ルーマニア トリチウム輸出を視野に
10 Jun 2025
ルーマニア国営原子力発電会社のニュークリアエレクトリカ(SNN)は6月2日、チェルナボーダ原子力発電所(CANDU炉×2基、各70万kWe級)のサイト内で、トリチウム除去施設(CTRF)を着工(初コンクリートを打設)した。韓国水力・原子力(KHNP)との提携プロジェクトである。
SNNとKHNPは、2023年6月にチェルナボーダ・サイトにおけるCTRF建設に関する設計・調達・建設(EPC)契約を締結。SNNは2024年5月に建設許可を取得、同年6月に起工式を挙行した。KHNPによると、本プロジェクトは韓国の月城原子力発電所(CANDU炉×3基、各70万kWe)のトリチウム除去設備の建設経験を活用、総事業費は約2,600億ウォン(約275億円)規模であるという。
CTRFは、ルーマニア国立超低温・同位体技術研究開発研究所(ICSI Râmnicu Vâlcea)によって開発された国産技術に基づいており、世界ではカナダ、韓国に次いで3番目、欧州では初のトリチウム除去施設となる。トリチウムは核融合炉の燃料となるが、CANDU炉から大量に発生する。ルーマニアは同施設が将来、トリチウムの生産・輸出の欧州拠点となることへ期待を寄せている。
ルーマニアのS. ブルドゥージャ・エネルギー相は、「ルーマニアをITERのような核融合炉の燃料の一つであるトリチウムを生産・輸出する欧州における中心地とし、加えてウラン鉱山から重水製造、原子燃料、CANDU炉によるエネルギー生産までを含む、ルーマニアの原子燃料サイクルの再構築をしていきたい」と意欲を示した。
同設備の設置は、CANDU炉の冷却および減速システムで使用される重水からトリチウム(三重水素)を回収・除去し、トリチウムによる環境負荷を低減、重水の再利用を可能にして原子力発電所の運転効率の向上を目的としている。
建設プロジェクトは完成まで50か月を予定しており、除去・回収されたトリチウムは、将来の利用に向けて、専用容器に入れて安全に保管される。CTRF建設にあたっては、欧州投資銀行(EIB)から1.45億ユーロ(約240億円)の融資を受けており、こうした戦略的投資を通じて、ルーマニアは世界の原子力産業における地位を強化したい考えだ。
チェルナボーダ発電所の1号機は1996年に、2号機は2007年に運転を開始。SNNは、1号機の運転期間を30年間延長する改修工事を計画中である。3号機と4号機(CANDU炉、各70万kWe級)は、1989年のチャウシェスク政権の崩壊を受けて建設工事は停止していたが、現在、建設再開の準備が進められている。