断の破棄をEU司法裁判所に申し立てたもので、この点についてホーガン法務官はまず、「第一審裁判所にはEC承認に対するこのような異議を却下する全面的権限がある」と指摘。このことから、司法裁がオーストリアの異議申し立てを却下するよう提案するとした。

同法務官はまた、欧州原子力共同体(ユーラトム)条約は欧州連合条約(TEU)やEU競争法(TFEU)と同等の位置づけにあり、ユーラトム条約が扱わないEU法の全分野についてはTEUとTFEUが適用されると説明。ユーラトム条約には国家補助問題を取り扱う個別の項目が含まれないため、国家補助や競争原理に関するTFEU規則を原子力部門に適用するのが適切だと述べた。

また、ユーラトム条約の条項は原子力発電所の建設を必然的に想定しているため、この条約が原子力発電所の新規建設や経年化した発電所の取り換え・改修のいずれもカバーしていないとするオーストリアの主張は受け入れられないと同法務官は明言。さらに、原子力発電所の建設はEU法の中で明確に定義されている目標でもあり、環境保全のような他の目標を優先させることはできない。いずれにしてもユーラトム条約の目標を受け入れた場合、EUのすべての加盟国は他の加盟国が自らの領土内で原子力発電所を建設する権利を原則として無条件で受け入れたことになるとしている。

(参照資料:EU司法裁判所の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの5月7日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

 

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