米仏企業 宇宙用途のRI電源開発で協力
08 Oct 2025
原子力電池の大手開発会社である米ゼノ・パワー(Zeno power)社は9月24日、仏オラノ社とフランスのノルマンディーにあるオラノ社のラ・アーグ再処理工場から回収された放射性同位体のアメリシウム241(Am-241)の供給を確保し、宇宙用途に使用する戦略的合意を締結したことを明らかにした。
この契約に基づき、ゼノ社は数百万ドルを投資し、オラノ社から大量のAm-241を優先的に確保する。Am-241は長寿命同位体であり、ゼノ社は米航空宇宙局(NASA)向けに宇宙用途に開発する放射性同位体電源(Radioisotope Power System=RPS)の燃料として使用される。
ゼノ社がNASA向けに開発しているAm-241燃料のRPSは、月面探査車、着陸船、月面のインフラ向けに電力を供給する。ゼノ社によると、歴史的にプルトニウム238(Pu-238)が宇宙用途のRPSに使用されているが、その供給制限や高い製造コストが課題であり、その代替となるAm-241が注目されているという。Am-241は、半減期が430年以上と長く、熱電システムを数十年にわたって持続させることができる宇宙用途の動力として魅力的な燃料源であり、使用済み燃料の再処理から得られる。月の約15日間という長い夜を乗り切り、恒久的に影となる地域で動作して信頼性の高い電力を供給するため、ゼノ社は、NASAが主導する有人宇宙飛行、月面着陸および持続的な探査活動を目指す「アルテミス計画」とその先の火星探査に不可欠な機能性を有すると指摘。オラノ社と提携してAm-241の商業サプライチェーンの確立を進める方針である。
ゼノ社は2022年からオラノ社と協力し、ラ・アーグ施設でAm-241粉末の工業規模の回収を検討開始。2023年7月には、アルテミス計画の一環として、NASAから1,500万ドルの資金提供を受け、長期の月面ミッションに熱電供給可能なAm-241燃料のスターリング発電機(RSG)の開発を行っている。
さらに同社は、米国防総省との契約に基づき、米エネルギー省ならびにオークリッジ国立研究所との連携によりストロンチウム-90(Sr-90)を取得し、海洋用途向けの燃料電池を開発する他、ウィスコンシン州に拠点を置く核融合エネルギーのスタートアップ企業であるシャイン・テクノロジーズ社とも提携して、Sr-90の供給確保に取り組んでいるという。
ゼノ社のT. バーンスタインCEOは、「宇宙ミッション用のAm-241と海洋および地上展開用のSr-90を組み合わせ、ゼノ社の原子力電池は深海から深宇宙まで、フロンティアでの運用が可能」と指摘。仏オラノ社の米国法人であるオラノUSA社のJ.-L. パレイヤーCEOは、「Am-241は、使用済み燃料リサイクルの価値を実証する。ゼノ社との協力は、貴重な同位体の工業規模の回収が、まったく新しい市場を生み出し、革新的なアイデアを実現する方法を示している」と語った。