米2州で新規建設に向けた動き
17 Nov 2025
米ニューヨーク州営のニューヨーク電力公社(NYPA)は10月30日、同州で少なくとも合計100万kWe規模の先進炉導入に向け、2件の情報提供要請(RFI)を開始した。今年6月、同州のK. ホークル知事(民主党)が、州北部での次世代原子力発電所建設の検討開始をNYPAに指示したことを受けた措置。
NYPAは、系統の信頼性を確保、電力コストを抑制し、エネルギーの自立性とサプライチェーンを強化といった州のエネルギー政策を支える方針であり、再生可能エネルギーを補完する、排出量ゼロの安定した電力供給を目指している。ニューヨーク州では現在、米大手電力会社コンステレーション社が3サイト・計4基の原子炉を運転している。
RFIのうち1件は、NYPAの先進原子力プロジェクトの誘致に関心のあるニューヨーク州北部のコミュニティを対象とし、もう1件は、原子力プロジェクトの開発、建設、運転またはサービス提供の経験を持つ開発事業者を対象としている。両RFIの提案提出期限は2025年12月11日。
NYPAはホークル知事の指示を受け、直ちに人材育成について労働団体を含む幅広い利害関係者や、誘致に関心のあるコミュニティリーダーや選出議員と意見交換を行うなど、事前実現可能性調査を開始。NYPAのJ. ドリスコルCEOは、「この先進原子力プロジェクトの成功は、地域社会、政府機関、民間部門の協力にかかっている。今回のRFIを通じ、ニューヨーク州北部の開発業者やコミュニティから情報を収集し、サイト選定とパートナーシップの形成を目指す。州の経済を支え、雇用創出を促進し、クリーンエネルギーへの移行を後押しする豊富な電力供給を実現していく」と意欲を示した。
NYPAは、州北部で立地可能性のあるサイトをその規模や水源、外的危険性や、地元からの支持の観点から特定し、技術的な推奨事項、立地に関する考慮事項、コストとスケジュールの前提条件、所有構造、パートナーシップモデルなど、実行可能なプロジェクトの概念の検討を進め、2033年までに建設開始を目指している。
イリノイ州では大型炉建設を解禁
一方、イリノイ州議会は10月30日、「クリーンで信頼性の高い送電網の手頃な価格法(Clean and Reliable Grid Affordability Act)」を可決した。同法は、大型炉建設の解禁を盛り込んでおり、J. プリツカー知事(民主党)の署名により2026年1月1日より施行される。同州では1987年以降、高レベル放射性廃棄物の恒久的な処分方法が確立されていないことを理由に、原子力発電所の建設が一時的に禁止されていた。2023年12月、小型モジュール炉(SMR)の建設を認める州法が制定されたが、プリツカー知事は同年8月、「先進炉」を広く定義する同様の法案に対し、この定義がコストのかかる大型炉の建設を許すものだとして、拒否権を行使していた。
しかし、AIや量子コンピューティングの発展に伴い、全米で進む廃炉発電所の運転再開や新規建設の動きを受け、今回のモラトリアム解除に踏み切った。電力料金の値下げや、テクノロジー企業の誘致につながると期待されている。
2024年時点で、イリノイ州では6サイト・計11基の原子炉が運転しており、すべてコンステレーション社によるもの。その発電量は、州の総発電量の53%を占め、他のどの州よりも多くの電力を原子力発電で賄い、全米の原子力発電量の8分の1に相当する。州内のバイロン、ドレスデン両原子力発電所は2021年に閉鎖予定であったが、州議会は同年、2040年までにクリーンエネルギー比率50%、2050年までに100%への移行を義務付ける法律を可決。カーボンクレジット計画を通じて州が原子力発電所を支援することとなり、これを受け、両発電所の運転が継続されることとなった。
今年6月にはイリノイ州でコンステレーション社が運転するクリントン原子力発電所(クリントン・クリーン・エネルギー・センター)からの電力をIT大手のMeta社に20年間にわたり供給する契約を締結し、同発電所は継続的な運転を確保している。





