原子力産業新聞

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米NY州 先進原子力を主軸電源に 人材育成へ4,000万ドル

23 Dec 2025

佐藤敦子

2025年9月4日、先進原子力人材育成を巡り意見交換を行ったホークル知事(中央)とNYPA、労働組合関係者ら
© Office of Governor Kathy Hochul

米ニューヨーク州は1216日、最新の州エネルギー計画を公表した。計画は、州のエネルギー関連の指針と位置づけられ、現行のエネルギーシステムと2040年までの将来のエネルギー需要に関する評価結果に基づく提言を盛り込んでいる。電力供給において原子力が重要な役割を果たすとの認識を明確にし、脱炭素目標の達成や安定した電力供給、電力料金の抑制を両立するためには、再生可能エネルギーだけでなく、原子力を含む多様な電源構成が不可欠としている。

同計画は、州が策定し、実行主体としてニューヨーク州電力公社(NYPA)が中心的な役割を担う。電力需要の増加が見込まれる中で「手頃で、信頼性が高く、クリーンな電力供給」の確保を目的とする。既存の原子力発電所については、長年にわたりゼロエミッション電源として州の電力供給を支えてきたと評価し、今後の継続運転を支援する政策の重要性を指摘した。さらに、「責任ある先進原子力開発のためのマスタープラン」の下、公的主体であるNYPAが新たな原子力発電所について、技術、立地、財務の観点から評価を進めることも盛り込んでいる。州はゼロエミッション達成目標を2040年と定めており、原子力の長いリードタイムを踏まえ、早期着手が不可欠としている。

こうした方針の具体策として、ニューヨーク州のK.ホークル知事は129日、原子力インフラの残る同州北部で先進原子力を支える人材育成を進めるため、NYPAが今後4年間で総額4,000万ドル(約60億円)の資金を投入すると発表した。これは同日、NYPA理事会により承認されている。知事は今年6、電力需要の増加を背景に、州北部で少なくとも合計100kW以上の先進炉を導入する目標を示しており、資金投入はこの取り組みをさらに前進させる。

NYPAは来年以降、工業高校やコミュニティカレッジ、大学、労働組合などと連携し、原子力技術に関する講座や見習い制度を通じて、先進原子力分野に就業する労働者の育成を進める。NYPAJ.E. ドリスコルCEOは、「州のクリーンエネルギーへの移行は、地域住民の雇用が伴わなければ成功しない。これまで再生可能エネルギー分野を支えるために年最大2,500万ドル(約38億円)を投資してきた実績を基に、先進原子力を支える人材の育成を進めていく」とコメントしている。

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