ルーマニア チェルナボーダ・プロジェクトにJPモルガンが融資
03 Oct 2025
ルーマニア国営原子力発電会社のニュークリアエレクトリカ(SNN)は9月24日、JPモルガン・チェースの欧州法人であるJPモルガンSEが主導する銀行コンソーシアムと、チェルナボーダ原子力発電所1号機の改修と同3-4号機の増設プロジェクトへの融資契約を締結した。SNNの株主による承認を経て実施される。
銀行コンソーシアムは以下の銀行で構成:
- 1号機改修プロジェクトの資金調達: Banca Comerciala Romana SA、Banca Transilvania S.A.、BRD Groupe Societe Generale SA、CEC Bank S.A.、Citibank Europe PLC(ダブリン・ルーマニア支店)、ING Bank N.V. アムステルダム – (ブカレスト支店)、UniCredit Bank SA、J.P. Morgan SE(ドイツ本社)
- 3-4号機プロジェクトの資金調達: Banca Transilvania S.A.、BRD Groupe Societe Generale SA、CEC Bank S.A.、ING Bank N.V. アムステルダム(ブカレスト支店)、UniCredit Bank SA、J.P. Morgan SE(ドイツ本社)
1号機(カナダ製CANDU、70.6万kWe)の改修プロジェクト向けに、5.4億ユーロの融資が行われる。改修工事は同機の30年間の運転期間延長を目的としており、SNNは2024年12月、エンジニアリング、調達、建設(EPC)契約を、カナダ、イタリア、韓国企業のコンソーシアムと締結している。EPC契約額は19億ユーロ。プロジェクトは現在、計画策定、設計・調達・建設契約の締結、長納期設備の調達、インフラ整備、許認可取得、資金確保などの準備作業が進められている。今年9月上旬には、土木工事が開始された。
3-4号機(カナダ製CANDU、各70.6万kWe)増設プロジェクトでは、8,000万ユーロの融資が、エンジニアリング・調達・建設・管理(EPCM)契約のうち、米・加・伊の企業から構成される合弁事業会社が手掛ける「限定的な着手指示通知(Limited Notice To Proceed, LNTP)」フェーズの資金に向けられる。同資金は、SNNが全額出資するプロジェクト開発会社エネルゴニュークリア(EN)社が借り手となる。EPCMの契約額は32億ユーロ規模と想定。EN社は、エンジニアリング開発、資金確保、欧州委員会によるプロジェクト承認取得、最終投資決定の採択を目指している。
SNNのC. ギタCEOは、「2件の資金調達契約の締結は、当社の戦略的プロジェクトである1号機改修ならびに3-4号機の増設プロジェクトの進行を支える重要な一歩。安全で信頼性のあるクリーンなエネルギー供給を最優先に、遅延やコスト超過なく進めていく。このパートナーシップは、両プロジェクトの信頼性の高さと、長期的な原子力エネルギーの役割を再確認するものだ」と語った。
SNNは、両プロジェクトが同国のエネルギー安全保障、エネルギーの安定供給、CO2排出の削減、サプライチェーンなどに貢献すると強調。プロジェクトの完成により、ルーマニアの無炭素電源の66%が原子力となり、数千の雇用創出が見込まれている。
チェルナボーダ発電所はルーマニアで唯一稼働する原子力発電所。1996年と2007年にそれぞれ1-2号機が運転を開始した。ルーマニアの総発電電力量に占める原子力シェアは約19%(2024年実績)。同発電所の3-4号機は1984年~1985年にかけて着工したが、1989年のチャウシェスク政権崩壊によって建設工事は中断し、現在は保全状態におかれている。