原子力産業新聞

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原子力産業団体が共同声明 各国政府に原子力への投資支援を訴え

22 Sep 2025

桜井久子

「新原子力2025へのロードマップ」会議参加者
Ⓒ @Nucleareurope/ X

経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)と韓国政府(産業通商資源部)が918日~19日にフランスのパリで「新原子力2025へのロードマップ」ハイレベル会議を共催したのを機に、原子力産業を代表する9業界団体[1] … Continue readingは9月18日、エネルギー安全保障の強化とクリーンで豊富な電力供給に対する世界的な需要の高まりに対応するために、各国政府に対して原子力への投資支援を呼びかける共同声明を発出した。 

2023年、2024年にも開催されたこの年次ハイレベル会議には、政府と産業界のリーダーが一堂に会し、原子力に対する世界的な期待の高まりに応えるべく、必要な規模とペースで新規原子力発電所を建設するために必要な喫緊の課題について協議している。今回の会議では、多国間開発銀行やここ数か月間に原子力融資を発表した主要な民間資本関係者も参加し、原子力発電の規模拡大に不可欠な政策と資金調達のほか、タイムリーな建設や熟練した労働力の育成、燃料供給の確保、原子力部門のサプライチェーンに焦点を当てた協議が行われた。

欧州原子力産業協会(Nucleareurope)のE. ブルティン事務局長は、「世界中の政府は、信頼性が高く、手頃な価格でクリーンな電力と熱を提供する上での原子力の重要な役割に合意している」と述べ、「政府は、大規模な新規建設から既設炉の出力増強と運転期間延長、小型モジュール炉(SMR)やマイクロ炉の開発と展開まで、あらゆる原子力技術を網羅するプロジェクトへの投資を支援する必要がある」と強調した。

同声明では、政府に対して以下の分野で具体的な行動を起こすように提起している。 

  • 経済効率性の観点から、技術的に可能な既設炉の長期運転を確保する。
  • 新しい原子力プロジェクト(大型炉、SMR、先端技術)や原子力バリューチェーン、燃料サイクル施設を促進するための一貫性のある長期政策を確保する。
  • ロシア製燃料と機器利用を段階的に廃止する多くのOECD諸国の意図を踏まえ、特に採掘、転換、濃縮に重点を置いた燃料サイクルを含む、原子力バリューチェーン全体を支援するための大胆な措置を引き続き講じる。
  • クリーンエネルギー源に対して技術中立性を適用し、エネルギー部門の拡大を成功させる。これはエネルギーの最終消費者にとって不可欠であり、原子力部門への投資に対して明確なシグナルを送るためにも必要。さらに、原子力が国際的な炭素削減メカニズムにおける正当な取引手段として認められるようにする。
  • 世界銀行が原子力プロジェクトへの資金提供に前向きな姿勢を示していることを踏まえ、民間の資金調達も促進するため、国内および多国間レベルでの公的資金へのアクセスを可能にする。
  • OECD域内および他国で新規プロジェクトを実現するOECDの可能性を最大限に引き出すために、強力かつ協力的な原子力サプライチェーンを支援する。
  • 規制当局間の連携強化により、設計のさらなる標準化を可能にし、コストの削減、フリートの展開を促進する。

同産業団体は、気候変動とエネルギー安全保障の要請に応えるため、原子力開発を支援するという各国政府の取組みに対し、引き続き協力する用意があるとしている。

脚注

脚注
1 日本原子力産業協会(JAIF)の他、カナダ原子力協会(CAN)、米国電力研究所(EPRI)、仏原子力産業協会(GIFEN)、韓国原子力産業協会(KAIF)、米原子力エネルギー協会(NEI)、英国原子力産業協会(NIA)、欧州原子力産業協会(Nucleaeurope)、世界原子力協会(WNA)の計9団体。

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