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英国 民間船舶の原子力利用へ向けコンソーシアム

03 Feb 2026

佐藤敦子

海上原子力コンソーシアムに参画する各社の代表者ら © Lloyd's Register

英国のロイドレジスター(ロイド船級協会)は1月19日、民間商船での運用を前提とした原子力船舶の実用化に向け、「海上原子力コンソーシアム(Maritime Nuclear Consortium)」を設立したと発表した。原子力技術に加え、国際基準の策定など制度面の整備を進めることで、海運の脱炭素化をめぐる国際競争において主導権を確保する狙いがある。

国際海運分野での温室効果ガス(GHG)について、国際海事機関(IMO)が2020年に公表した調査によれば、2018年時点における国際海運全体のGHG排出量は約9.2億トンと世界全体の約2.5%を占める。海上輸送の需要は今後も増加が見込まれる中、2023年7月、IMO加盟国は、2050年頃までに国際海運からのGHG排出をネットゼロとする新たな削減目標に合意し、海運業界に対応を求める方針を明確にした。

今回設立された海上原子力コンソーシアムには、以下の6社が参加している。
・ロイドレジスター:事務局
・ロールス・ロイス:原子炉設計
・バブコック・インターナショナル・グループ:船舶設計・建造・サポート
・グローバル・ニュークリア・セキュリティ・パートナーズ:核セキュリティおよび保障措置
・スティーブンソン・ハーウッド:法務・規制
・ノーススタンダード:保険

コンソーシアムは当面の取り組みとして、先進型モジュール炉(AMR)の設計適合性声明(SoDA)の策定プロセスの確立、原子力船を対象とした新たな船級認証制度の策定、軍事転用を防ぎ透明性を確保する制度設計、事故リスクに対応した保険制度の構築、産業界・政府向けの導入手引きの公表などをあげている。

ロールス・ロイス社の新型原子力・特別プロジェクト部門の担当ディレクター、J. トンプソン氏は、「さまざまな分野でエネルギー転換が迫られており、その解決策の一つとして原子力がますます注目を集めている」と指摘。その上で、今回のコンソーシアムによる連携は、原子力船をめぐる将来の国際基準策定に向けた重要な第一歩になるとの認識を示した。

原子力船は、英国においても海軍で数十年にわたり利用されているほか、世界各国の海軍では700基以上の船用炉が稼働するなど、一定の技術的実績を有する。一方、これらは国家管理下での運用を前提としており、国際航路を行き交う民間商船への適用には制度面の整備が不可欠とされる。コンソーシアムは、新型炉設計に対応した制度整備を通じて、英国が海運分野における原子力利用で主導的立場を確立することを狙っている。

 

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