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南ア、合計250万kWの原子力新設計画の準備で情報提供依頼書を発出

16 Jun 2020

©NIASA

南アフリカ共和国の鉱物資源・エネルギー省(DMRE)は6月14日、将来的に250万kWの原子力発電設備を建設する準備作業として、自国の原子力発電プログラムに適した技術を評価するための情報提供依頼書(RFI)を市場の関係機関に向けて発出した。同RFIでは、伝統的なPWRと2030年までに商業利用可能な小型モジュール炉(SMR)、 またはそれら技術を組み合わせたベースロード電源を南アは希望することが記されている。

原子力発電所の新設には長期のリードタイムを要することから、今回のRFI発出は南ア社会における将来のエネルギー供給保証に向け、必要となる建設計画を先行して策定するのが目的。これは2019年10月にDMREが公表した新しい「統合資源計画(IRP)」に沿って行われており、DMREはRFIを通じて建設計画のコストや発電所の所有者構成、建設コストの回収、エンドユーザーのコスト、プログラムの持続可能性等に関する情報を入手し、検討を行う。

南アではJ.ズマ大統領による前政権時代、2011年3月に公布したIRPに基づき、2030年までに960万kWの原子力発電設備を新たに建設することが計画されていた。建設候補地に挙がっていた5サイトは2016年3月までに2サイトまで絞り込まれたが、野党が大統領の不信任決議採決を要求したのを受け、政府与党は2018年2月にズマ大統領の解任を決定。同大統領は辞任に追い込まれ、C.ラマポーザ大統領による新政権が誕生している。

2019年の改訂版IRPでは、まず国内唯一のクバーグ原子力発電所(97万kWのPWR×2基)について、運転開始後40年の運転期間が満了する2024年以降、エネルギー供給を継続して確保するため、設計寿命を延長することが重要になると明記。2030年以降は既存の石炭火力発電所2,410万kW分が廃止されることから、原子力を含むクリーン・エネルギー源を加える必要があるとした。原子力発電の経済性やこれまでに蓄積した人的資源や運転技術などを考慮した場合、将来の開発拡大プログラムに備えた明確なロードマップの作成など、準備作業を直ちに開始しなければならない。その一方で、この新設プログラムでは複数の発電所を一度に建設するのではなく、モジュール工法を活用し無理のないペースで進めなければならないと提案している。

改訂版IRPはまた、アフリカ中央部のコンゴ民主共和国が計画している大規模なインガ水力発電所プロジェクトに言及した。南アはこの計画に参加するためコンゴと「グランド・インガ条約」を締結し、250万kWの電力を同発電所から引き取ることになっているが、コンゴはこれに必要な開発作業を終えておらず、同条約はこのまま2023年に失効する可能性がある。南アにとって、原子力はインガ発電所からの250万kWが実現しなかった場合の「悔いのない長期的な代替選択肢」であり、コスト面ではインガ・オプショに劣るとしても実行可能なオプションと捉えられている。

(参照資料:南ア鉱物資源・エネルギー省の発表資料①②RFI詳細③改訂版IRP、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月15日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)

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