原子力産業新聞

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米ケイロス・パワーとBWXT 商業用TRISO燃料製造で協業

22 Sep 2025

桜井久子

ケイロス社のアルバカーキにあるペブル開発研究所で、非核材料で作られた代替TRISO粒子を使用してぺブルを製造 Ⓒ Kairos Power

米原子力新興企業のケイロス・パワー社とBWXテクノロジーズ(BWXT)社は93日、ケイロス社の先進炉やその他の潜在顧客への燃料供給に向けて、TRISO(3重被覆層・燃料粒子)燃料の商業生産に向けた技術および製造プロセスの最適化を共同で検討することで合意した。

今回の協力により、ケイロス社の環状の黒鉛ペブル製造能力と、BWXT社の20年以上にわたるTRISO燃料製造の経験を融合させ、ケイロス社が建設するヘルメス2実証プラントと後続の商業プラントの展開に向けた燃料供給の可能性を探る。ケイロス社が開発する商業炉のフッ化物塩冷却高温炉(KP-FHR)は、ゴルフボール大の環状黒鉛ペブルで被覆されたTRISO燃料を使用する。

両社は、ケイロス社のニューメキシコ州にあるアルバカーキ・キャンパス内のTRISO開発ラボ(TDL)、バージニア州リンチバーグにあるBWXTイノベーション・キャンパス、さらにBWXT社の既存のTRISO製造ラインを活用し、TRISO燃料製造とプロセス自動化の最適化を検討する。両社はまた、TRISO燃料製造施設を共同で開発する可能性を探ることで合意。同施設には、これまでのノウハウに加え、商業用燃料生産のための新たな技術が組み込まれる予定だ。

ケイロス社は、両社の燃料製造に関する知識と専門性を組み合わせ、効率的かつコスト効果の高い大量生産型TRISO被覆粒子燃料の開発によって、商業炉のスケールアップと燃料コストの低減を図る。同社のM. ハケット副社長(燃料・材料部門)は、「BWXT社との協力により、TRISO燃料製造プロセスにおけるイノベーションを加速させ、生産・自動化・効率性向上を早期に実現することで、将来の燃料コスト削減が可能になる」と語った。

BWXT社のJ. パーカー先進燃料部門シニアディレクターは、「ケイロス社や他のベンダーが先進炉展開の計画を進める中、TRISO燃料の製造能力への投資は、将来の先進炉フリートにコスト競争力のある燃料供給のカギとなる。開発を加速させ、ケイロス社、BWXT社、そしてより広い先進炉コミュニティへ経済的なTRISO燃料の安定供給を実現していく」と語った。

TRISO燃料は、米エネルギー省(DOE)によって開発された実証済みの技術で、「地球上で最も堅牢な燃料」とされている。TRISO粒子は、ウラン・炭素・酸素からなる燃料コアを、放射性核分裂生成物の放出を防ぐ3層の炭素系およびセラミック系の3重層で被覆した構造。ケイロス社は、TRISO燃料とフッ化物溶融塩冷却材を組み合わせ、堅牢な固有安全性を備えた、シンプルでコンパクト設計の先進炉の実現を目指している。

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